◎今回は1974年に発売されたオリンパスの「OLYMPUS 35DC (BC 後期型)」を分解・清掃・修理してみました。
「DC」は明るいデラックスな「F.ZUIKO 40mm/F1.7」レンズを搭載し、コンパクトなボディである事の意で、「BC」はバッテリーチェッカーの意になります。
このカメラで良く発生する電池ボックスの断線と露出メーター不動の点検、そして1971年に発売された初期型との違いの比較も載せてみました。
因みにこのカメラはバッテリーが入っていないとシャッターが切れないので注意が必要です。
1974年発売 当時の価格は¥33.800 以下カタログから~
画面サイス:24×36mm(35ミリサイズ) レンズ:F.ズイコーF1.7 f=40mm (4群6枚)
シャッター:セイコープログラムシャッター
シンクロ:エレクトロフラッシュ接点とバルブフラッシュ接点の手動切換式
ガイドナンバー目盛:10~40(m)、32~130(ft) フラッシュマチックシステム
ファインダー:ブライトフレームファインダー0.6倍、パララックス(視差)補正マーク
(1m)付、シャッタースピード目盛・絞り目盛表示、露出不足時警告赤ゾーン付
フィルム装填:ELシステム(イージー・ローディング)、バッテリーチェッカーボタンによりロックフリー
フィルム巻き上げ:レバー式ワンストローク巻上、予備引出角35°・巻上角135°、小刻み巻上可能、セルフコッキング、二重巻上防止、二重露光防止
フィルム駒数計:順算式、自動復元
フィルム巻戻し:クランク式、巻戻しボタンセット式
ピント調節:二重像合致式一眼連動距離計、直進ヘリコイド方式、距離目盛0.85m(2.8ft)~∞
露出調節:露出計による完全自動調節(EE)、逆光補正用BLCボタン付(+1.5EV)
フラッシュ調節:アクセサリーシューにフラッシュ装置を付けることによりフラッシュマチックシステムに自動切換、日中シンクロ可
受光部:ポイントアイ、CDS使用
電源:水銀電池(JIS・H-D型またはHS-D型)1.3V 1個使用、バッテリーチェッカー付き
(ロックフリーボタン兼用)
EE可能範囲:EV5.5(F1.7・1/15秒)~EV17(F16・1/500秒)、露出不足時レリーズロック付き
フィルム感度目盛り:ASA25~800、DIN15~30
セルフタイマー:レバー式(90°)、約10秒 裏蓋開閉:蝶番式
アクセサリーシュー:ダイレクトコンタクト接点付き フィルター径:49mmねじ込み式
大きさ・重量:114(巾)×71(高)×57(厚)mm、490g
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①まずは貼り革を外し、軍艦部カバー周辺パーツを外していきます
A: まずはエタノールを染み込ませながら表左右に貼ってある貼り革を剥がします。
B: セルフタイマーのレバー固定ネジは逆ネジになっているので気をつけて下さい。
C: 巻き戻しクランクはフィルム室内の軸を固定して反時計回りに回せば外れます。
巻上げレバーも化粧ネジを外して取り外します。
そして巻き戻しクランク部の固定ナットと右側面のネジを外します。
D: 巻き戻しクランク軸にはスプリングワッシャーが入っているので無くさない様にしてください。
外したパーツを100均のチャック付き小袋に入れて保管しておくと便利ですよ^^
②軍艦部カバーの取り外しなど
A: 軍艦部のカバーを外し、巻き戻しクランク部の銅ワッシャーとシャッターボタンを保存しておきます。
B: 外した軍艦部カバーのファインダー窓などを清掃しておきます。
C: 底部のカバーの固定ネジ3本を外し、カバーを取り外します。
D: レンズボードを固定している4本のネジを緩めて外さない様にしておきます。
③セルフタイマーと周辺機構の取り外し
A: ガイドナンバーノブの基盤を取り外します。
矢印の配線は組む時に噛み易いので気をつけて下さい。
B: セルフタイマーを固定している2本のネジを外し、セルフタイマーをユニットごと取り外します。
C: まず左のピンに巻いてある配線をほどき、フラッシュ取り付け感知スイッチ部を取り外します。
この取付ネジはとても固いので、力を入れすぎて怪我をしないようにして下さい^^;
D: ファインダー上の基盤を固定しているネジを外しますが、ネジの大きさが違うので組み立て時に間違えない様にして下さい。
④ファインダーの取り外し
A: 基盤を持ち上げ、ファインダー上の遮光紙を外します。
B: ここからの作業ではこのメーターの針を曲げてしまう事故が発生し易くなりますので、針を曲げない様に注意しながら作業を進めます。
C: ファインダーを固定しているネジ3個を外しますが、ファインダーを外すと距離計の連動ピンが脱落するので気をつけて下さい。
D: 配線に注意しながらファインダーを後ろから持ち上げるようにしてファインダー本体を取り外します。
⑤ファインダーの清掃・点検
A: 外したファインダーのここを押してスムーズに動くか点検します。
戻りが悪かったり、動きが渋い時は軸が錆びていたり、グリスが硬化しているので分解して清掃&グリスアップする必要があります。
B: ファインダーの各レンズとハーフミラーを清掃しますが、ハーフミラーの蒸着面は溶剤を使うと簡単に剥げてしまうので、必ず水溶性の「FUJIFILM レンズクリーニングリキッド」などで隅から様子を見ながら清掃して下さい。
