アサヒペンタックス「Super-Multi-Coated TAKUMAR 135mm f3.5」分解・清掃・作例

ペンタックス

◎リサイクルショップで比較的安価で良く手に入るオールドMFレンズを考えてみたら、やっぱりこの「Super-Multi-Coated TAKUMAR 135mm f3.5」に辿り着きました。
今回は基本に帰って「Super-Multi-Coated TAKUMAR 135mm f3.5」を分解清掃し、ソニーα7で撮った作例を載せています。

因みにこの時期のタクマーレンズ全般に言える事ですが、マウントのMAN/AUTO切り替えスイッチ内に付いている防塵のスポンジがボロボロになっており、レンズ内だけでなくレフ機に使う場合はミラーボックスを汚す可能性がとても高いので、整備しておいた方が無難です💦

「TAKUMAR 135mm F3.5」の前期はマウント部とブリセットリングが銀色(厳密に言うと6種類あるそうです)フィルター径が46mm&最短撮影距離2.0m、後期は全体が黒でフィルター径が49mm&最短撮影距離1.5mになっています。
「SUPER TAKUMAR 135mm F3.5」の初期型は絞りリングが段差の無い全周ギザギザ、前期型は絞りリングの表面加工がフォーカススリングと同じになって銘板のSuperのすぐ前に製造番号があり、後期型は製造番号がレンズ名の後ろになりレンズ構成が4群5枚から4群4枚に減らされてます。
今回分解清掃する「Super-Multi-Coated TAKUMAR 135mm F3.5」の前期は赤外線指標に「R」文字があります。

1971年発売? マウント: M42  単焦点レンズ マニュアルフォーカス
レンズ構成: 4群4枚 最小絞り: f22  開放絞り: f3.5  絞り羽枚数: 6枚
画角: 18°  最短撮影距離: 1.5m フィルター径: 49mm
コーティング: マルチコーティング 外寸: 約60X88mm    重さ: 338g

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

①まずはレンズ清掃のみの場合です

A: 銘板を吸盤オープナーなどで反時計回りに回して外します。
B: 銘板が外れない時は外周をドライヤーなどで温めると良いです。

C: 前玉を固定しているロックリングを反時計回りに回して外しますが、物によっては前群がごっそり外れる事もあります。
D: 前玉を回収して清掃します。

②前群レンズの清掃

A: このレンズは何故か前群レンズユニットが外れなかったので、前群レンズユニットの周囲奥にあるネジ3個を外します。
B: フィルター枠を外します。

C: 前群レンズユニットを反時計回りに回して外します。
D: 2枚目のレンズを固定しているロックリングを外し、2枚目のレンズを回収します。

③後群レンズの清掃

A: 前群3枚目のレンズを固定しているロックリングを吸盤オープナーなどで外し、3枚目のレンズを回収します。
B: 各レンズを清掃したら前群レンズユニットを組み立てます。

C: 後群レンズユニットを反時計回りに回して外します。
D: 後群レンズユニットを分解してレンズを清掃します。

レンズ清掃のみでしたら、後は組み立てて完成となります。

④絞りユニットの取り出し(フォーカスリング部)

A: フォーカスリングを無限遠にセットし、これ以降は無限遠からフォーカスリングが動かない様に作業します。
B: フォーカスリング内の奥にあるネジ3個を取り外します。

C: 無限遠の状態でフォーカスリングを引き抜いたら図のように固定部、可動部2か所に無限遠の位置マーキングをしておきます。
D: フォーカスリングを固定しているネジにはワッシャーが入っていますので紛失しないようにします。

⑤参考数値と鏡筒の分離

A: 無限遠の位置でフォーカスリングを外した時のサブヘリコイドと鏡筒との隙間は1.0mmでした。
B: 同じくメインヘリコイドからサブヘリコイドの突き出し量は11.0mmでした。
この数値はレンズによって異なる可能性があるので参考程度にしておいて下さい。

C: 指標リングを固定している3個のイモネジを緩め、指標リングを外します。
D: ヘリコイド部を固定している3個のネジを外します。

⑥鏡筒の分割と絞りユニットの取り外し

A: ヘリコイド部を外す時は絞り連動リンクの接合具合を確認しながら外して下さい。
B: スペーサーを回収しておきます。

C: 絞りユニットを外す前に必ず回転方向に調整されている固定ネジのセンターと絞りユニットの位置関係をマーキングしておきます。
D: 固定ネジ3個を外し、反対側から絞りユニットを取り出します。

⑦絞り羽根の清掃

A: 絞りユニットの固定側を固定しているネジ3個を外し、ゆっくり慎重に固定側を取り出します。
B: 絞り羽根の取り付け位置と表裏を確認し、絞り羽根を取り出します。

