タムロン「AF18-270mm Di II VC(B003)」分解・清掃・修理

タムロンB003ジャンク タムロン

◎今回はとあるリサイクルショップのジャンクボックスにて回収してきた「タムロン AF18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC(Model B003)」を分解・清掃・修理してみました。
ジャンクの状態はズーム機構が途中で動かない、絞りレバー動かない、カビが数カ所に発生、ズームリングゴムふにゃふにゃ(汗)
かなり最悪な状態で、これは直せないと感じる程でした。

2008年発売 税別¥80.000 レンズ構成:13群18枚 最短撮影距離0.49m
最大撮影倍率1:3.5 フィルター径72mm 質量550g 絞り羽根枚数7枚
ズーム倍率15倍 手ブレ補正機構「VC」搭載 ズームロック機構採用

「B003」の発売2年後にAFモーターをPZD(超音波モーター)にし、レンズ構成を13群16枚にした「B008」が出ました。
「B008」は「B008TS」になって現行品ですが、今回分解してみて「B003」が短命に終わった理由が分かる気がしました(汗)
ズーム機構の耐久性がちょっと弱いんですよね^^;

難易度★★★★★
今回は割と順調に修理できましたが、個人的には電子制御のズームレンズの修理は凄く難易度が高く、とてもおススメできるものではありません。
メーカーの修理期間内でしたら、メーカーで修理する事をおススメします^^;

 

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

①内部を開けたらほぼ修理不能品でした(汗)

B003修理不能?A:絞り伝達レバーの先端が曲がっていました。(原因は下記⑥参照)
B:カビは手ブレ補正ユニット内部に発生(最悪です)
C:ズームリングゴムを外したら更なる悲劇が!!
D:ズームリングゴムがふにゃふにゃになっていた為に、ズーム位置の電子接点を押さえているテープが剥がれて電子接点がぐちゃぐちゃに(滝汗)

正直、これを見て修理はもうやめようかと思いました^^;

 

②それでも分解・清掃をやりました!

B003分解清掃A:まず前群を外す為に3点でハメてあるプラカバーを外します。
(プラスチックのピンが折れない様に慎重に外します)
この時にレンズを傷つけない様にクリーニングペーパーを噛ませるといいです。

B:四角印がプラスチックのピンが入っている場所で、次は丸印のネジを3本緩めて第2カバーを外します。

C:第2カバーが外れた様子。

D:前群ユニット位置をマーキングしたら、3本のネジを外して前群ユニットを外します。
外した前群ユニットを清掃しておきます。

 

③マウントなどを外していきます

マウント外し

Ayumu
Ayumu

ここで必ず注意しないといけないのは、外したネジをレンズ内に絶対に落とさない事です!!
もしレンズ内に落とすと(特に絞りレバーの穴)、手ブレ補正機構の磁石にネジがくっつき、外すのが困難になるからです。
(自分は落として大変な事になりました:汗)
そのまま使用すると制御コイルが断線して手ブレ補正は故障します。

 

 

A:黒い遮光パーツを外し、接点のネジ2本を外し(ネジがちょっと小さめ)、マウントを固定している4本のネジを外してマウントを外していきます。
スペーサーの位置をマーキングしておくと組み立てが楽になります。

B:マウント外す時に、このアース用接点バネがあるので注意して下さい!!
無くさない様に外して保存しておきます。

C:マウントのカラーを外します。

D:AF/MF、VCスイッチを外しますが、AF/MFスイッチはAF位置で外すと良いです。(AF駆動ギヤの位置関係の為)
VCはどちらでも良いですが、組む時はレバー溝がスイッチに入っているか確認しながら行うといいです。

 

④基盤を外します

基板外しA:マウント部のカバーを外します。

B:1のコネクタは上からハメてあるだけなので、上向きに外します。
2のフレキシブルケーブル類はストッパーを手前にスライドすれば外す事ができます。
くれぐれも断線には注意してください。