C: ファインダーを外したら必ず距離計の連動ピンも外して保管しておきます。
D: レンズ前群を清掃する為に銘板に付いている大きなリングナットをカニ目レンチなどを使って外します。
⑥前群レンズの清掃とレンズボードの取り外し
A: フィルム感度セット環に連動するピンはここに入りますので、組み立ての際は注意してください。
B: 外したレンズ前群のレンズを分解・清掃します。
C: レンズボードを固定しているフロントパネル側の4本のネジを外し、軍艦部の隠しネジも外します。
D: レンズボードを外す時は本体下部に付いているメーターの針に気をつけながら外します。
⑦メーターの点検と電池ボックス配線の修理
A: メーターの針を動かして動きが渋かったり固着している時は、矢印のネジを少しずつ緩めながらメーターの針が良く動く位置で止めます。
針がガイシにくっつく時は針とガイシをエタノールを染み込ませた綿棒で洗浄します。
そして一番問題なのが電池ボックスに繋がる配線で、大方「水銀電池から出る腐食性ガスで酸化」してしまっています。
ピンセットで2~3回揺すって配線が外れないのならOKですが、このカメラは…
B: 配線に触れただけで簡単に外れてしまいました。
もし配線が白くなっていたら、配線を交換した方が後々面倒な事にならずに済みます。
C: 端子を外します。
ミニ四駆付属の工具がピッタリで助かりました^^;
D: 本来はナットではなく、ネジの先端にハンダ付けしてあるみたいですが、電池ボックスは外す事ができない為にナットを削ってハンダ付けする事にしました。
古い配線は酸化してハンダが乗らないので、新しい配線を中継します。
⑧レンズ後群の取り外しとメカの点検
A:電池ボックスに接点と新しい配線をしたナットを取り付けます。
古い配線は酸化している部分まで切断し、そこに新しい配線をハンダ付けします。
接続部分は「熱収縮チューブ」でやりたかったのですが、在庫無くビニテで^^;
B: 各メカを動かし、粘りがないかを一通りチェックします。
C: 電気接点は接点復活剤を染み込ませた綿棒などで汚れを落としながら塗付しておくと安心感が増します。(サンハヤト ニューポリコールキングなど)
D: レンズ後群を外します。
⑨レンズ後群の清掃とレンズボードの組み立て
A: 外したレンズ後群を分解・清掃し、組み立てます。
Cリングを外す時はレンズを傷つけない様に注意してください。
B: レンズボードをメーターの針に気を付けながらカメラボディと組み合わせ、下のネジ2本を半分だけ締め込んで、レンズボード上部が動くようにしておきます。
そして矢印部分に距離計の連動ピンを入れますが、ファインダーを入れるスペースを確保しておきます。
C: そしてファインダーを組み込み、ヘリコイドを動かして二重像が動くのを確認したらレンズボードの全てのネジを取り付け&締め込みます。
D: メーターの針がちゃんと動くか「爪楊枝」などで優しく動かして確認します。
⑩無限遠調整とファインダーの調整
A: まずフォーカスリングを無限遠にセットしてフォーカスリングを固定しているイモネジ3個を緩めます。
B: そしてフォーカスリングをこの辺りにセットして固定ネジを締めます。
C: ピントグラス&ルーペをフィルム面に当て、カメラを遠景に向けます。
ここのピンを押すとシャッターが全開になりますので、フォーカスリングを回して無限遠にセットします。
そしてフォーカスリングのネジを緩め、フォーカスリングを∞の位置にセットすれば完了です。
D: 無限遠調整をした時にファインダーを覗いて二重像がズレていたらフィルム室にあるネジを外し、この中にあるネジを回して無限遠に二重像が合う様に調整します。
後は組み立ててモルトを貼り換えて完成です^^
⑪オマケ画像「背面ボタン」と「ファインダー表示」
☆「バッテリーチェッカーボタン」はシャッターの「ロックフリーボタン兼用」になっていますが、電池を入れてないとどちらも機能しません。
「逆光撮影ボタン」は逆光で被写体が真っ黒にならないようにするものです。
⑫オリンパス35DC の前期型と後期型(BC)の比較画像
左上: シャッターボタンが金属製からプラに変更されています。
右上: 巻き戻しノブの取っ手もプラに変更されていました。
右下: 目に見えて大きな変更点はここで、後期はバッテリーチェッカーボタン(BC)とランプが追加されています。
BLCボタンも前期が金属に対し、後期はプラです。
左下: 前期型はフィルムセット時のフリーボタンがありますが、後期型はバッテリーチェッカーボタンがその役目をしています。
◎最後はオリンパス35DC を広告風に(笑)
本当に「使いやすくて、間違いなくよく写るカメラ」だと、他の方の作例を見て思いました。
今回、オリンパス35DC の作例は写す暇が無くて載せていませんが、もし撮影したらまたここに掲載したいと思います^^
◎カメラの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしカメラを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【オリンパス 「OLYMPUS 35DC (BC)」分解・清掃・修理・初期型比較】でした!
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