C: 絞り羽根が擦れる部分は全てエタノールなどで脱脂します。
清掃したら絞りを組み立てます。

⑧ヘリコイド分解

A: ヘリコイドの直進キーを外しますが、絞りレバー側は調整直進キーが使われていますので注意します。
B: 組み立てる時は調整直進キーを元の位置に組みます。

C: 固定側とサブヘリコイドを固定した状態でメインヘリコイドを反時計回りに回して外しますが、この時は外れる瞬間の位置がとても重要になりますので、かなりゆっくり慎重に回し、外れる瞬間の位置をメインヘリコイドにマーキングしておきます。
因みにメインヘリコイドは約1.4回転で外れました。
D: 参考数値として、サブヘリコイドは無限遠位置から反時計回りに回して止まる位置まで締め付けると約2.4回転で止まりました。

⑨ヘリコイドグリス交換とマウント部の整備

A: サブヘリコイドも外したら、古いグリスを清掃して新しいヘリコイドグリスを筆などで塗布します。

☆ヘリコイドの組み立てはまずサブヘリコイドを固定部に組み込み、止まるまで締めこんだら約2.4回転戻して無限遠位置にセット、次にメインヘリコイドをマーキングの位置から組み込んで約1.4回転締め込み、無限遠位置のマーキングでストップさせればOK。

B: 直進キーを組む時は細い精密マイナスドライバーを図の位置に挟みながら固定するとヘリコイドが重くならずに済みます。

C: マウント部の整備はまず絞りリングを外しますが、図のようにクリックボールが飛び出す事が多々ありますので、必ずこの作業をする時はビニールの中で作業する事をお勧めします💦

D: 因みにこのレンズの場合、クリックボールを押しているのはコイルスプリングではなく固定された板バネなので、作業中にバネが飛び出す事はありません。

⑩マウント部の分解

A: 絞りメカを固定しているネジ3個と絞りリング連動ネジ2個を外します。
B: 絞りメカを引き抜くと、M/Aスイッチのロックピンも外れるので、取り付け向きを確認して回収しておきます。

C: 絞りメカのこの部分(特に左下)は軽く注油&グリスアップし、はみ出た油は拭き取っておきます
D: 防塵スポンジがボロボロのこのM/Aスイッチ固定ネジ2個を外します。

⑪M/Aスイッチの防塵スポンジ除去と組み立て

A: M/Aスイッチとリングを外し、ボロボロになった防塵スポンジを取り除きます。
このスポンジのカスがレンズ内をかなり汚していました💦

B: 防塵スポンジがまた劣化するのが嫌だったので、防塵ビニルシートを接着しておきました。

C: 組み立てる時はまず接着してあるこの遮光パーツをアセトンなどを染み込ませて外します。
これを外して組み立てないと、ピンを組み立てるのにかなり難儀をする事になります。
D: 部品の位置関係はこんな感じになります。

後は逆の手順で組み立てれば完成です^^
お疲れさまでした!

 

⑫「Super-Multi-Coated TAKUMAR 135mm f3.5」の作例

使用カメラはフルサイズミラーレスカメラのソニーα7で、絞り値は分かる画像のみ記載しています。

⑬歩行者信号

開放F3.5

⑭オブジェ

開放F3.5

⑮花壇

開放F3.5

⑯梅

開放F3.5  最短撮影距離が1.5mもあるので、小さな花を撮るのは難しいです。

⑰幹線道路

F8.0

⑱ポール

開放F3.5

⑲自転車

開放F3.5

 

⑳車

F8.0

㉑バイク

開放F3.5

㉒夜のハードオフ

開放F3.5

㉓夜のサービスエリア

開放F3.5

㉔夜のゴミ箱

開放F3.5

㉕夜のタリーズコーヒー

開放F3.5

開放から割とシャープに写りますが、コントラストや発色はカビによってコーティングにダメージを受けている可能性がありますのでコメントは控えさせて頂きます💦
とにかく安価で手に入りやすいレンズなので、初めてレンズ清掃をするには良い練習になると思います。

◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)

コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。

 

以上、【アサヒペンタックス「Super-Multi-Coated TAKUMAR 135mm f3.5」分解・清掃・作例】でした!

コメント

  1. 高重俊和 より:

    参考に分解をしてみました。およそきちんとできました。ありがとうございました。しかし、一点疑問点が出てきましたので、質問させてください。

    ⑥鏡筒の分割と絞りユニットの取り外し

    C: 絞りユニットを外す前に必ず回転方向に調整されている固定ネジのセンターをマーキングしておきます。

    上記のように記載されていますが、どうしてもマーキングの必要性が理解できません。挿入した時点で位置は固定するように思うのですが?
    ネジの受けを探さないですむということでしょうか?

    • ayumu3 より:

      高重俊和さん初めまして!
      お返事が遅れて大変申し訳ございません

      ご質問の件ですが、ちょっと確認しますので少々お待ちください
      申し訳ありません^^;

    • ayumu3 より:

      再度レンズを分解して調べてみましたが、ここは回転方向に0.5mmほどのガタがあり、絞り値にするとおおよそf0.7くらいの誤差が出ている感じでした。
      なのでここは固定してある位置に戻した方が理想です

      ご参考までに自分のレンズは左方向から0.2mmくらいの所に固定されていました。

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