ニコン「AF Zoom Nikkor 35-80mm/F4-5.6 D」分解・清掃

nikkor35-80アイキャッチ ニコン

◎今回のクランケはニコンのズームレンズで、ニコンのズームではレンズが最小構成となる6群6枚2群ズームの「Ai AF Zoom Nikkor 35-80mm/F4-5.6 D」を分解・清掃してみました。
このレンズは古くなるとズームリングが重くなる傾向があるらしく、その原因も探求してみました。

もう一つの6群6枚2群ズームは2001年に発売された「AF Zoom-Nikkor 28-80mmF3.3-5.6G」になります。
こちらの開発話はニッコール千夜一夜物語「第六十三夜 AF Zoom-Nikkor 28-80mmF3.3-5.6G」に詳しく解説されていて、レンズ構成はこのレンズと同じなので参考になると思います。(Gの方が前玉が大きいです)

1993年8月発売 当時の価格は¥28.000 レンズ構成:6群6枚 フィルター径52mm
絞り羽根枚数:7枚  最短撮影距離:0.35m  重量:255g

 

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

①それでは分解・清掃していきます!

nikkor35-80分解修理A:ズームリングを35mm、フォーカスリングを∞にセットします。
そしてフォーカスリングのゴムを外し、無限遠調整を固定しているテープを剥がしますが、剥がす時に分割面がズレない様に注意して下さい。

B:そのまま分割面と前玉枠に無限遠位置を鉛筆などでマーキングしておきます。
これは組み立ての目安となりますが、作業中に消えてしまう事もあるので写真も撮っておくと良いです。

C:フォーカスリング前枠を外し、反時計回りに回して止まる位置も確認しておきます。

D:そして前群ユニットが外れるまでの回転数をメモし、外れる位置にマーキングしておきます。(これは結構大事です)

でもこのレンズは無限遠を出すのがとても簡単なので、万が一忘れても大丈夫です。
無限遠はBの状態でカメラに取り付けてMFにし、ファインダーを覗きながら遠景に前玉枠でピントを合わせ、合わせ面をテープで固定するだけです。
(但し、35mmと80mmでは無限遠の位置が異なりますので注意してください)

 

②中玉とマウントの取り外し

中玉とマウントA:外した前群ユニットのレンズを外して清掃します。
このズームは嵌め殺しレンズがありませんので、全てのレンズが清掃可です。

B:中玉を「吸盤オープナー」などで反時計回りに回して外し、清掃します。

C:マウントのフレアカッターを外し、接点を固定している2本のネジも外します。

D:マウントを固定している3本のネジを外し、接点の配線に気を付けながらマウントを引き抜きます。
(黒いネジは接点側用になります)

 

③絞りリングとレンズ後群の取り外し

レンズ後群A:マウントを外したら左のリンク位置関係をチェックし、右のAF駆動ギヤを取り外します。

B:このレンズにはクリックにボールを使っていないので、そのまま絞りリングを引き抜けばOKです。
そしてレンズ後群を固定しているリングを取り外し、レンズを「レンズサッカー」で一枚ずつ取り出します。
「レンズサッカー」が無い場合は、布などで押さえながら静かに傾けて取り出しますが、一気に3枚出てくるので落として傷付けないようにしてください。

C:外したレンズを清掃し、組付けます。(絞りを清掃する場合は最後に組付けます)
この時に一枚ずつ入れると引っ掛かって入りにくいので、2~3枚まとめて入れるのをおススメします。
引っ掛かってどうにもならなくなったら、ドライヤーで鏡筒を温めて外します。

レンズを清掃するだけなら、作業はこれで終了です^^

D:絞り羽根を清掃する為にまずズームリングゴムを外します。

 

④ズーム機構の分解

ズーム機構分解A:ズームリングゴムを外したら、巻いてある鉄板も外します。
(この鉄板を戻す時の固定位置はテープの粘着場所が何も無い場所にしてください)

B:ズームリングを固定しているリングをスイッチの反対側を持ち上げて外します。
どうやらこの固定リングのネジ部分が長い年月を経て圧迫変形し、ズームリングが重くなる事が分かりました。
対策はネジを少し緩めるか、擦れている部分を削るしかなさそうです。
自分は面倒だったので、とりあえずネジを緩めて対応しました^^;

