◎今回はニコンのAFズーム「AiAF Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.3-4.5S<New>」を分解・清掃してみました。
種類の多いニコンAFズームの中でも、リサイクルショップなどで比較的良く見かけるこのレンズですが、この「AiAF Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.3-4.5S<New>」は分解清掃の面倒なズームレンズとして恐れる事は無く、レンズ清掃だけなら簡単に行う事ができます。
最近は「AF-S DX Zoom-Nikkor 18-55mm」の初期モデルなども良く見かけるようになったと思いますが、こちらはレンズがプラスチック枠に熱カシメ(パルスヒート接合)してあり、頑張ってレンズ固定枠を削らない限りレンズを分解清掃する事はできません^^;
1989年10月発売 当時の価格は¥27.000 レンズ構成:7群8枚 重さ:240g
絞りは羽根枚数:7枚 最短撮影距離:0.35m 最大撮影倍率:1:4.4 最小絞り:f22
ズーミング:回転式 絞り方式:自動絞り フィルター径:52mm
今回、分解・清掃するのは1986年4月に発売された初期型「AiAF Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.3-4.5S」(距離窓付き、フォーカスリングがプラスチック、当時の価格¥35.000、重さ260g)の後継機で、距離窓が廃止され、フォーカスリングがゴム巻きになってマニュアルフォーカスがやり易くなっています。
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①レンズ前群、レンズ中群を分解清掃していきます
A: まずゴムの吸盤オープナーなどを使って前群ユニットを反時計回りに回して取り外します。
B: 前群ユニットを分解して各レンズを分解清掃しますが、②のレンズは必ず向きのマーキングをしておいてください。
もし忘れても、②のレンズはレンズ面のカーブが緩い方が前になります。
C: 中群ユニットをカニ目ツールなどを使って反時計回りに回して外しますが、ここは割と固いのでちょっとエタノールを染み込ませると良いかもしれません。
D: 外した中群ユニットのレンズを清掃します。
ここはレンズがハメゴロシの2群3枚になっており、もし中がカビていたらプラスチック枠を削ってレンズを取り出すしかありません。
清掃が終わったら組み立てます。
②後群レンズの分解清掃
A: マウントを固定している3本のネジを外さずに緩めておきます。
ここのネジは固いので、しっかりとした工具を使用して下さい。
(接点側は黒いネジになっています)
B: フレアカッターを固定している3本のネジを外し、フレアカッターを取り外します。
次に接点を固定している皿ネジ2本も外しておきます。
C: マウントを固定している3本のネジを外し、マウントを取り外します。
この時にAF駆動ギヤも外しておきます。
D: 後群レンズを固定している押さえリングを取り外し、各レンズとスペーサーの向きをマーキングしながら一つずつ取り出し清掃します。
清掃が終わったら組み立てます。
③組み立ての注意点など
A: マウントを取り付ける前にAF駆動ギヤを入れ忘れないようにします。
B: マウントがずらしてあるので分かりにくい図になってしまいましたが、カムの左が絞りリング連動カーブに当たり、カムの右側は絞りレバー連動リング凸部に当たる様に組めばOKです。
C: マウントの絞り連動レバーは図の位置に入れます。
組み立てたら絞りリングの回転に絞りが連動するか、絞りリングF22の位置で絞りレバーを動かして絞りが動くか確認します。
レンズの清掃だけなら以上で完了となります^^
④もし絞り羽根に油が浸みていたら全分解が必要になります(汗)
A: まず絞りリングを外しますが、ここはクリックボールではなく、板バネが使ってあるのでそのまま外せばOKです。
AFレンズで絞りに油が浸みていると露出が不安定になるので、清掃は必須です^^;
B: フォーカスリングを最短撮影距離の位置にセットし、フォーカスリングゴムを外します。
次にフォーカスリング上下を指標線を基準とした位置マーキングをしておきます。
そしてテープを剥がし、フォーカスリング(前半分)を外します。
C: そのまま動かさない状態でまずヘリコイド部の位置を指標線を基準としてマーキングします。
そしてここからが肝心!
