ニコン「Nikon LENS SERIES E Zoom 75-150mm F3.5 (New)」分解・清掃・作例

ニコン

◎だいぶ前にリサイクルショップで買ったカビジャンクの「Nikon LENS SERIES E Zoom 75-150mm F3.5」なんですが、これ以上カビが繁殖するのも精神的にも良くないと思い、今回の作業としました(汗)

このレンズは1980年に発売された廉価版のリトルニコン「Nikon EM」の為に製造された「Nikkor」の名が付かない「レンズシリーズE」の一つで、他には「E35mm F2.5」、「E100mm F2.8」、「E36-72mm F3.5」、「E70-210mm F4」などがあります。(他にも日本国内未発売のレンズもあり)

絞り連動爪も無く、一番安いガラス硝材が使われていて、やたらプラスチッキーと言われていますが、実は外装はほぼ金属製で、プラスチックが使われているのは絞りリングと内部の絞り固定パーツだけです。

あとこのレンズには1980年5月に発売された前期型と1981年に鏡筒外観を変更した後期型(New)があり、前期型は外観が全て黒に対し、後期型は高級感を増す為にレンズ着脱リングが銀色に変更されています。

1980年5月発売 当時の価格は¥54.000 焦点距離:75-150mm
開放値: F3.5 最小絞り: F32 レンズ構成: 9群12枚
絞り羽根枚数: 7枚 最短撮影距離: 全域1.0m
コーティング:マルチコーティング  フィルター径: 52mm
ズーム形式: 全長の変わらない直進ズーム 重さ: 520g

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

①まずはレンズのみの清掃から

A: まず先端にあるイモネジを緩めます。
B: 前群レンズユニットを外したらスペーサーを回収し、組む時の為にイモネジの打痕を確認しておきます。
無限遠調整はここで出来ますが、その時はスペーサーを抜いてやるしかないと思います。

C: 前群レンズユニットを分解してそれぞれのレンズを清掃しますが、スペーサーの向きも厳守して下さい。
D: 2群レンズユニットを反時計回りに回して外します。

②2群、3群レンズの清掃

A: 2群レンズユニットを外した状態です。
B: 2群レンズユニットを分解し、レンズの向きをマーキングしながら取り外して清掃します。

C: 更に奥にある3群レンズユニットを反時計回りに回して外しますが、ロックリングを外すとレンズが脱落して向きが分からなくなるので、レンズサッカーなどで慎重にレンズを外します。
D: 外したレンズを清掃します。

③マウントの取り外し

A: マウントを固定している4本のネジを外しますが、中央の遮光パーツは外す必要はありません。
B: 次にトラブル防止&グリスアップの為に絞りリングを外しますが、クリックボールとスプリングが飛び出す事がありますので、必ず袋の中で作業して下さい。

C: ニコンはネジロックが塗布してある事が多く、このレンズも前もってアセトンを数滴染み込ませておきます。
D: 4群レンズユニットを反時計回りに回して外します。

④4群レンズの清掃(レンズの清掃のみでしたらこれで完成です)

A: 4群レンズユニットを外すとスペーサーがありますので回収しておきます。
B: 4群レンズユニットを分解し、レンズ&スペーサーを取り出しながら向きマーキングと順番マーキングをして各レンズを清掃します。

レンズの清掃のみでしたら、後は逆の手順で組み立てれば完成です。

⑤絞り、ヘリコイドのメンテナンス

A: ドライヤーでフォーカス&ズームリングゴムを温めたらリングゴムを取り外し、銅板のコロカバーも外します。
B: フォーカス&ズームリングを広角端75mm&最短撮影距離1.0mにセットしたらコロ部に位置マーキングをします。

C: ヘリコイドを外す前に画像Dで外れるまでの角度をご覧ください。
そしてコロを外し、ゆっくり慎重に前鏡筒を回して外れる瞬間の位置を前鏡筒とフォーカス&ズームリングに合いマーキングしておきます。

⑥ヘリコイドグリス交換と絞りユニットの取り外し

A: ヘリコイドが外れた状態です。
B: 絞り整備と直進ズームのフリクション整備をしない場合はここでヘリコイドグリス交換をして組み立てて下さい。
上記の整備を引き続きする場合は一番最後にヘリコイドグリス交換をして下さい。

