◎とあるリサイクルショップのジャンクコーナーに「フジカ35M,SE,EE」と仲良く3台が入荷していました。
大きいカメラはいらないなぁ~、と思ったので35Mをチェックすると、ヘリコイドはガタガタ、絞り動かず、巻き上げしてもシャッターはチャージされない、タイマーのレバーはスカスカという症状でした。
もちろん外装の貼り革はあちこちめくれあがってみっともない事になっています。
他の2台も似たような症状だったので、小さい35Mを買ってきてみました。
1957年9月発売 富士フィルム初の35mm判レンズシャッター機で、当時の価格は¥15.900。 レンズはフジノン45mm/f2.8(4群5枚のクセノタールタイプ)。
ファインダーは「パララックス自動補正採光式ブライトフレーム」。
シャッターはシチズンMXV(B,1~1/400s)でセルフタイマー付。 重量は700g。
特徴として、焦点調節は右上にあるノブを回して行い、巻き上げレバーは底部に、巻き戻しクランクは左側面にあるという変わったレイアウトになっています。
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①それでは肝のレンズシャッター部を取り外して分解していきます
A:カメラのフィルム室側の大きなリングナットを外せばレンズシャッターごとごっそり外せます。
そして吸盤オープナーなどを使ってレンズ前群と後群を外して清掃します。
B:回り止めのネジの平らな方をリングナット側にして、大きなリングナットを外します。
C:シチズンの隠れシャッタースピード目盛りを外し、丸印の部品(組む時に忘れずに!)と一緒にシャッタースピードリングを外します。
この時に各ツメの噛み合わせをチェックするか写真を撮っておきます。
D:そして裏蓋を3本のネジを緩めて外しますが、ネジは1本位置決め用で種類が違うので注意します。
②絞りとシャッター部の分離時の注意
A:そして4本のネジを外してシャッター部と絞りを分離しますが、注意点があります。
B:タイマーレバーの近くにあるネジ(Aの②)は「貫通ネジ」になっており、バネを固定しているので注意が必要です。
できればネジを外す時にバネが飛び出さない様に何かで固定しておくといいと思いました。
自分は何もやらずに貫通ネジを抜いたら、バネが押さえている反対側が外れてちょっと大変でした^^;
C:シャッターチャージ軸のCリング(Aの①)を外してしまうと、シャッターチャージの大きなバネ①が外れて大変な事になります(汗)
自分はシャッターのロック機構の部品を外し、チャージ軸をなるべく手前に突き出し、バネの形を整えた後に頑張って黄色線②の溝に入れる事ができました(汗)
もしCリングを外す必要がある時は、セロテープをぐるぐるに巻くなど、軸が入り込まない工夫が必要になります。
D:フラッシュの接点の「ネジ、プラスチックワッシャ(向きがあります)、接点になってる特殊ナット」を外しますが、組む時にとても難儀しますので頑張ってください(画像は参考用です)
絞りとシャッター部を分離したら、シャッター幕5枚を外してエタノールで洗浄しておきますが、グリスが化石の様にガチガチになっているので、しっかり綺麗にして組み立てます。
③絞りの分解・清掃
A:この絞りは組み立てがかなり難しい為に、自信の無い場合はこのままエタノールの漬けて絞りを動かしながら洗浄するのもアリだと思います。
でもおそらく60年以上経過したガンコなグリス汚れは落ちないと思います。
何故なら絞り羽根の汚れはエタノールで何度も拭かないと落ちませんでした^^;
B:外した「絞り羽根」。
劣化したグリスでくっついたまま外れました(汗)
あとこの絞り羽根は取付け方向があるので気をつけて下さい。
C:絞り羽根を洗浄します。
エタノールを綿棒に付けて洗浄しますが、力を入れすぎて羽根が変形しない様に注意します。
D:組む時は絞り羽根の向きを揃えて並べると良いです。
そして神経を集中させて大きい固定側にピンセットで組んでいきます。
④絞りの組み立てとセルフタイマー修理
A:自分はこんな感じで組んでいき、最後に左上の羽根を被せて完成させてます。
指紋はエタノールで洗浄しておきます。
(シートマグネットを切って固定させてやる方法が楽だそうです)
B:そして可動部分を被せますが、このカメラの場合は絞った状態で組まないといけません。
絞りを写真の状態にしたら、緊張しながら右上のケースに組み込みます。
もし失敗したら最初からやり直しです。(自分は2回失敗しました)
ネジを締め、レバーを取り付けたら完成です。
C:最悪だぁ…
何とタイマーを固定しているピンが折れていました…
本来、タイマーを外す時はCリングを外せばOKなんですけどね^^;
仕方ないので、タイマーを組んでるネジを1本外し、シャッターユニットに穴を開け、皿ネジに交換して固定しました。
D:更に不幸は続く…
何とタイマーがどこかで空回りしています。
良く見たら1つのギヤのカシメ部分が空回りしているではありませんか!