もう一つの原因は⑦のCに書いてありますので参照してください。

C:ズーム機構駆動ピン&電子接点を固定している2本のネジを外します。
そして電子接点に気を付けながらズームリングを外します。

D:そして「ズーム機構駆動ピン&電子接点」を外しますが、この時に入る位置を確認しておきます。

 

⑤ズーム機構の分解

ズーム機構の分解A:距離用の電子接点を位置マーキングしてから外します。

B:コロ付きネジ4本を外し、ズーム機構のヘリコイド部分を外します。
このネジは「ネジ止め剤が塗付」してあってかなり固いので、事前にスポイトなどでエタノールを染み込ませておくと良いです。
因みにネジとコロの大きさがそれぞれ違いますので、間違えないようにマーキングしておきます

C:中の大きな押さえリングを外します。

D:中の金属カラーを固定している3本のネジを外します。

 

⑥ズーム機構から絞りユニットの取り出し

絞りユニットA:金属カラーを外し、フォーカスリング(後)を外します。
金属カラーを組む時はサービスホールの穴3箇所の位置が合うように組み立てます。

B:そして後ろのネジ3個を外し、ズームユニットを引き抜きます。

C:絞り&レンズ後群ユニットを固定しているコロ付きネジを外します。
(ネジ止め剤塗付してあります)

D:反対側の絞り&レンズ後群ユニットを固定しているコロ付きネジも外します。
それぞれネジとコロの大きさが違うのでマーキングしておくと確実です。
(これもネジ止め剤塗付してあります)

 

⑦絞り羽根の清掃と落下品はここに注意!

絞り清掃と落下品の注意A:取り外した絞りユニットのCリングを外し、羽根を動かすリングを外します。
そして羽根の向きと構成を良く観察しておきます。

B:エタノールで一枚一枚掃除しますが、力を入れて曲げない様に注意して下さい。
撮影していて露出が安定しない場合はほぼ絞り羽根が油で汚れています

C:ズームリングが重くなるもう一つの原因はこれ!
画像④のBの対策でもズームリングが軽くならない時はこれがズレています。
この部分はレンズをぶつけたり&落としたりすると、このスライダーがズレてしまい、ズームコロやズームリング駆動ピンの摩擦が極端に増えてしまうからです。
調整はコロとピンの部分がセンターに来るよう調整すればOKです。

ここがズレていると無限遠も狂いますので、無限遠の再調整が必要になります。
(無限遠の調整は①のDに説明しています)

後は逆の手順で組み立てて完成です^^

 

⑧組み立ての注意点など

組み立ての注意A:フォーカス接点は⑤のCの作業が終わってから取り付けないと破壊するので気をつけて下さい。

B:ズーム接点も破壊しない様、慎重に駆動ピンをズーム機構の穴に入れ、ズームリングをゆっくり組み込みます。

C:マウントの絞り駆動部分はこの位置関係で組み立ててください。

D:フォーカスリング(前)は前群ユニットの凸がリングの凹に入る様に組み立てます。

お疲れさまでした!!

 

⑨「Ai AF Zoom Nikkor 35-80mm/F4-5.6 D」の作例

交差点使用カメラは「ニコンD700」で、フードは「HN-3」を使いました。
80mm  f10.0

 

⑩高速道路下

高速道路下35mm f8.0

 

⑪電柱

電柱

80mm  f5.6開放

 

⑫某飯屋

飯屋35mm f7.1

 

⑬屋上駐車場での夕焼け

夕焼け35mm  f9.0

 

⑭ブツ撮り(スケールフィギュア)

あずにゃんフィギュア80mm  f13.0

 

⑮ブツ撮り(スケールフィギュア②)

あず②フィギュア80mm  f5.6開放
ピンはフィギュアの「目」に合わせています。

廉価版ズームとしては写りもシャープで色乗りも良く、レンズ自体もとても軽いので気軽に使うには良い選択のレンズの1つだと思いました^^
何よりもこのシンプルなレンズ構成でここまで写るのは素晴らしい限りです。

 

 

◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、落ち着いて慎重に行って下さい。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、参考程度にして下さると嬉しいです。
あとレンズの分解・清掃は必ず自己責任でお願い致します(汗)

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以上、【ニコン「AF Zoom Nikkor 35-80mm/F4-5.6 D」分解・清掃】でした!

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