C: 絞りユニットの取り外しはまずユニットに回転方向の位置マーキングをしてから、この3個のネジを取り外します。
D: 絞りユニットを引き出します。

⑦絞り整備

A: まずバネの付いたピン位置をカバーにマーキング(青丸)し、バネを取り外します。
B: カバーのネジ3個を取り外します。

C: カバーを取り外し、絞り羽根の向きと表裏を確認します。
D: 絞り羽根が擦れる部分や回転部は全てエタノールなどで脱脂します。

⑧絞り組み立てと直通ズームのフリクション増し整備

A: 絞り羽根を固定側に組んだら、可動部のバネが掛かるピンを先ほどのマーキングに合わせて組み、あとは慎重に絞り土台と組み合わせてバネを掛ければ完成です。

B: このレンズは直通ズームをする時にスカスカになっている事が多いですよね💦
対策としてフォーカス&ズームリング裏のフェルトを交換するのですが、すぐにスカスカになるので、ここはズーム機構をグリスアップする作業になります。
なので必ずしも必要な作業ではありませんので、やらない方はスルーして下さい。
まずリングの位置マーキングをしてからフォーカス&ズームリングの固定ネジ3個を外します。

C: フォーカス&ズームリングを引き抜きます。
D: ヘリコイドを固定しているネジ3個を取り外します。

⑨ズーム機構の分解

A: ヘリコイドを外し、スペーサーも回収します。
B: まずこの2群を可動するコロを取り外す作業から始めます。

C: フォーカス&ズームリングを望遠端(150mm)にして回すと大2個、中1個、小3個が見えると思います。
まずフォーカス&ズームリングを回してストップする位置のネジ大1個を外しますが、このネジは非常に固く締められていますので、ネジにドライバーを当てたら、ドライバーの後ろをちょっと叩いてから緩めると良いです。

D: 今度はフォーカス&ズームリングを逆回転して止まる位置のネジ大1個を外します。

⑩ズーム機構の分解B

A: そしてその位置からフォーカス&ズームリングを60度回転させるとネジ中がありますので、カムリングと中の筒に「M」とマーキングしたら、ネジ中を取り外します。
B: そしてフォーカス&ズームリングを引き抜き、2群レンズ可動枠を回さずに引き出したら、こちらもネジ中の位置に「M」マーキングしておきます。

C: 2群レンズ可動枠のコロはこんな感じになっています。
D: 次に回転カム位置の合いマーキングをし、3個のコロ(ネジ小)を取り外します。

⑪ズーム機構のグリスアップ

A: 3群可動枠は位置決めが無いのでそのまま引き抜き、回転カムも引き抜きます。
B: ここと回転カムの当たる部分に固めのグリスを塗布しますが、自分の持ち合わせではそれほど直通ズームのフリクションが増えなかったので、かなり固めでも大丈夫だと思います。

C: 回転カムと3群可動枠(向き注意)をマーキングに従って組み立てますが、もしマーキングを忘れてもこの位置で組めばOKです。
D: 3個のコロ(ネジ小)にグリスを塗布して取り付けます。

⑫ズーム部の組み立て

A: 回転カムのMマーキングに従って2群可動枠(向き注意)を入れ、フォーカス&ズームリングを入れたらネジ中を取り付けます。
そして残りのネジ大2個をフォーカス&ズームリングを回しながら取り付けたら完成です。
完成したらフォーカス&ズームリングがちゃんと回るかチェックして下さい。
(因みに写真では2群可動枠にグリスを塗っていますが、これは意味が無いのでやらないで下さい💦)

B: このスペースにも固めのグリスを塗っておくと直通ズームのフリクションが増します。

後は逆の手順で組み立てれば完成です。
お疲れさまでした!

⑬「Nikon LENS SERIES E Zoom 75-150mm F3.5」の作例

使用カメラはフルサイズ一眼レフカメラのニコンD700になります。
撮影に関する数値は分かる範囲で記載しています。
75mm f8.0

⑭タンポポ

150mm f5.6

⑮碍子

150mm f3.5

⑯JR東海道線

75mm f8.0

⑰架線柱

100mm f3.5

⑱相鉄 甲種輸送

75mm f11

⑲VVVF

75mm f8.0

⑳植樹

150mm f3.5

㉑景色

75mm f11.0

㉒菜の花

100mm f3.5

㉓ガソリンスタンド

75mm  f8.0

開放では僅かに周辺減光しますが、歪曲収差も少なく、良く解像している素晴らしいレンズだと思いました。
ニッコール千夜一夜を読んでも光学性能にはこだわりを持って作られた事が書いてあります。

 

◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)

コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。

 

以上、【ニコン「Nikon LENS SERIES E Zoom 75-150mm F3.5」分解・清掃・作例】でした!

 

 

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