カシメを叩いてみたけどダメだったので、ギヤの当たらない部分まで金属用接着剤を流して固定しておきました(泣)
幸いトルクがあまり掛からないギアだったので、今のところ大丈夫です。
ギヤを使ったメカの動きが渋い時は「鍵穴のクスリ」というケミカルがおススメ!
洗浄しつつ長く潤滑性のあるボロンが浸透しますが、白く汚れるのでメカを外して吹く必要があり、使用箇所は限定的になると思います。
P.S. キャップに液剤を吹いて溜め、それを爪楊枝などで注した方がいいかもしれません。
それかボロン粉末をエタノールで溶いて流し込めばドライ潤滑できると思います。
⑤組み立て&底部メカのチェック
A:シャッターと絞りを組み合わせる時はフラッシュ切替X-Mを「X」側にしておかないと引っ掛かります。
B:シャッターと絞りを組む時は画像②(Aの②)の貫通ネジでバネを仮固定して組むと楽です。
もちろんバネの反対側がちゃんと可動部分①に引っ掛かっているか確認する必要もあります。
組んだら「貫通ネジ」を外し、バネをずらして後ろから「貫通ネジ」を入れ直せばOKです。
そして難儀すると思いますが、フラッシュの接点を組みます。
後は逆の手順でレンズシャッターユニットを組み立てて完成させます。
C:レンズシャッターユニットの各リンクの合う位置です。
特にシャッターチャージの軸は時計方向に回し、シャッターがチャージしない位置まで回しておく必要があります。
組んだら、絞り、シャッターの動きをチェックしておきます。
D:下のメカは巻き上げに問題がなければ注油だけでいいと思います。
⑥上蓋を取り外します
BC:ヘリコイドダイヤルを無限と最短の位置にして2本のイモネジを緩めます。
D:上蓋を外す時に部品がボロボロ落ちてくるので、袋の中で慎重に外します。
写真の部品が揃っていればOKです。
⑦ファインダーの清掃
A:2本のネジを外してファインダーのカバーを外します。
そしてファインダー内を清掃しますが、斜めの金色のコーティングがしてある「ハーフミラー」だけはコーティングが簡単に剥げてしまう可能性があるので注意が必要です。
ハーフミラーだけはエタノールなどを使わずに「FUJIFILM レンズクリーニングリキッド」などで隅からテスト拭きをしてみて下さい。
それで剥げなければリキッドでそのまま優しく清掃すればいいと思います。
知らなかった自分は過去にエタノールを使ってしまい、全部コーティングが剥がれた事がありました(汗)
それでも後から剥げてしまった事に気付く事があるので、怖かったら掃除しないのも良いと思います。
B:中央のレンズは部品が外れるので、ピンセットなどで外して清掃するとやり易いです。
C:組む時はこの様な状態にして組み合わせます。
レンズの位置は必ず無限遠か最短撮影距離にセットしておき、ダイヤル類は後ろからセロテープなどで仮固定しておくと組み立てが楽になります。
D:貼革は隅がほとんどめくれあがっていたので、エタノールで糊を剥がして両面テープで固定しておきました。
ゴムボンドなどで貼るとボンドがはみ出しますし、何より再修理の時に困ることが多いです。
ニコンなども両面テープで固定してますし^^
⑧分解・修理が完成した「フジカ35M」
この個性的なレバーのレイアウト、金属の質感が良いですね。
電子制御は一切無いのでまさに機械です。
⑨フジノン45mm/f2.8(4群5枚のクセノタールタイプ)の作例
マウントアダプターとか作る暇が無い為に、レンズを「吸盤オープナー」入れ(笑)、室内でアニメのフィギュアを3枚ほど撮影してみました。
カメラはニコン1V1で、全て開放f2.8で撮影しています。
良く写るし、ボケも綺麗です^^
実際に他の方の作例を見てもとても良く写っていました。
◎カメラの分解・清掃はリスクが伴いますので、落ち着いて慎重に行って下さい。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、参考程度にして下さると嬉しいです。
あとカメラの分解・清掃は必ず自己責任でお願い致します(汗)
以上、【富士フィルム「FUJICA 35M(フジカ35M)」分解・清掃・修理】でした!
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