ヘリコイド部をゆっくり慎重に時計回りに回し、外れる瞬間の位置をマーキングします。
組む時はこの逆の手順で行いますので、シュミレーションをしておくと確実です。
D: ズームリングのゴムと巻いてある銅製の薄い板を外します。
⑤マウント側の分解
A: 絞りリングロックスイッチの付いているリングを外しますが、このロックスイッチは簡単に外れ、しかも付いている板バネが飛んでいく事がありますので注意して下さい^^;
B: 電子接点は位置マーキングしてから外し、ズーム伝達レバーの2本のネジも外します。
これをやらないと、高確率で電子接点を破壊します^^;
C: レンズ前に付いているプラスチック製のヘリコイドを位置マーキングしてから外します。
D: ズームユニットを固定している3本のネジを外します。
⑥鏡筒とズームユニットの分離
A: 後ろの絞りリングカムをどかしながら鏡筒からズームユニットを引き出します。
B: ズームリングがズーム機構を駆動する為のズーム伝達レバーを取り外します。
C: もしズームリングの動きに重さが欲しかったら、この部分に高粘度のグリスを塗るといいかもしれません。
D: まずコロを押さえているこのネジ2本(反対側も)を外します。
コロ関連のネジはネジ止め剤が塗付されている為に固く、ネジを潰さないように作業して下さい。
⑦ズームユニットの分解
A: 反対側に特殊ナットのあるこのコロ軸2本を外します。
B: このネジ&コロ(反対側も)を外し、黒いアウターを外します。
C: ここのコロは長い物が使われているので、確認しながら外します。
D: ここのネジ&コロを外します。
⑧外した絞りユニットの分解と絞り羽根清掃
A: ようやく絞りユニットが取り出せました。
もちろんここまで分解しなくてもテクニックで絞りを分解する事は可能ですが、とてもやりにくくにるのは間違いないと思います^^;
B: 絞りを分解する前に必ずスプリングを外します。
ピンセットなどを使うとやり易いと思います。
C: 絞り可動側リングを固定している大きなCクリップを外し、可動側リングと絞り羽根を外し、エタノールを染み込ませた綿棒などで羽根を折り曲げない様に慎重に絞り羽根7枚を清掃します。
D: 絞り羽根を綺麗にしたら組み立てます。
組み立てたら作動確認を必ず行って下さい。
⑨組み立て時の注意など
A: 絞りリングのロックボタンは板バネの長い方がボタン側で、折り目はズームリング側になります。
B: 絞りリングを付けたらロックボタンがF22でちゃんと作動するか確認し、マウントを取り付ける前にAF駆動ギヤを入れるのを忘れないようにします。
後は組み立てて完成です!
お疲れ様でした^^;
⑩「AiAF Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.3-4.5S<New>」の作例
62mm f8.0
使用カメラはフルサイズカメラ「ニコンD700」になります。
時間が無くてあまり良い写真は撮れませんでした^^;
⑪道端の雑草
70mm f4.5開放
⑫街並み
35mm f8.0
⑬夕焼けの街並み
70mm f5.6
絞るのを忘れました…orz
⑭高層マンション群
70mm f5.6
⑮駐車場
⑯テナント
35mm f3.3開放
⑰物撮り(スケールフィギュア)A
70mm f5.6 最短撮影距離0.35m
ピントはフィギュアの「目」に合わせています。
⑱物撮り(スケールフィギュア)B
70mm f11.0
2020/11/19更新 画像が大きくて鮮明度が落ちていたので、画像を縮小しました^^;
⑲物撮り(スケールフィギュア)C
70mm f11.0
広角端35mmの開放値が他社と比べてf3.3とちょっと明るいので、夜間の撮影も割といい感じで撮れました。
広角なら開放から割とシャープですし、周辺減光や収差も良く抑えてあるイメージです。
望遠端だと僅かに甘くなるので、1段絞るとかなりいい感じになると思います^^
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【ニコン「AiAF Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.3-4.5S<New>」分解・清掃】でした!
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