ニコン「Ai-S Zoom-Nikkor 35-70mm F3.5」分解清掃・作例

ニコン

◎とあるリサイクルショップのジャンクコーナーに、カビだらけでヘリコイドがスカスカ、ズームが重いニコンの「Ai-S Zoom-Nikkor 35-70mm F3.5」が激安で置いてありました。
当時、高価だったこのレンズはそれほど売れなかった感じで、ジャンクコーナーでも見かける事がほとんど無く、以前から気になっていた自分は「これなら気軽に分解清掃できる」と思って買って来てみました。
今回はこの「Ai-S Zoom-Nikkor 35-70mm F3.5」を分解清掃して作例を撮った内容になっています。

因みにこのレンズの分解清掃なんですが、ほとんどのネジとロックリングにねじ止め剤が塗布してあり、かなり困難な作業をする事となりました^^;
あと困難な箇所はマウントにある遮光パーツにもねじ止め剤が塗布してあり、これが外れないと後群レンズは分解不可になります。

1981年発売(初期型は1977年発売・フィルター径72mm・最短1m・価格は¥95.000)  レンズ構成: 9群10枚  絞り羽根枚数: 7枚
最短撮影距離: 0.7m(マクロ 0.35m)  最小絞り: F22  重さ: 520g
フィルター径: 62mm  フード: HN-22

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

①フィルター枠の取り外し

A: フォーカスを無限遠に、ズームを35mmにセットしたら絶対に動かさない様にして下さい。
B: この時の銘板と内鏡筒の段差がほぼ無い事を確認しておきます。
(組み立てをミスした時の参考になると思います)

C: フォーカスリングゴムを外し、隠れていたネジ3個を外します。
D: 組み位置マーキングをしながらフィルター枠を外しますが、ここは前群をフォーカスする為の直進キーが入りますので、次の画像を参照して下さい。

②前群レンズユニットの取り外し

A: ここに前群をフォーカスする直進キーが入るので、組み立て時はここに入れて下さい。
B: ゆっくり慎重に前群レンズユニットを回し、外れるまでの回転数と外れる瞬間の位置を♀ヘリコイド側にマーキングしておきます。

C: こんな感じで外れます。
D: 古いヘリコイドグリスをパーツクリーナーとブラシで綺麗に落とします。

③前群レンズの分解清掃

A: ♀ヘリコイド側も綺麗にします。
組み立てる時は新しいヘリコイドグリスを固めの筆で塗ってから組み立てます。
B: レンズを固定しているロックリングを外しますが、固い時は無理をせずにアセトンを染み込ませて数分待ってから緩めるか、ドライヤーで加熱してから緩めるといいです。

C: 向きをマーキングしながら外した各レンズを清掃します。
D: ここを外せば簡単にレンズを外せるのですが、ここはねじ止め剤が塗布してあるので緩めるのはほぼ無理だと思います💦
続きをご覧ください。

④緩まない時は回り道をします

A: まずここにアセトンを染み込ませて数分待ちます。
B: ひねって分割します。

C: 次にこの穴にアセトンを注入して数分待ちます。
因みにここはイモネジの穴ではありません💦
D: これでひねって緩まない時は更にドライヤーで加熱します。

⑤前群レンズユニットの分解清掃

A: ここまでやればおそらく緩むと思いますが、駄目な時は再度同じ手順を繰り返して下さい。(確かここのレンズはハメゴロシです)
B: ここのロックリングにもアセトンを注入し、数分待ってから緩めます。

C: これで前群のレンズを全て外す事ができました。
D: 各レンズを清掃したら向きに注意して組み立てます。
レンズの向きが分からなくなったらアイキャッチ画像の構成図を参照して下さい。
レンズを組み立てて周囲が流れる場合はどこかのレンズの向きが間違っています。
☆レンズの清掃のみの場合は画像⑨まで飛んでください。

 

⑥フォーカスリングの分解

A: フォーカスリングを貼り合わせているセロテープを半分剥がします。
(因みにここが無限遠調整になっていますので、無限遠が出ない時はここで調整します)
B: ここでフォーカスリングに合い位置マーキングをしておきます。

C: 無限遠位置から回転数を数えながらゆっくり慎重に回し…
D: 外れた瞬間の位置をそれぞれマーキングしておきます。

 

⑦フォーカスリング部の分解

A: フォーカスリングを回してヘリコイドの凹部にセットしたら、フォーカスリング後部を外します。
B: 組み立てる時はフォーカスリング後部のピンをここに入れます。

C: ズームリングを70mmにしてマクロモードに切り替えます。
D: ここのストッパーネジを外します。

 

⑧サブヘリコイドと指標線筒の取り外し

A: リングを回して隠れたネジ3個を探しながら外します。
B: ヘリコイドとリングを外しますが、組み立てる時はこの凹部を指標線位置で組み込みます。

C: 指標線筒を固定している3個のネジを外し、筒を引き抜きますが、ここを外す時にクリックボールが飛び出しますので必ず袋の中で作業して下さい!! (画像D参照)
D: ここのマクロ切換のクリックボールが飛び出します!
ボールとバネは回収しておいて下さい。