そして基板を固定している3本のネジを外し、基盤を外していきます。

C:外した部品は百均の袋にパートごとに保存すると良いです。

 

⑤後群とAFモーターを外します

後群とAFモーターA:後群が入っている位置をマーキングしておきます。
そして後群ユニットを固定しているねじ&コロを各3個外し、後群を外します。

B:ネジ3個を外して後群を分解清掃します。
レンズを割る時は各スペーサーの位置をしっかり把握する為にゆっくり慎重に割って下さい。
何故ならある場所は1枚で、ある場所は2枚の事があるからです!
反対側にくっついている事もあるので注意し、場所をそれぞれ記録しておきます。

各レンズを清掃して組み立てます。

C:ネジを3個外し、AFモーターユニットを外します。
(1個だけ小さいネジがあるので注意)

D:ズームリングを回し、穴からネジが見えたらカラーと一緒に外します。

ここからフレキシブルケーブルの断線に注意して作業を進めないといけません。
特に手ブレ補正のケーブルは鏡筒の角に当たると簡単に裂けてしまうので注意して下さい!!

 

⑥鏡筒をどんどん分解していきます

鏡筒を分解

ここからは動画か写真を撮りながら作業をする事をおススメします。

A:⑤のDでネジ&カラーを外したら、今度はズームリングを回して引き抜きます。
この時に外れる場所を良く観察しておくと良いです。

B:どんなズームレンズもそうですが、まず先に電子接点を外しておきます。
(これを忘れると電子接点がぐちゃぐちゃになって大変な事になります)

C:ズームを伸ばした状態でピントリング伝達レバーを2個外します。

D:アウターチューブを固定している4本のネジを外します。

 

⑦ズーム機構を分解していきます

ズーム機構分解A:⑥のDで4本のネジを外したら、フレキシブルケーブルに気をつけてピントリングの付いたアウターチューブを引き抜きます。

B:ズーム部の化粧カバー(中)を3本のネジを外して抜き取ります。

C:ズーム部の化粧カバー(前)を位置マーキングしてからナット付きのコロ&ネジを各3個外して抜き取ります。

D:ズーム機構(前部)の位置をマーキングした後、前のコロ&ネジ3個と後ろのコロ&ネジ3個を外して前側へ引き抜きます。

 

⑧中群ユニットの取り出し

中群ユニット取り出し

ここからは作業に集中した為に画像撮り忘れ&作業手順を忘れている箇所があり、位置マーキング&作業映像保存は各個人でしっかりやって下さい(汗)

A:位置マーキングをしてからコロ&ネジを外し、ズームユニット後ろを取り外します。

B:中群ユニットの位置をマーキングし、各コロ&ネジ3個を三ヶ所外して引き抜きます。
Aのコロ(画像⑨のCの②を参照)は見えませんが「長めのコロ」で、この中群ユニットを含め三ヶ所を可動しており、組む時に中群ユニットのスライド穴に入れないとボケボケの画像になります。
(自分はやってしまって2回分解・組み立てしました:汗)

C:抜き取った中群ユニット。
鏡筒に残ったレンズも汚れていたら清掃しておきます。
そしてここでとんでもない異常に気付きました(黄色矢印参照)
何やら金属のリングがぐにゃぐにゃになって入り込んでいるではありませんか!

D:外した「変形してしまったリング」。
これが原因でズームが途中で止まってしまったみたいです。
おそらく画像①の絞りレバーの先端がここに当たってしまって、ズームが途中で動かなくなったんでしょうね^^;

このパーツはおそらく中群ユニットのズームレールからAのコロが脱線しないように取り付けられていたと自分は思いました。
とりあえず板金しましたが、取り付けたらあまりに頼りなかったので、今回は様子見で取り付けるのをやめる事にしました。
(ひょっとしたらズームを軽くする為かもしれません)

 

