カメラのオールドレンズのクモリの1つ「バルサム切れ」修理

バルサム切れレンズレンズリペア基本情報

◎カメラの交換レンズ(特にオールドレンズ)を集めていると、たまに内部のレンズが曇っている個体に出会う事がありますよね(汗)
これが世間で良く言われる「バルサム切れ」という症状です。
「バルサム切れ」の状態で撮影するとコントラストは落ち、逆光にも弱くなるので何とか修理したくなるものです。
因みに「バルサム切れ」とは貼り合わせレンズに使う接着剤が経年劣化で曇ったり、気泡が出る事で、修理は大掛かりなリスクを伴った作業が必要となります。

しかし実はここで「バルサム切れ」と決めつけるのは良くない時もあります。
何故なら「結露による曇り」、「グリスが気化した事による曇り」や「コーティングの曇り」、「薄カビ」も割とあるからです。
こればかりはレンズを分解し、その雲ったレンズを取り出して判断するしかありません。

それでは自分が今まで経験した事をもとに「バルサム切れ」の判断、剥離、接着までを解説していきたいと思います^^

 

①とりあえずレンズ本体を分解して「曇ったレンズ」を取り出します

バルサム切れレンズ

とりあえずこのレンズの場合は、後群ユニット絞り側2番目にある貼り合わせレンズが曇っていました。
分解方法はそれぞれのレンズで検索してみて下さい(汗)

とりあえず「レンズ用のクリーニングペーパー」で拭いて曇りが取れる様でしたら、結露、グリスの気化や薄カビが原因なので「バルサム切れ」ではありません。

そして今度は照明などの光をレンズ表面に反射させて艶が無かったら「レンズコーティング」が曇っていますので、「酸化セリウム」で様子を見ながら研磨するか、「プロに再コーティング」してもらった方が良いと思います。
研磨はやり過ぎると光軸が狂いますのでほどほどに(汗)
それにコーティングを研磨しても、時間が経つとまた曇ってくる確率が高いです。

コーティングをチェックしたら再び照明の光を当てて、いろんな角度から観察し、明らかにそれが内部でしたらそれは「バルサム切れ」という事になります。
(それでも稀にコーティングだった事もあったので良く観察して下さい: 汗)

Ayumu
Ayumu

バルサム切れと判断したら、とりあえずダメもとでドライヤーなどで熱を加えてみて下さい。

軽度なバルサム切れなら、バルサムの透明度が稀に復活する事があるからです。
でも注意点は欲張り過ぎると悪化する事ですね…(汗)
ほどほどに。

Ayumu
Ayumu

最近あった事例で、オールドレンズ「soligor 35mm f2.8」のピントの山が凄く曖昧な物に出会いました。

絞ってもあまり改善されず、どうしてなんだろう?と思って貼り合わせレンズを見るとバルサムが虹色に…

良く見るとバルサムが膨張していました。

ちょっと力を加えたら簡単に剥離したので、そのまま貼り合わせたら元のジャスピン性能に戻った事があります。

ピントの山が甘いオールドレンズはバルサムをチェックする必要があるかもしれません。

(2020年01月07日更新)

 

 

 

②バルサム切れの事例A

バルサム切れA取り出した「バルサム切れレンズ」の周囲がベタベタしている場合です。

これはレンズを手に取って「ずらしてあげるだけでレンズ接着面が剥離するパターン」で、今までの経験だと約4割が手で簡単にズルッと剥離しました(汗)
(ベタベタしていても剥離しない場合もあります)

Ayumu
Ayumu

バルサム切れレンズをシンナーやアセトン、エタノールに浸して分離する方法もあります。
欠点は時間が掛かる事と、自分はシンナーでやったら、ニコンのレンズはコーティングが痛んでしまいました。
確か70-210mmF4…

 

③ベタベタバルサムなら清掃も簡単な事が多いです

バルサム清掃バルサムがベタベタしている場合、その多くは「無水エタノール」を使って拭くだけで綺麗になる事が多いです。

そして「天然バルサム」か光学用接着剤 「アーデル オプトクレーブ」などで貼り合わせて完成です。
レジンでも劣化(黄変しない)しない「パジコ UV-LEDレジン 星の雫 ハード」などなら光の屈折率も高くて良いと思います。
(貼り合わせの詳細は下記を参照して下さい)

 

 

④バルサム切れの事例B

バルサム切れタクマー次は取り出した「貼り合わせレンズ」の周囲がベタベタしていない場合です。
まずはお手軽「煮沸分離」にチャレンジしてみましょう。

⑤バルサム切れの煮沸分離

バルサム切れ煮沸分離そのままレンズを入れるとコトコト動いて不安になりますので、小さなビニルなどに入れて煮沸するといいです。
とりあえず30分ごとに剥離にチャレンジし、3時間やってもダメなら次に記載する最終手段⑪をやってみてください。
自分は煮沸分離で約3割の成功率でした。

 

⑥「バルサム切れレンズ」の剥離後は清掃

バルサム清掃おおよそ煮沸分離で成功した場合、古いバルサムを「無水エタノール」で取り除ける確率が高いです。
取り除けない場合はキッチンクリーナーで良くある「クリームクレンザー ジフ」を使うといいみたいです。
これはブログ友達である「想桜さん」のブログ「ファイティンガッツピストン号」に理由が書いてありますが、ジフの研磨成分のモース硬度がガラスより低く、貼り合わせの樹脂より高いので問題がないそうです。

 

⑦初めての貼り合わせは練習の為に「100均のレジン」を使ってしまいました…

ばるさむ代用のレジンこれはネット上で非難を浴びました(滝汗)
そして載せている写真はバルサムの代わりにレジンを使って貼り合わせたレンズの3年半後の画像になります。

