◎今回は1970年頃に発売されたサン光機の「Sun system zoom 85-210mm F4.8」を分解・清掃し、「ニコン1 V1」を使った作例も載せてみました。
このレンズの光学設計をしたのが「トプコン(東京光学)」らしく、1969年に発売された「RE Zoom Auto Topcor 87-205mm F4.7」はサン光機製らしいです。
自分がこのレンズを分解して分かった事は1969年発売の「RE Zoom Auto Topcor 87-205mm F4.7」は前玉が貼り合わせの8群13枚に対し、この黒い「Sun system zoom 85-210mm F4.8」は前玉が貼り合わせていない9群13枚構成だった事です。
(シルバーの「Sun system zoom 85-210mm F4.8」は8群13枚らしく、1968年12月のアサヒカメラの広告に載ってました。¥32.800)
サン光機が1967年に発売した「SUN Hi tere Zoom 85-210mm f4.8」が8群13枚、後の「SUN Auto Tele-Zoom 85-210mm F4.8」が9群13枚、サン光機製であるペトリの「PETRI CC AUTO ZOOM85-210mm F4.8」の1968年発売フォーカスリング黒モデルは8群13枚、後のフォーカスリング銀枠モデルは9群13枚になっているので、1970年以前に発売された類似モデルは前玉が貼り合わせてあるっぽいらしく、1970年以降は前玉が貼り合わせて無いので光学系に若干の変更がなされている感じでした。
これら全てレンズ構成は同じです。
1970年頃発売? 当時の価格は¥30.300?(フード内蔵、革ケース付き、マウント別売) マウントはアサヒ、ニコン、ミノルタ、キャノン、ミランダ、ペトリ各¥2.500 レンズ構成: 9群13枚 インナーズーム 絞り羽根枚数: 6枚
最短撮影距離: 2.5m 最小絞り:F22 コーティング: モノコート
フィルター径: 55mm 重さ: 870g フード内蔵、回転式三脚座付き
サン光機は戦前から「上代(かじろ)光学研究所」として起業し、戦後の1961年に「サン光機」と改名、更に改名して「サンレンズ」、そして更に「ゴトー・サン」と改名したのですが、1984年(昭和59年)に倒産してしまいました。
(1984年はオオサワレンズの大沢商会とマミヤ光機も倒産しています)
単焦点レンズ全盛の時代にズームレンズの良さを売りにしていたサン光機。
最後に出たダブルフォーカスなどアイデアは良くても雑誌の評価はイマイチだったみたいです。
1980年代には高倍率ズームの光学設計や特殊ガラスを使った諸収差の低減など技術的に大きく遅れをとったのが痛かったんでしょうね…
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①まずレンズ前群を外す為にフォーカス部を切り離します
A: まず鏡筒にあるこの大きなフォーカスリングストッパーネジを外します。
B: そしてゆっくり慎重にフォーカスリングを回し、抜ける瞬間の位置をマーキングしておきます。(とても重要で、間違えるとAのネジが入らなくなります)
C: フォーカスリングの指標部分をイモネジ3個(赤丸)を緩めて外しますが、一応位置マーキング(黄丸)をしておきます。
D: 組む時はこのイモネジの打痕に合わせると確実です。
②レンズ前群の取り外しとレンズ清掃
A: 内蔵フードをずらして外し、フィルター枠を固定しているイモネジ3個を緩めます。(この部分は非常に浅く、イモネジはちょっと緩めるだけで脱落するので紛失しないようにしてください)
B: フィルター枠を外し、前群ユニットの位置マーキングをしてからイモネジ3個を緩めます。
C: 前群ユニットを組む時はイモネジを外し、ネジ穴とイモネジの打痕の位置をセンターに合わせてからイモネジで固定します。
(ここは無限遠調整になっていますが、調整する為に前群ユニットを締め込み過ぎると広角端で中玉と接触し、前玉が傷付きますので注意してください!)
