今回は1968年に発売されて約20年ものロングセラーになった「オリンパス トリップ35」を分解・修理・清掃してみました。
気軽に旅行に持っていける意として「トリップ35」と命名されたとか^^
価格が安く、故障も少なく、自動露出などが人気の秘訣で、「グッドデザイン賞」と「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」も受賞しています。
このカメラをリサイクルショップで買った時の状態はジャンクで、鏡筒はガタガタ、それを固定しようとしたのか大量の瞬間接着剤が絞り環からファインダー下部、内部の赤ベロまで染み込んでいるという最悪の状態でした。
あとレンズはカビが発生しています。
使い込んだトリップ35は鏡筒のネジが緩んでいる事があるので、中古を買う時は気をつけてください。
1968年発売、1983年生産終了 当時の価格は¥14.800 重量約410g
フルサイズコンパクトEEカメラ 対応フィルム: ISO25~400
レンズ「D.Zuiko 40mm F2.8」3群4枚テッサー型 距離合わせは前玉回転式
ゾーンフォーカス:最短撮影距離1m、人物1.5m、グループ撮影3m、風景∞
シャッタースピードは1/30sと1/250sの2速。(オート時で、手動は1/30s固定)
絞り:オート・F2.8~22(フラッシュ用)
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①それではトリップ35を分解・修理・清掃していきます!
A:巻き戻しクランク下部をドライバーなどを入れて固定し、巻き戻しクランクを反時計回りに回して外すと、そこにネジ2本が見えますので外します。
B:サイドにあるネジを外し、ゆっくり慎重に軍艦部カバーを外します。
(シャッターボタンは固定されていないので注意してください)
C:カバーが外れたらシャッターボタンを外して保存し、フラッシュ用接点に繋がっている配線が邪魔と感じたら「半田ごて」で分離しておくと楽です。
D:底部カバーを外し、巻き戻しボタンを紛失しない様に外して保存します。
②鏡筒がガタガタなのでレンズボードを外します
A:レンズ脇の貼り革をエタノールを染み込ませながら少しずつ剥がし、ネジを外して両脇のフロントパネルを外します。
(レンズを清掃するだけなら貼り革を剥がさなくても底部カバーを外して三脚ネジ部に巻いてある配線を緩め、画像③のDのネジ3個も緩めたらセレンの配線を引き抜く事ができます :断線しないよう慎重にやって下さい )
B:レンズボードを固定している4本のネジを外します。
この時に右上の配線クランプの固定状態を良く観察しておいてください。
そして前玉を外しますので「ゾーンフォーカスリング」を最短撮影距離(人物)にセットし、内側の斜めギザギザになっている部分に鉛筆などで位置マーキングをしておきます。
(なるべく正確に位置が分かるようにします)
C:メッキのしてある銘板リングの横の3本のイモネジを緩め、フォーカスリングと連動している部分をチェックしながら銘板リングを外します。
そして最短撮影距離の位置から何回転で抜けるかを数えながらゆっくり慎重に前玉を回し、抜ける瞬間の位置(とても大事です)をマーキングしておきます。
外した前玉を清掃しておきます。
D:セレン受光レンズを固定している2本のネジを外し、後ろから配線を押しながらセレン受光レンズを外します。
組み立て時は必ずセレンの回転する遮光板連動部とISO設定リングにあるピンを組み合わせて下さい。
③鏡筒をどんどん分解していきます
A:セレン受光レンズを組む時は必ずここの凹凸を組み合わせないとフィルム感度の設定ができなくなるので注意してください。
B:3個のネジを外し、メッキ枠と黒の内枠をセットで外しますが、ここの間にはクリックボールがあるので紛失に注意します。
(このBの工程を飛ばしてDのネジを外せば一気に丸ごと外れます)
C:するとまたフォーカスリングにクリックボールがあるので紛失に注意します。
自分はグリスを塗って落ちないようにしています。
そしてフォーカスリングを外します。
D:絞り環を押さえているプレートのネジ3本を外してプレートを外しますが、ここの裏にもクリックボールがあるので紛失に注意します。
④レンズの取り外し
A:絞り環を押さえているプレートを外したら、クリックボールを外して保存するか、グリスを塗って落ちないようにしておきます。
B:このカメラは買った時から鏡筒がガタガタだったので、恐る恐る固定ネジを見てみると、2本が脱落して紛失、②は落ちずにかろうじてスイッチで脱落を逃れ、①はギリギリネジ山に残ってブラブラしているだけでした(汗)
こんな状態まで使っていた前のオーナーさん凄いです^^;
だから瞬間接着剤を流し込んだのでしょうけど…(汗)
レンズをボードから外す前に絞りとシャッターのリンクの状態を観察するか、写真を撮っておいてください。
C:たった2本しか残ってなかったレンズ固定ネジ… (本来は4本です)
紛失した2本は自分のジャンクネジコレクションから補充しておきました。
D:レンズを分解・清掃します。
絞りを外すと「後玉」も一緒に外れますので、全てのレンズを清掃します。
ついでにシャッターや絞りの動きもチェックし、動きが悪かったら分解・清掃します。
⑤ファインダーの清掃、メカのチェック
A:レンズの清掃、絞りとシャッターの動作チェックが済んだら組み立てておきます。
