◎今回はニコンのレンズでは比較的手に入り易い「ニコン Ai Nikkor 28mm F3.5」を分解・清掃してみました。
1977年3月発売 レンズ構成6群6枚 絞り羽根枚数7枚 最短撮影距離0.3m
重量235g フィルター径52mm フード:HN-2
1960年発売の「NIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5」から1981年発売の「Ai Nikkor 28mm F3.5S」 までの25年間、6群6枚の基本的なレンズ構成が変わらなかったのは、「脇本善司」氏の設計が優れていた証拠だと思います。
(New NikkorからAi Nikkorの時にレンズ構成は変わらずに設計は変わりました)
細かい事は「ニッコール千夜一夜物語 第十二夜 NIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5」を読んでみて下さい。
発売順に1960年「NIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5」発売、1974年にマルチコートされた「NIKKOR-H・C Auto 2.8cm F3.5」、1975年にデザインが大幅に変わった「New Nikkor 28mm F3.5」、1977年にAiになって光学系が一新された「Ai Nikkor 28mm F3.5」、1981年に測光性能を上げたシリーズ最後の「Ai Nikkor 28mm F3.5S」が発売され、AF時代突入と共にラインナップから姿を消しました。
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①それでは「Ai Nikkor 28mm F3.5」を分解・清掃していきます!
まずピントリングのゴムを外します。
ゴムが劣化して千切れる事がありますので、できればドライヤーなどで温めながら外すと後悔しないと思います(汗)
組み立て後にこのゴムが劣化して空回りする時は「接着剤」で固定するより、両面テープがおススメです。
②ピントリング「前半分」を反時計回りに回して外します
ここが固くて外れない時は「ネジ溝に無水エタノールを数滴浸みこませて待機してから」緩めるか、「ドライヤーなどで温めてから」緩めてみます。
③そしてレンズを繰り出すとイモネジがあります
これを潰さない様に慎重に緩めます。(紛失しない様に気を付けてください)
錆びついていたらラスペネなどを染み込ませてから再チャレンジしてみます。
最悪、ネジを潰したらドリルで貫通してタップをかけるしかありません(汗)
④鏡筒を押さえている前枠(銘板)を反時計回りに回して外します
この時に鏡筒ユニットがごっそり抜け落ちる事があるので、レンズを上向きにしながら前枠を緩めると安全です。
前枠が外れたら、慎重に鏡筒ユニットを引き出します。
(このレンズは近距離補正機構が無いので、そのまま気にせず抜いてOKです)
⑤絞り伝達レバーの位置関係
絞りリングで可動するA部分と、絞りレバーで可動するB部分とに分かれていて、位置関係はこの様になっています。
鏡筒ユニットはCで位置決めされています。
組み立てる時はマウントを外さなくても出来ない事はありませんが、マウントを外して組んだ方が確実で安心感があります。
⑥レンズを外していきます
後群はカバーを外すとレンズとスペーサーが一気に4枚出てきますので注意して下さい。
後群のレンズとスペーサーは向きをマーキングする為に1枚1枚慎重にレンズサッカーなどで外していきます。
因みにこのレンズは分解痕があり、最後のレンズが逆向きに組んでありました。(汗)
レンズが逆向きだとボケボケの画像になるのですぐに分かります。
そんな時はニコンの千夜一夜物語のレンズ構成図を参考にすると良いですが…
(正直、それでも原因がどのレンズか分からない事が多く、レンズやスペーサーの向きを間違えて組んだレンズはとてもリスクが高くなります)
スペーサーも必ず向きがあり、もし向きが無いように見えても当たり面の精度が違う可能性があるので必ずマーキングしておくと良いです。
⑦前群ユニットのレンズを清掃します
固定リングが固い時はネジ溝に無水エタノール作戦もしくはドライヤー温め作戦で緩めます。
レンズを清掃したら前群を組み立てます。
⑧中玉を外します
画像の黄色丸部分にカニ目レンチを入れ、反時計回りに回して外します。
⑨中玉と後群レンズを清掃します
そして前群ユニットを組み付けて鏡筒ユニットは完了です^^
⑩組み立てはマウントを外してから
絞りリングは外す必要はありません(汗)
この絞りリングのクリック部分は紛失し易いクリックボールではなく板バネ式でした。
⑪鏡筒ユニットを本体に組み込みます
鏡筒ユニットの「銀色の丸い部分」を本体の「絞りリング可動レバー」に入れます。(左上の黄色丸部分です)
その時に下の黄色丸のプラスネジ(確か3本あります)と間違えないようにします。
そして同時に鏡筒ユニットの位置決めCを本体の溝に入れます。(⑤を参照してください)
入ったら、④の前枠を組んでイモネジを締め込みます。
⑫マウントを組みます
今度はマウントのレバーを鏡筒ユニットの四角いレバーに入れ、マウントを取り付けます。
組みあがったら、絞りリングと絞りレバーを動かして動作確認します。
後はピントリングとピントリングゴムを組み立てて完成!
お疲れ様でした。
⑬「ニコン Ai Nikkor 28mm F3.5」の作例
まずは単純な風景から。
カメラはニコンD90で、絞りはF8.0になります。
⑭自販機
開放f3.5で、ほぼ最短撮影距離で撮影しています。
最短撮影距離が0.3mなので割と寄れました^^
⑮イベント告知の旗
⑯ブツ撮り(屋外フィギュア撮影)
f5.6で撮影しています。
フィギュアくらい大きさの撮影になると、寄れる広角の28mmクラスはいい選択だと思いました。
⑰夜間の景色
開放f3.5で撮影しています。
開放からとても良く写るので、多少暗いf3.5でも全く不便は感じませんでした。
今回このレンズを使って、ニコンの抜かりないレンズの1つだと思わせる1品だと思いました^^
☆レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、落ち着いて慎重に行って下さい。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、参考程度にして下さると嬉しいです。
あとレンズの分解・清掃は必ず自己責任でお願い致します(汗)
以上、【「ニコン Ai Nikkor 28mm F3.5」分解・清掃・作例】でした!
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