無限遠が出ない時は中玉(画像④A)の調整が狂っていますので、中玉を反時計回りに回して調整します。
D: 外した前群ユニットを分解して各レンズを清掃しますが、レンズとスペーサーの向きはマーキングをして必ず厳守してください。
2枚目と3枚目のレンズは形状が似ているので順番を間違えないようにします。
レンズの清掃が終わったら組み立てます。
あと組み立てる時はレンズとスペーサーが噛んで隙間ができやすいので注意してください。
③中玉の清掃と鏡筒の分割
A: カニ目ツールを使って中玉(前)を取り外します。
レンズの向きと順番を必ずマーキングして下さい。
B: 外した各レンズを清掃します。
この時に鏡筒奥に見える中玉(中)を割りばしに付けたクリーニングペーパーなどで清掃しておきます。
(この中玉(中)レンズは調整されてネジ止め剤で固定されている為に、外すのはおススメできません)
C: 鏡筒を分割する為にズームリングのゴムを外し、中に見える下段のイモネジ3個を1mmほど緩めます。
D: すると鏡筒を分割する事ができます。
④中玉(中)レンズと中玉(後)の清掃
A: 鏡筒を分割したら中玉(中)レンズの後ろを清掃します。
このレンズは調整されているので、外さない方が賢明です^^;
B: 自分は知らずに外してしまいましたが、写真を撮っておいたのと、接着痕が残っていたので元に戻す事ができました…
もし位置が分からなかったら、画像②のCの様に無限遠をピッタリ合わせ、ズーム85mmの位置で無限遠が出る様に調整すればOKです。
C: 中玉(後)ユニットを外しますが、ネジ止め剤が塗ってあり調整されている場合がありますので、外す前に位置マーキングをしておくと無難です。
D: 外したユニットを分解し、レンズとスペーサーを向きをマーキングしながら取り出して清掃します。
そして清掃が済んだら組み立てます。
⑤後玉レンズの清掃と絞り羽根のチェック
A: 後玉レンズを取り出して清掃します。
B: 絞り羽根の動きと油が滲んでいないかチェックします。
少しでも動きが怪しかったり、油で滲んでいたら分解清掃しておきます。
後は組み立てて、各動作チェックをして完成です!
⑥参考資料(アサヒカメラ1970年1月号の広告)
1973年には85-210mmはカタログ落ちしたらしいので、今回整備した黒バージョンが発売されたのは1970年後半~1971年くらいではないかと推測しています。
正直、シルバーモデルの情報は出てきますが、この黒モデルは画像はおろか、情報がさっぱり無いんですよね^^;
きっと末期のモデルで売れなかったんでしょうね…
⑦「Sun system zoom 85-210mm F4.8」(黒モデル:9群13枚)の作例
使用カメラは1インチセンサーミラーレスカメラ「ニコン1 V1」を使っていますので、レンズ画角の中央付近を使う事になります。
あとズームの焦点距離と絞り値はすっかり忘れてしまったので、分かる画像のみ記載しています^^;
⑧工事現場の作業員の方々
⑨向日葵
⑩クレーン
⑪高速道路の工事現場 85mm
⑫高速道路の工事現場 210mm
⑬川沿いの散歩道
ボケはちょっと五月蠅めかもしれません。
⑭ススキ
⑮桜の木
⑯川の欄干 210mm 開放F4.8
⑰川の欄干 85mm 開放F4.8
⑱夕焼けに染まる川
⑲バイク野郎の像
⑳川に反射する夕日の玉ボケ
㉑帰路を行く人々
㉒一日の終わり
古いズームレンズですが、東京光学が設計しただけになかなか良く写ると思いました。
ただモノコートなので逆光だとちょっと弱く、焦点距離によっては点光源のボケがカエルの卵みたいになる事があります。
オールドズームレンズコレクションとしておススメの1本です^^
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【サン光機「Sun system zoom 85-210mm F4.8」分解・清掃】でした!
コメント
カメラはじめて2年ほどになります。
最近、オールドレンズに手を染めて見たのですが、オークションで落札したレンズと同梱されて
「mount-ring for sun system zoom」というマウントアダプターのようなものが入ってました。
ケースの裏に「A19]と手書きのシールもあります。
これ、処分して良いようなものなのか、わからずコメント入れさせてください。
うめさん初めまして^^
コメントありがとうございます。
当時のSUNレンズは各社のカメラに対応する為に、マウントを交換できるレンズを発売していました。
おそらく「A19」はレンズかカメラの型番で、オーナーさんが忘れない様にメモしていたのだと思います。
将来SUNのレンズを使う予定が無い時や、自分の持っているカメラのマウントに合わない場合は処分しても構わないと思います。
ご参考までに^^