100均のレジンは割と屈折率も高く(物によりますが)、使い勝手もいいのですが、何が問題なのかと言うと、それは経年劣化で「黄変」するからです。
(今は黄変しにくいVer.も発売されていました 2019/12/24更新)
でも久しぶりに取り出したこのレンズは全く「黄変」していませんでした。
おそらく日光にあまり当てていないからだと思うのですが、未だに素晴らしい透明度を維持していました。

それでは話がちょっと逸れますが、ここでこのレンズを使ってフィギュアを撮影してみました(汗)

 

 

⑧レジン使用3年半後の写りです

レジン使用3年半後カメラはニコン1V1を使い、絞りはf2.8で撮影し、フードは付けていません(汗)
このレンズの最短撮影距離付近での絞り開放はそれほどシャープではないので参考にならないと思いますが、良く写っていると思います。
ノーマルのバルサムと比べようがありませんが、貼り合わせ3年半後でも保存状態が良ければ劣化はそれほど進行していない感じでした。

もしレジンを使うなら、光学用接着剤の品質に匹敵し、「黄変」しない「パジコ UV-LEDレジン 星の雫 ハード 」がオススメです。

 

⑨バルサム切れの事例C

バルサム切れレンズ次は煮沸分離ができなかった場合の分離方法で、より高温の熱源を使う事になります。
しかし…
京セラのズームレンズって、バルサム切れの確率がとても高い気がします(汗)

 

⑩剥がれにくいパターンの「バルサム切れ模様」

バルサム切れレンズこうしたバルサム切れの模様でしたら、大方剥がすのが困難になると思った方がいいです(汗)
生易しい方法では埒が明きません。
「真空加熱器」があるといいらしいですが、そんな物は一般家庭にある訳も無く、「圧力なべ」ならひょっとして…(やってみたいですが: 笑)

 

⑪最終手段「オーブンで焼く」

バルサム切れオーブン焼レンズをアルミ箔の上に乗せ、オーブンを200度20分にセットし、焼きあがるごとにレンズ分離を試みます。
おおよそこの方法で1~3回やって、レンズの分離に成功すると思います。

因みにバルサムは焦げますが、コーティングはかなりの高温に耐えられますので大丈夫です。
(自分は360℃以上かけましたが、大丈夫でした)

 

⑫分離に成功したバルサム切れレンズ

バルサム切れ分離成功この時にバルサム独自の匂いがすると思います。(マンダム)
そして分離面を「無水エタノール」で綺麗にしますが、おそらく剥がれにくいバルサムほど綺麗にするのは困難なので、⑥で紹介した「ジフ」を使って綺麗にしていきます。

 

 

⑬バルサムを使って貼り合わせます

バルサム貼り合わせ自分はフライパンの上にアルミホイルを敷き、埃が入らないように蓋をしながらIHクッキングヒーターの保温モードで加熱しました。
いらないスプーンでバルサムを温め、90℃くらいに昇温したらレンズ表面に垂らして貼り合わせます。
ちょっと多めに塗付し、空気を抜く感じで偏心回転させていきます。
この時にはみ出たバルサムは後から簡単に取れますので、とにかくしっかり空気を抜いて、バルサムが厚くならないように集中します。
そしてノギスなどでクロス方向に挟み、センターを出しておきます。
(もし鏡筒にレンズが入らない場合は、鏡筒をドライヤーで温めれば入ります)

バルサムは「武井薬局」さんで売っていますし、光学用接着剤 「アーデル オプトクレーブ」と言う方法もあります。
(バルサムをキシレンで薄めたタイプは乾きにくいらしいです)

お疲れ様でした!

 

⑭番外編「こんな分離も試しました」(天ぷら編)

バルサム切れ天ぷら分離天ぷら方法なら、「煮沸分離」よりも温度を上げられますし、何より均等に温度をかけられる安全性があります。
写真にはありませんが、アルミ箔で囲って温度を185℃まで上げる事ができました。
でも頑固なバルサム切れを剥がす事はできませんでした。

 

⑮「半田ごて」直加熱方法

バルサム切れ半田ごて加熱これは知り合いにオーブンを借りれなかった時にやった方法です(汗)
コツは冷間時からスタートさせ、目を離さずに観察する事です。

ABは見てたらみるみる色が変わって、僅か7分で分離できました(汗)
レンズ、コーティングに問題はありません。

CDEは3枚貼り合わせのレンズで、30~40分かかりましたが、バルサムが焦げただけでレンズとコーティングに問題はありませんでした。

この方法でレンズが割れた事はありませんが、ネタの1つとして取り上げただけですので、決して真似をしないで下さい(汗)

 

⑯最後は「まさかの結果」

バルサム分離失敗これは「温度差方法でやった分離方法」なんですが、まさかの結果になりました…
やはり急激な温度変化には耐えられないみたいです。
小さなレンズならいいんでしょうけどね^^;

 

◎おそらく2000年代になってからは「天然樹脂のバルサム」や「旧タイプの合成樹脂」に代わって、生産効率が高く、劣化しにくい新タイプの「紫外線硬化タイプの合成樹脂」になりましたので、こうした「バルサム切れ」問題も無くなっていくと思われます。
それでもこれからは2014年頃まで良く売れたデジカメレンズのカビジャンクが出てくるんでしょうね^^;
(デジカメをしまって、スマホで写す人が増えてますから…)

光学レンズの分解・修理は自分も失敗していますので、やる時は自己責任でお願い致します(汗)

以上、【カメラのオールドレンズのクモリの1つ「バルサム切れ」修理】でした!

コメント

タイトルとURLをコピーしました