三協光機「Sankyo Kōki KOMURA- 135mm F2.8」分解・清掃・作例

サードパーティー製レンズ

◎カメラのキタ〇ラのジャンクコーナーにレンズ内部が渦巻き状に曇っているコムラの「Sankyo Kōki KOMURA- 135mm F2.8」が置いてありました。
今までの経験でこうした汚れはグリス成分の気化による汚れの事もあり、こうした場合は拭くととても奇麗になるのを知っていたので、ギャンブルがてら買ってきてみました。

この頃のコムラは中望遠レンズの焦点距離一つのモデルにF3.5, F2.8, F2.5, F2.3, F2.0、F1.8(モデルにより明るさの幅が違います)など幅広い明るさのレンズをラインナップしていました。
レンズ名も古い順にKomura-、Komura(字体違いが2~3種類あります)、Super-Komura、Komuranonと変わっていき、労働争議が原因で1980年に倒産しました。
あとこの頃のコムラのレンズの写真を沢山見ていると外観にちょっと一貫性が無く、ひょっとしたら前モデルの部品を使いまわしていたんじゃないかと思うようになりました。💦

1960年代後半に発売? (銘板の表記がKOMURA-なので最初期型と思われます)
当時の価格は¥16.800だったと思われます。 最小絞り: F22 開放値: F2.8
レンズ構成: 4群5枚  絞り羽根枚数: 12枚  最短撮影距離: 1.5m 重さ: 448g
マウント: 交換式ユニマウント  フィルター径: 55mm  外寸: 60.5×91.5mm
コーティング: モノコーティング

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

①鏡筒の分離と前群レンズの取り外し

A: 前群レンズユニットは反時計回りに回すと外れますが、画像Bの箇所で緩む事も多々あります。
B: 絞り部とヘリコイド部を同様に分割します。

C: 外した前群レンズユニットの銘板を外し、前玉レンズを取り出します。
D: 後ろのレンズもロックリングを外し、レンズを取り出します。

 

②後群レンズの清掃

A: 各レンズを清掃します。
このレンズの汚れは予想通り曇りでは無く、グリスの気化による汚れだったので安心しました^^;
ただちょっと2枚目のレンズが若干黄変しているのが気になりました。
おそらくトリウム(アトム)レンズではなく、バルサムの劣化と思われます。

B: 後玉レンズを取り外し、出来ればレンズを枠から取り外した方がしっかりレンズを清掃できます。 (レンズの向きは必ずマーキングして下さい)
C: ロックリングを外し、2枚目のレンズも取り外します。

D: 各レンズを清掃します。
レンズの清掃のみでしたら後は組み立てて完成となります。

③絞り羽根清掃のための分解

A: プリセットリングを固定している3個のイモネジを緩めます。
組む時は対角線で少しずつイモネジを締めていきながらリングの動作をその都度確認し、リングが重くなったらリングが軽くなる位置までイモネジの締め付けを戻します。
B: プリセットリングの取り付け位置をシルバーのリングにマーキングしたら取り外します。

C: クリック溝のある銅製リングのイモネジ3個を緩めます。
(このリングも取り付け時にカメラ側に行き過ぎるとクリックが重くなりますので注意して下さい)
D: 銅製リングを外す時にイモネジの打痕位置に銅製リングの取り付け位置をマーキングしておきます。

④絞りユニットの分解

A: 銅製リングを外すとクリックピン(ボールではありませんでした)&バネがありますので、回収して清掃&グリスアップしておきます。
B: アルミ製のインナーリングを外し、擦れる部分は清掃&グリスアップしておきます。

C: 絞りリングのイモネジ3個を緩めたら、リングの取り付け位置マーキングをして絞りリングを取り外します。
D: アウターカバーを反時計回りに回して取り外します。
固い時はネジ溝にエタノールを垂らすか、ドライヤーで温めてから緩めて下さい。

⑤絞りユニットの分解B

A: 絞り連動ネジを取り外します。
B: 絞りリングストッパーネジを外したら、このインナーリングはネジ込み式になっていますので、取り付け位置&幅をマーキングしておきます。
マーキングをしたら反時計回りに回して取り外します。

C: このネジ部分も清掃して新しいヘリコイドグリスを少量塗布しておきます。
D: ここのネジは専用になっていますので、取り付ける時は間違えないようにします。

⑥絞りユニットの分解C

この先は絞り羽根を分解組み立てした事がない方にはお勧めできません💦
何故ならコムラの絞り羽根は変形している事が多く、しかも枚数が多いのでかなり困難な作業になるからです。
分解したくない方はこのままホワイトガソリンなどに漬けたら、漬けた状態で絞り羽根を優しく動かして洗浄するのが良いと思います。

