◎とあるリサイクルショップのジャンクコーナーにワンコインの価格でペンタックスの「smc PENTAX-M 50mm F1.4」が置いてありました。
この価格を見た瞬間、「このレンズに良くあるバルサム切れかな?」と思い、手に取るとやっぱり絞りの奥のレンズが白くなっていました💦
今回は分解清掃ついでにバルサム切れしたレンズを剥がして貼り合わせてみました。
1977年にMシリーズの交換標準レンズとして小型化されて発売。
レンズ構成: 6群7枚ダブルガウス型 絞り羽根枚数: 8枚 重さ: 238g
開放値: F1.4 画角: 46° 最小絞り: F22 フィルター径: 49mm
最短撮影距離: 0.45m 外寸: 63x37mm 価格: ¥29.400
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①レンズのみの清掃から
A: まず銘板を吸盤オープナーなどで反時計回りに回して外しますが、外れない時はエタノールをネジ山に染み込ませるか、ドライヤーで温めます。
B: 前玉のロックリングを吸盤オープナーなどで反時計回りに回して外します。
C: 前玉を外して清掃します。
D: フィルター枠の位置を中にマーキングしたら、固定しているネジ3個を外します。
②前群レンズの取り外しと清掃
A: フィルター枠を外したら、カニ目ツールを使って前群ユニットを反時計回りに回して外します。
B: こんな感じで外れます。
C: 前群ユニットを分解して各レンズを清掃します。
D: 後群レンズ群はいきなりここを回して外してもいいのですが、作業がやりにくいので遮光パーツを外します。
③後群レンズの取り外し
A: 遮光パーツを固定しているサイドのネジ3個を外します。
B: 遮光パーツの取付位置を確認しながら外し、後玉(ホルダーと一体になっています)を反時計回りに回して外します。
C: 後玉を外したら、中に入っている絞り連動リングも入っている位置と向きを確認して外します。
D: 2枚目のロックリングを外し、2枚目のレンズも取り出します。
④レンズのみの清掃はここまでです。
A: 後玉を外す時はレンズの向きがちょっと分かりにくいので慎重に外し、サイドに鉛筆などで向きのマーキングをしておくと良いです。
外したレンズを清掃します。
B: 奥にある貼り合わせレンズは絞りユニットを外さないと取り外せないので、レンズの清掃のみでしたらここで画像B&Cの状態で清掃して下さい。
レンズの清掃のみでしたらここで終了ですので、後は逆の手順で組み立てれば完成となります。
⑤バルサム切れ修理
A: フォーカスリングを外す前にまず合わせ位置のマーキングをしておきます。
B: 固定ネジ3個を外し、フォーカスリングを取り外します。
C: このフォーカスリングの固定ネジにはワッシャが入っていますので、紛失に気を付けて下さい。
D: 絞りユニットの取付位置は調整されていますので、外す前に取付位置(中央〇)、調整位置(イモネジの打痕にピッタリ合わせます)を確認します。
⑥絞りユニットの取り外し
A: 絞りユニットを調整固定しているイモネジを紛失に注意しながら緩めます。
B: 絞りユニットを外しながらイモネジの打痕を確認します。
(分解歴があるレンズは多数付いている場合があるので注意)
C: 組み立て時はここの絞り駆動ピンはここに入れます。
D: これでようやくバルサム切れした4枚目のレンズを外せるので、ロックリングを外します。
⑦貼り合わせレンズを剥がします
A: バルサム切れが発生している4枚目のレンズを外します。
B: ここで以前の記事に載せた自動バルサム剥がし器を使用します。
C: おおよそ3分で貼り合わせレンズを分離する事ができました。
この剥がれた瞬間のバルサムの香りって癖になります(笑)
D: しかしこのバルサムはエタノールくらいでは落ちません…。
⑧バルサム剥がしと貼り合わせ
A: 残ったバルサムはジフ(研磨成分のモース硬度がガラスより低い)で綺麗に落とします。
B: 面白い感じでポロポロとバルサムが取れます。
C: しっかり油分と埃を落としたら、カナダバルサムで貼り合わせます。
D: 透明度が復活して気持ちのいいレンズに戻りました♪
⑨絞り羽根清掃
A: まず絞り開放での絞り駆動ピンの位置を確認します。
B: サイドにある固定ネジ3個を外す前に、画像Cの切り欠きの合い位置をマーキングしておいて下さい。