 

⑨マウントの取り外し

A: ズームリングゴムを外しておきます。
B: マウントを固定している5個のネジを外しますが、ここには長短2種類のネジが使われているので注意が必要です。

C: ネジ穴を覗けば長短の位置が分かると思いますが、一応図に示しておきます💦
D: ここからがこのレンズの大変な所でして、スライドする遮光パーツが外れないとレンズすら外す事ができません💦
まずこの辺りにアセトンを流しておきます。

 

⑩マウントの遮光パーツの取り外し

A: 外側の遮光パーツを固定しているネジ3個を外します。
B: 遮光パーツ群を引き出し、外側遮光パーツの内側にアセトンを流し込んで数分待ちます。

C: 反時計回りに回して外側の遮光パーツを取り外します。
D: 取付位置を確認しながらマウントを外します。

 

⑪各リングの取り外し

A: 絞りリングの取付位置を確認しながら絞りリングを外しますが、このレンズはクリックボールではなく板バネなので、そのまま外せばOKです。
B: スペーサーの入っている中間リングの取付位置を確認しながら外します。

C: ここまでの作業状態です。
D: 絞り連動リングの取付位置を確認しながら外します。

 

⑫遮光パーツの取り外し

A: 遮光パーツ部を引き伸ばし、見えた□にアセトンを注入して数分待ちます。
B: 吸盤オープナーなどで飾りリング兼ストッパーを反時計回りに回して外します。

C: 遮光パーツの伸縮部を外します。
D: マウントの中間リングのネジ4個を外します。

 

⑬鏡筒の分解

A: 中間リングを外す時は絞り制御板の入っている位置を確認しながら外して下さい。
B: ズームリングを固定している3個のネジを外します。

C: ズームリングの取付位置をマーキングしながらズームリングを外します。
D: ここのネジ&コロの3セットを取り外しますが、緩める前に次の画像の作業をして下さい。

 

⑭後群レンズユニットの取り外し

A: 後群ユニットを固定しているネジにはねじ止め剤が塗られたナットがありますので、ナットにアセトンを筆で塗布し、ねじ止め剤を柔らかくしてから緩めて下さい。
B: 後群ユニットの取付位置をマーキングしながら取り外します。

C: ここでズームユニットの動きをチェックし、筆でグリスアップしておくと良いです。
D: 後玉を固定しているロックリングを外しますが、固い時はアセトンを染み込ませてから行って下さい。

何故ここまで分解しないといけないのかと言いますと、それは外からでは緩まないからです💦

 

⑮後群レンズの分解清掃

A: レンズとスペーサーの向きをマーキングしながら取り外します。
B: ここのロックリングのネジ溝にアセトンを染み込ませ、数分待ってからロックリングを取り外します。

C: レンズとスペーサーの向きをマーキングしながら取り外します。
D: 次にここの穴にアセトンを注入して数分待ち、最後のレンズを取り外しますが、ここは絞り羽根の押さえにもなっているので気を付けて下さい。

 

⑯後群の各レンズ清掃

A: 本来はここで分割して最後のレンズを取り出すのですが、固くてこんな順番になってしまいました💦
B: ここのレンズはハメゴロシなので、このままの状態でレンズを清掃します。

C: 各レンズを清掃して組み立てますが、絞り羽根を清掃する場合は次に進んで下さい。
D: 絞り可動側の取付位置と表裏を確認します。

 

⑰絞り羽根の清掃

A: 可動側を外したら、絞り羽根の方向と表裏を確認して取り外します。
B: 外したパーツに付いている汚れと油分をエタノールで清掃します。

C: 絞り羽根を組み立てて、絞りユニットを組み立てたら作動チェックをします。
D: 後群ユニットをズームユニットに組み込む時にナットを入れるのに難儀しますので、予めナットを接着固定しておくと楽です。

後は逆の手順で組み立てていきます。

 

⑱マクロモード部の組み立て

グリスを塗ったバネを入れ、ボールを置いたら指標線筒を左上に傾ける要領で筒を入れればOKです。
取り付けたらスイッチが上手く動くかチェックして下さい。

後は逆の手順で組み立てれば完成です。

 

⑲「Ai-S Zoom-Nikkor 35-70mm F3.5」の作例

70mm 開放F3.5 マクロモード
使用カメラはフルサイズ一眼レフのニコンD700で、覚えている範囲で焦点距離と絞り値を書いています。

 

⑳閉店してから時の流れたお店

35mm F5.6

 

㉑黄昏のアパート

50mm  F11.0

 

㉒作例を撮る暇が無かったので、また後日追加予定です💦

 

 

 

 

 

◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)

コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。

 

以上、【ニコン「Ai-S Zoom-Nikkor 35-70mm F3.5」分解清掃・作例】でした!

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