レンズをレンズボードに取り付ける時は、ボード側のシャッターリンクがシャッター幕動作穴①を破壊しない様に気を付けて組んでください。
B:ファインダーを清掃する為に黒い遮光紙を取るのですが、剥がす前にエタノールを染み込ませて接着剤を柔らかくしておくと楽に剥がせます。
C:極細の綿棒などでファインダーを清掃しますが、ここでは表示枠が劣化しているのでエタノールなどの溶剤は厳禁です。
フジレンズクリーニングリキッドなどで、隅から表示が剥がれないのを確認しながら清掃します。
遮光紙の固定は木工用ボンドなどで十分だと思います。
D:メカの動きをチェックし、動きが悪かったら清掃・注油しておきます。
(注油する時は1滴でも多量なので、爪楊枝などでちょっと染み込ませる感じです)
⑥組み立ての注意点など
A:レンズボードをカメラ本体に取り付ける時は配線の噛み込みに注意します。
セレンからの配線は三脚ネジ穴の後ろを通しておきます。(写真はまだしていません)
B:前玉を前回マーキングした最短撮影距離(人物)にセットし、フォーカスリングを最短撮影距離(人物)にセットします。
そしてメッキされた銘板リングのピンをここの凹に入れて固定します。
C:何とピンの部分はちゃんと「in」の文字が来ていて分かり易くなってました(笑)これはカメラによってステッカーの位置が違いました^^; スミマセン…
⑦無限遠の出し方とミラーレスでの撮影
A:セレンの光を塞ぎながらシャッターボタンを押しっぱなしにして絞り開放にします。
そしてフィルム幅に合う半透明な擦りガラスを感光面にセットし、ガラス面にルーペを固定します。
自分はルーペ代わりに引き伸ばしレンズを使っていますが…(笑)
B:カメラを三脚に固定して遠景に向けます。
ここのギヤの中心部をマイナスドライバーで反時計回り回すとシャッターが開きますので、ルーペで覗きながらフォーカスリング位置が無限遠の状態で遠景にピントが合っているか確かめます。
駄目なら銘板リングを外し、中の前玉ユニットを回して遠景にピントを合わせます。
(P.S. ガバナのフライホイールを固定する方法もあります。)
そして一応フォーカスリング位置が無限遠の状態になっているか確認してから銘板リングを取り付けて無限遠調整は完了です。
C:長き闘いはこれにて終了!
正直、瞬間接着剤が絞り環に染み込んで外れなかったのと、貼り革、ファインダー、赤ベロまで瞬間接着剤漬けになっていてとても大変でしたorz
でも動くようになって大満足!
カメラをピカピカに磨きあげます^^
D:この機会を逃すまいと、レンズを外した時にミラーレスカメラへ取り付けて撮影もしてみました。(笑)
⑧トリップ35「D.Zuiko 40mm F2.8」の作例
開放f2.8
ミラーレスカメラ「ニコン1 V1」に取り付けて撮影しています。
⑨公園のベンチ
⑩セコニック露出計
⑪フジカ50M
⑫住宅街
⑬中古屋さん
⑭室内ブツ撮り(プライズフィギュア)
⑮室内ブツ撮りB
ちょっと絞って撮影していますが、この時はシャッター幕を絞り代わりに使っているので「後ろのボケ具合」は参考にならないので注意して下さい^^;
何故ならこのカメラのシャッターは閉じると「猫目」になるからです…
「D.Zuiko 40mm F2.8」、逆光には弱いですが、順光で強い光の無いシーンならとても良く写る感じでした。
◎カメラの分解・清掃はリスクが伴いますので、落ち着いて慎重に行って下さい。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、参考程度にして下さると嬉しいです。
あとカメラの分解・清掃は必ず自己責任でお願い致します(汗)
以上、【オリンパス 「トリップ35 (OLYMPUS TRIP35)」 分解・修理・清掃】でした!
コメント
はじめまして。
トリップ35の修理をしてみようと思って、こちらの記事を参考にさせていただいています。
質問なのですが、②レンズボードを外すところで前玉を外す際
「「ゾーンフォーカスリング」を最短撮影距離(人物)にセットし、内側の斜めギザギザになっている部分に鉛筆などで位置マーキング」とあります。
この時のマーキングした位置が、⑥で組み立てるときの無限位置という事でしょうか?
それとも「最短撮影距離の位置から前玉を回し、抜ける瞬間の位置」が無限位置になるのでしょうか…。
いろいろ本やネットを調べているのですが、いつもこの無限遠の位置をマーキングするの意味が分からず、分解するのを躊躇しています。
もしよろしければ教えていただけると助かります。
お手数をおかけしますがよろしくお願いします。
ritsさんはじめまして! ご訪問&コメントありがとうございます!
大変申し訳ありません、記事の内容が間違っていたので訂正致しました^^;
この時のマーキングした位置は⑥で組み立てるときの無限位置ではなく、抜ける瞬間の位置も無限遠の位置ではありません。
抜ける瞬間の位置が重要なのは、ヘリコイドはどの位置からでも組み込む事ができてしまうからなんです。
⑥で組み立てるときもマーキングをした「最短撮影距離(人物)」位置で行って下さい。
この記事では無限遠を基準とした分解・組立はしていませんでした^^;
無限遠の位置は分解した時の位置を再現できればほとんどズレる事はありませんが、確実を期すなら⑦の方法で確認する事をおススメ致します。
ご質問ありがとうございました^^