A: 絞り可動部を固定しているCリングをピックツールなどで慎重に取り外します。
B: 外したCリングは清掃しておきます。

C: 組み立て時の為に絞り開放での絞り連動ネジ位置を確認しておきます。
D: 慎重に絞り可動部を外し、清掃しておきます。

⑦絞り羽根の清掃・組み立て

A: 外した絞り羽根と固定部を清掃しますが、清掃時の羽根の変形には注意して下さい。
…と言うか、このレンズの絞り羽根は最初から半数が変形していたので、頑張って板金しました(汗)

B: 組み立てる時は絞り羽根に向きがありますので注意して下さい。
「可動側に組んでから固定側に組み合わせ、後は爪楊枝でダボを溝に入れていく」と某カメラ屋さんは言っていましたが、自分はそれで上手くいかなかったので、固定側で羽根を組んでから可動側を入れ、可動側を微動させながら爪楊枝で各ダボを溝に入れたら上手くいきました^^;
とにかく羽根が変形しているので、羽根を何度も組み直す羽目になったのがとにかく辛かったです。(汗)

⑧ヘリコイドグリス交換

A: まず交換式ユニマウントを固定しているイモネジ3個を緩めます。
(このレンズはここを回して無限遠調整をするのだと思います)
B: ユニマウントを反時計回りに回して外します。

C: フォーカスリングを固定しているネジ3個を取り外します。
D: 取付位置を銅製リングにマーキングしながらフォーカスリングを取り外します。

⑨ヘリコイド部の分解

A: 参考資料として無限遠位置での銅製リングからのヘリコイド突き出し量は0.4mmでした。
B: マウント側の遮光パーツを反時計回りに回して外します。

C: ヘリコイドストッパーネジを外します。
D: 銅製リングをゆっくり慎重に回し、ヘリコイドが中にある直進キーから外れる瞬間で止めます。

⑩ヘリコイドの取り外し

A: ヘリコイドが直進キーから外れるのは、銅製リングを無限遠位置からおおよそ0.8回転回した位置でした。
B: 直進キーが外れる瞬間の位置を銅製リングにマーキングしておきます。

C: 次に銅製リングを固定しながらメインヘリコイドを超ゆっくり慎重に回し、メインヘリコイドが外れる瞬間の位置を銅製リングとアルミ製リングにマーキングしておきます。
外れるまでの回転数はおおよそ0.8回転でした。

D: 次にサブヘリコイドをその位置から締めこんで止まるまでの回転数を調べておきます。(このレンズは1.05回転でした)

⑪ヘリコイド分解と清掃

A: サブヘリコイドはただのネジになっていますので、そのまま外します。

B: 各ヘリコイドを清掃し、新しいヘリコイドグリスを塗布します。
ヘリコイドグリスが無い場合はタミヤ模型のミニ四駆用セラミックグリスなどが柔らかくて良いみたいですね。

ヘリコイドの組み立てはまずサブヘリコイドを締め付けてメインヘリコイドが外れたマーキング位置に1.05回転ほど戻します。
次にメインヘリコイドを外れた瞬間のマーキング位置から入れて0.8回転程入れます。
そしてメインヘリコイドと本体を固定しながら銅製リングを時計回りに回して直進キーを入れ、そこから更に0.8回転「銅製リング」を時計回りに回したら、ヘリコイドストッパーネジを入れ、フォーカスリングを組んで完成です。

お疲れさまでした。
そう言えば200mmのヘリコイド部には引き伸ばしレンズがすっぽり入って使えるらしいですね^^

あとレンズ構成は自分はなんとなくゾナーの変形タイプに感じるのですが、マウントスパイラルさんが仰るように前はダブルガウス、後ろはトリプレットなんですよね💦
スーパーコムラになってからはレンズ構成がありがちな「エルノスター構成」になってしまい、個人的にはつまらないレンズになってしまいました。

 

 

⑫「Sankyo Kōki KOMURA- 135mm F2.8」の作例

使用カメラはフルサイズ一眼のニコンD700になります。
絞り値は分るものだけ記載しています💦

⑬宣伝旗

開放F2.8

⑭信号待ち(車)

開放でも中央はシャープで、周辺はやや流れます。

⑮信号待ち(景色)

⑯信号待ち(車の前輪)

 

⑰信号待ち(バイク)

カワサキの4気筒250cc、その昔にFZR250Rを乗っていたのでちょっと欲しいです(笑)

⑱インターチェンジ

⑲ゴリラのオブジェ

⑳夜のハードオフ

開放F2.8で、パープルフリンジはそれなりに出る感じでした。

㉑口径食

開放F2.8   派手じゃないけど、それなりに出る感じです。

㉒夜のパチンコ屋

開放F2.8

開放から割とシャープで、海外で評価が高いのも納得のコムラーレンズだと思いました。

 

◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)

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以上、【三協光機「Sankyo Kōki KOMURA- 135mm F2.8」分解・清掃・作例】でした!

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