D: 絞り羽根の固定カバーを外したら、絞り羽根の配列、向きを確認します。
⑩絞り羽根の清掃
A: 絞り羽根を外しながらピンの入っている位置も確認します。
B: 絞り羽根、絞り羽根の擦れる面は全てエタノールで綺麗にしますが、絞り可動側にも油が回っているいる場合はそちらも分解して綺麗にしておきます。
C: ヘリコイドグリス交換の為にマウントを外します。
D: 外しながらマウントの入る位置も確認しておきます。
⑪マウント部の分解と整備
A: 絞りリングを外す時はクリックボールが飛び出しますので必ず袋の中で絞りリングを外して下さい。
古いグリスを清掃して新しいグリスを塗布します。
B: マウントの絞り連動部を固定しているネジ3個を外します。
C: 連動部の入っている位置を確認しながら分離します。
D: 各リンクの動きをチェックし(この時に黄色丸のカム部が外れやすいので注意して下さい)、悪い場合はパーツクリーナーで清掃し、筆で少量の柔らかいグリスを塗布しておきます。
⑫ヘリコイドグリス交換
A: 一度フォーカシングを付け直して無限遠の位置にしたらフォーカスリングを取り外し、メインヘリコイド、サブヘリコイド、本体の位置が一直線に分かる様にマーキングします。
B: 下部からメインヘリコイドの幅を測定しますが、この数値は個体差があるかもしれませんので参考程度にしておいて下さい。
C: 下部からサブヘリコイドの幅も測定しておきます。
D: 2個の直進キーを外します。
⑬ヘリコイドの分解と組み立て
A: 直進キーを外したらメインヘリコイドをゆっくり慎重に回し、外れる瞬間の位置をマーキングしておきます。(画像は実際に外れた位置になります)
B: サブヘリコイドを締めこんで止まる位置まで何回転で止まるか確認します。
C: サブヘリコイドをゆっくり慎重に回し、外れる瞬間の位置をマーキングしておきます。(画像は実際に外れた位置になります)
D: 各ヘリコイドをパーツクリーナーとブラシを使って綺麗にします。
組み立てはまずサブヘリコイドを外れた瞬間の位置から入れて止まるまで締め込み、0.5回転戻して画像⑫Aのマーキング位置で止めます。
次にメインヘリコイドを外れた瞬間の位置から入れ、1.1回転回して画像⑫Aのマーキング位置で止めます。
そして画像⑫BCで測定した数値と合っていたらOKです。
⑭直進キーの取付など
A: 直進キーを取り付ける時はまずグリスを塗り、鏡筒と直進キーの間に薄いマイナスドライバーを挟みながらネジを締めこんで下さい。
これをしないとフォーカスリングの動きが悪くなる可能性が高くなります。
B: 絞りユニットを取り付ける時はまず連動ピンがここに入っているか確認します。
C: そしてネジ穴のセンターにイモネジの打痕が来るように調整したら、イモネジを取り付けます。
後は逆の手順で組み立てれば完成です。
お疲れ様でした^^
⑮「smc PENTAX-M 50mm F1.4」の作例
使用カメラはフルサイズミラーレスのα7で、絞り値は分かる範囲で記載しています。
⑯ハードオフの店内
F2.8 オーディオのジャンクは次に来店した時にスイッチやボリュームが折れているとガックリします^^;
⑰富士山
⑱フレア・ゴースト
⑲静岡ホビースクエア
⑳ホビースクエア内
㉑ガンダム
㉒スターウォーズ
㉓計器盤
㉔ベアッガイ
㉕カウンタック
㉖スウィーツ
㉗ランナーアート
㉘帰り道
㉙玉ボケ
㉚最後に「バルサム切れ状態での夜の撮影」
これも味があっていいのですが、コントラストは落ちますし、逆光に極端に弱くなってしまいます。
ポートレートだとソフトでいいかもしれませんが^^;
SMC以前のタクマーはバルサム切れが全く発生していないとこを見ると、SMCと名乗る頃からバルサムの種類か産地を変えたのだと思っています💦
臭いはトキナのエポキシみたいな香りと違って完全に天然バルサムの香りなんですけどね^^;
不思議です。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為に間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【ペンタックス「smc PENTAX-M 50mm F1.4」分解清掃・バルサム切れ修理・作例】でした!
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