◎今回はニコンのオールドズームレンズの中でも比較的安価で手に入れやすい「NIKON SERIES E Zoom 70-210mm/F4」を分解・清掃してみました。
アイキャッチ画像を見て頂ければ分かると思いますが、超カビカビのジャンクで、
価格は確か¥330だったと思います。(汗)
普通は部品取り以外の用途で買わないですよね(苦笑)
このレンズを買う時は前玉&中玉のバルサム切れ、ズーム機構の故障に注意です。
1982年発売 当時の価格は¥68.000 レンズ構成:9群13枚 質量730g
フィルター径:62mm 絞り羽根枚数:7枚 最短撮影距離:1.5m (マクロモード時0.56m) 最小絞り:F32
どうやらこのレンズはかつて存在したレンズメーカー「木野精密工業(KIRON)」のOEM品なんだそうですね^^;
KIRONの「Kiron Zoomlock 70-210mm f/4 Macro」とスペック的にもレンズ構成が9群13枚、フィルター径62mmと同じですが、絞り羽根枚数がKIRONが1枚多く、質量も100gほどKIRONの方が重たくなっています。
(KIRONはズームロックと調節可能な焦点リミッターが付いてます)
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①参考としてこの超カビレンズで逆光気味の景色を撮影したサンプル画像
②超カビレンズの順光撮影
やはりこれだけカビが酷いとまともに使うのは困難ですね^^;
③それでは分解・清掃していきます
A:まず前群ユニットを外す為に横にあるイモネジを緩めます。
そして反時計回りに回して前群ユニットを取り外します。
組み立てる時は「イモネジを外し、イモネジのネジ穴を覗きながら前群ユニットを締め付け、打痕がネジ穴のセンターに来るのを確認したらイモネジを締めこめばOKです」
(おそらくここが無限遠調整にもなっています)
B:外れた前群ユニット内部は酷いカビで、分解しようにもネジ止め剤が大量に塗布してある為にレンズ押さえリングが固くて緩みません。
C: こんな時はまず100均などで売っているアセトン系のネイルリムーバーで試してみて下さい。
ちょっと染み込ませて置いておけば割と簡単に緩むと思います。
アセトンがダメな時は密閉ケース(これは100均の綿棒の入ってたケース)などにネジ山が僅かに浸かるくらいエタノールを入れ、一晩寝かせておきます。
エタノールは入れすぎるとバルサムに影響するので気をつけてください。
D:すると簡単に緩められるので、分解してレンズを清掃します。
もし緩まなかったらもう一晩寝かせます。
④中玉はバルサム切れ…orz
しかもこの中玉はレンズが3枚の貼り合わせなんですよね…
スルーしようかと思いましたが、頑張って剥離させ、貼り合わせました。
最初は面倒だったので、シンナーで剥離を試みたらコーティングがちょっと変色してびっくり^^;
写りには影響なかったんですが、このレンズにシンナーはやめた方が良さそうです。
⑤中玉は前から外す事ができます
レンズを外す時は必ず向きのマーキングをしてレンズの向きを厳守して下さい。
取り外したら、全てのレンズを清掃します。
レンズの押さえリングが固くて緩まない時は、ネジ山にエタノールを数滴染み込ませて2分ほど待つと簡単に緩む事が多いです。
⑥マウントを外して後群ユニットを取り外します
絞りリングにはクリックボールとスプリングが付いていますので、分解する時は失くさない様に注意します。
後群ユニットは反時計回りに回せば外れますが、スペーサーが入っていますので注意してください。
あと自動絞りレバーで怪我をしない様にして下さいね^^;
⑦後群ユニットの分解・清掃
A:この後群ユニットもネジ止め剤がカチカチで緩まないと思います^^;
画像③のCと同じように「エタノール一晩浸け」を実行しますが、ここのユニットは貼り合わせレンズが無いので、エタノール多めでも大丈夫です。
因みにこのレンズは二晩かけてやっと緩みました^^;
緩んだらレンズの向きをマーキングして外し、清掃して組み立てます。
もしレンズの向きが分からなくなったら、「Ai AF ニッコール70-210 F4S」のレンズ構成と同じなので、構成図をググって参考にすると良いです。
⑧ズーム機構の修理
A:ズーム&フォーカスリングのゴムをドライヤーで温めながら外します。
温めながらやらないと、割れて使い物にならなくなる事があります^^;
しかし凄い検査のマーキングです。
他の方の分解記事を見ても書いてありましたから、ニコンのOEMは品質管理が厳しいんでしょうね^^;
B:ズーム&フォーカスリングのネジを3個取り外します。
C:ヘリコイド部を外す時はまず無限遠の位置をマーキングし、そこから何回転で外れるかメモをし、そして必ず外れた位置をマーキングしておきます。
(何よりもヘリコイドが外れた位置が重要です)
因みに直進ズームのフリクションは右端のパーツ裏側に貼ってあるフェルトの厚みで調整するみたいですね。
D:実はここまで分解しなくても、ある場所で分割できる事が分かりました^^;
まず画像⑧のDの指標筒(右端)を被写体側にずらし、画像⑨のAの部分を外せばマウントを外さなくても分割はできます。
⑨ズームのコロが割れるトラブルが多いみたいです
A:レンズを分割するだけなら指標をずらしてこの場所を外すだけです。
(画像⑧のD文参照)
B:そして位置マーキングをしてからズームアウターリングを外します。
ここでズーム機構が引っ掛かったりガタが大きい理由が分かりました。
C:コロが割れていました。
他のサイトさんでもなっていたので、たまにあるトラブルみたいです。
やはり1個では荷重が掛かり過ぎるんでしょうね…
とりあえず今回はエタノールで洗浄して接着しておきましたが、理想はプラ棒を削って作るのがいいと思います。
D:自分は点検の為にここまで分解しました。
特に問題は無かったので、あとは逆の手順で組み立てて完成です^^
⑩「NIKON SERIES E Zoom 70-210mm/F4」の作例
使用カメラは「ニコンD90」で、絞り値などは忘れたので書いてません^^;
⑪バイクショップ
⑫とある航空基地
⑬夕焼けと富士山のシルエット
⑭ツツジ
⑮石垣
ニコン監修のOEM品だけあって、廉価版ズームでも良く写る印象でした^^
この後発売される「Ai AF ニッコール70-210 F4S」と同じレンズ構成だけはありますね~
そう言えば、直進ズームを使いこなしている人はズームよりヘリコイドが重い方がいいと仰ってました。
望遠側でピントを合わせてから、被写界深度の深い広角側に移動させるからだそうです^^;
自分はズームが重い方がいいと思っていました。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、落ち着いて慎重に行って下さい。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、参考程度にして下さると嬉しいです。
あとレンズの分解・清掃は必ず自己責任でお願い致します(汗)
以上、【ニコン「NIKON SERIES E Zoom 70-210mm/F4」分解・清掃】でした!
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