ニコン「Reflex Nikkor-C 500mm F8」水没レンズ・分解清掃・作例

ニコン

◎とあるリサイクルショップのジャンクコーナーに水没したと思われるニコンのミラーレンズ「Reflex Nikkor-C 500mm F8」が激安で置いてありました。
ヘリコイドは動かず、レンズ内は泥で汚れていましたが、価格に釣られてダメもとで買ってきてみました💦

ニコンの500mmミラーレンズシリーズはまず初期型「Reflex-NIKKOR 500mm F8」が1969年に発売され、1974年にこの「Reflex Nikkor-C 500mm F8」が発売されましたが、レンズの諸元が変わっていないのを見ると、おそらくコーティングが変更されたモデルで、外観は前玉の飾りキャップが無くなっています。
最初はこの「C」の意味が分からなくて、レンズ構成ならこのレンズは3群5枚なので「P」になる筈なんですが、これは「Catadioptric lens」(反射屈折レンズ)の事だと思いました。

そして1984年に光学系が一新された「<New>Reflex-Nikkor 500mm F8」が発売され、軽量化と最短撮影距離が1.5mとかなり短縮されています。

1974年9月発売 当時の価格は¥65.000? 絞り固定: F8
画角: 5° レンズ構成: 3群5枚 最短撮影距離: 4.0m
フィルター径: 88mm 重さ: 1.000g 三脚座: 有(回転機構付き)

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

①前玉の取り外し

水没レンズの為、一度全分解して清掃後の仮組からの状態になります。

A: まずフィルター枠を固定しているイモネジを緩めます。
B: フィルター枠を外したら、イモネジの打痕をチェックして組む時の参考にして下さい。

C: 前玉を固定しているロックリングを外し、前玉を外しますが…
古いミラーレンズ全般に言える事ですが、前玉に両面テープや接着剤(バルサム)で固定してある副鏡&フレアカッターは両面テープや接着剤の劣化進んでおり、特にフレアカッターはポロリが起きる確率が非常に高くなっています。

前玉はロックリングで固定してあるだけなので光軸がズレる事は無く、むしろ50年近く経過した副鏡の接着剤の収縮や接着力の低下により、副鏡の固定がシビアになっていると自分は考えます💦
なので副鏡を拭く時にグラグラしていないか点検した方がいいと思います。

因みに副鏡は接着してあるのでレンズ光軸の調整はできないですし、メーカーで修理を依頼しても前玉&副鏡のアッセンブリー交換か、貼り直して撮影チェックするくらいだと思います。
そもそもここに精度を求めるなら接着などしないでレンズに穴を開けて金属鏡筒などで固定すると思います。(他社ではそうなっているのがあります)
でも今まで数本ミラーレンズを分解してポロリしたのはほとんどフレアカッターなので大丈夫だと思いますが… (Soligorは主鏡のレンズがポロリ💦)
あとミラーレンズの保存は上記の理由から立てて保存するのが理想です。

D: 外した前玉&副鏡を清掃しますが、フレアカッターがグラついてないかチェックし、副鏡の貼り合わせ状態もチェックしておくと良いです。
もし副鏡がポロリor傾いたり浮いていたら水平儀を作って慎重に貼り合わせるしかありません。
もし組んで光軸が狂っている場合は主鏡のレンズのバルサム切れもあり得ます。

②レンズ周りの分解

A: 清掃したらフレアカッターに定規などを当てて水平をチェックし、次は副鏡に光を当て、斜めから見ながらレンズを回転させて傾きをチェックします。

B: 三脚座を外します。
C: まずフォーカスリングを最短撮影距離にセットし(ここからフォーカスリングを外すまで動かさないで下さい)、指標線のあるリングのネジ3個を外します。
D: リングを外しながら組み位置マーキングをし、中に見えるネジを外します。

③主鏡の取り外し

A: 鏡筒を分割しますが、この時も組み位置マーキングをしておきます。

B: 主鏡のロックリングはネジ止め剤が塗布してありますので、主鏡にかからないようにアセトンなどをちょっと染み込ませて数分待ちます。
C: ロックリングを外し、主鏡を慎重に引き抜きます。

D: このレンズは水没レンズだった事もあり、主鏡のメッキはちょっと痛んでいました💦
それにフレアカッターもポロリと取れてしまいましたが、貼り合わせレンズのチェックが出来たので良しとしました。
注意事項は画像①のCを参照して下さい。

④ヘリコイドの分解

A: 指標リングを固定しているイモネジを緩めます。
B: 指標リングを外す時は組み位置マーキングをし、組む時は打痕にあわせます。

C: 最短撮影距離の位置で縦横位置をマーキングしておきます。
D: フォーカスリングを固定しているネジを外します。

⑤ヘリコイドグリス交換

A: フォーカスリングの組み位置マーキングをしながらフォーカスリングを外します。
B: ヘリコイドを抜く時はかなりゆっくり慎重に回し、外れる瞬間の位置をマーキングしておきます。

C: ヘリコイドをホワイトガソリンとブラシを使って奇麗にしたら、新しいヘリコイドグリスを固い筆などで塗布します。
D: このレンズは水没レンズなので、中の反射防止塗装も塗り替えておきました。

ヘリコイドの組み立てはまず外れた瞬間の位置から組み付けて数回転させ、フォーカスリングを組み位置マーキングで組み立てたら、画像④のCの最短撮影距離の位置マーキングまで回して完了です。

後は逆の手順で組み立てれば完成です。
お疲れさまでした!

⑥ニコン「Reflex Nikkor-C 500mm F8」分解清掃終了

実は水没レンズの為にかなり状態が悪く、1年も放置していました💦
主鏡のメッキ痛みは残念ですが、ここまで奇麗になったので今は満足しています。

⑦ニコン「Reflex Nikkor-C 500mm F8」の作例

使用カメラはフルサイズのニコンD700で、全て手持ち撮影している為に手ブレ画像も含まれています💦

⑧田園のトラクター

⑨工場

⑩温水器

⑪欄干

⑫移動トイレ

⑬花

⑭U字側溝

⑮チガヤ

⑯ヒメジオン

⑰信号機

⑱捨てられた枝

⑲ハルシャギク

主鏡のメッキが痛んでいるので何とも言えませんが、50年前のミラーレンズとしては良く写る部門に入ると思いました。
本気で撮るなら「<New>Reflex-Nikkor 500mm F8」の方がいいのかもしれません💦

参考にした文献はニッコール千夜一夜第十三夜「<New>Reflex-Nikkor 500mm F8」です。

 

◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)

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