⑨手ブレ補正レンズの分解清掃

手ブレ補正ユニット清掃A:手ブレ補正ユニットを外す為にはフレキシブルケーブルを細い隙間から外す必要があります。
今回、自分はステーを曲げて通しましたが、これは分解2回目以降は通用しないので、できればドライヤーで両面テープの糊を温めながらケーブルをステーから外した方が良いです。
(組む時は新しい両面テープで固定します)

B:フェルト部分をめくってネジ3個を取り外します。
そしてユニットを割っていきますが、手ブレ補正ユニットの磁石がかなり強力なので注意しながら慎重にやって下さい。
それでもCの①の玉が磁石にくっついてしまうと思います(汗)

C:分解した手ブレ補正ユニット。
組む時は右下の基盤側の三ヶ所の溝に①の玉をそれぞれ置き、右上の磁石の付いたレンズをゆっくり水平に組めば、玉が磁石にくっつく事なく組めると思います。
…と言いつつ2回失敗しました(汗)
この時、フレキシブルケーブルには絶対に力をかけない様に注意します。

そして③のネジを外して中玉を外します。

D:中玉を押さえているカバーは接着剤で回り止めされていますが、接着剤を削らなくても割と軽く回ると思います。
外したら接着剤のカスはなるべく取り除いておきます。
そしてレンズを清掃したら逆の手順で組み立てます。

あとはマーキングに従い、全て逆の手順で組み立てればOKですが、コロのネジは締め込み過ぎるとズームが重くなりますのであまり締めこまない方がいいです。
(本来、各コロのねじにはネジ止め剤が塗付されているので、できればネジ止め剤をちょっと塗って軽く締めこむのが理想です)

 

⑩フレキの注意と代替え接点について

代替接点A:組む時に①の場所にフレキを通すのを忘れないでください。
②のフレキは特に痛みやすいので、最後まで気を抜かない様にします。

B:ピント距離の接点は必ずDの⑥を締め終わるまで組まないで下さい。

C:ぐちゃぐちゃになった①のDの接点ですが、何とたまたま以前「部品取りにしたキャノンのEF35-135 USM」の物が接点幅ぴったりでした!(ステー部要加工)

D:電子接点は擦れた痕を頼りに調整して組みました。
1回目はズームに合わせて絞り値は正確に変わるものの、画角表示不良でした。
2回目に調整し直したら全て正常に表示される様になり大成功!

 

⑪ズームリングの脱線(空回り)を修理

A:ズームすると望遠側が重いせいか、この様にコロが通る溝の一部が削れて脱線しやすくなっていました。
プラスチック製の為、強く握ると筒が歪んで余計に脱線しやすくなる印象です。

B:デザインカッターでこの様に切り落としました。

C:ネジを長い物に交換、そしてスペーサーを噛まします。

D:こんな感じで完成。
強くズームしても脱線しなくなりました。
12年も経つとおそらくメーカー側にはもう交換部品も無いので、これしか方法が無いと思います…(汗)

 

☆長い戦いはこうして終了しました(遠い目)

 

⑬「タムロン AF18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC(Model B003)」の作例

梅とめじろ梅とメジロ  270mm f7.1 (電子接点修正前)
カメラはニコンD90(このレンズはAPS-C用です)

流石にデジタル対応設計なので良く写ります^^
正直、このレンズは前オーナーの分解痕があったのと、正確に組めてるか自信が無かったので安心しました。

 

⑭ススキ(最短撮影距離)

ススキ270mm f7.1
このレンズって何故か望遠端だとf7.1付近が一番良く写る感じがします。

 

⑮スイセン ホワイトライオン

スイセン270mm f7.1

 

⑯歩道の景色

歩道の景色18mm  f8.0

 

⑰猫と歩道の景色

猫と歩道18mm  f7.1   猫は左下に居ます。

 

⑱猫

猫270mm f7.1

 

⑲ドリンク

ドリンク65mm  f7.1

やはりデジタル時代のレンズだけあって、ズーム全域でとても良く写る印象でした。
手振れ補正の効き具合は当時のタムロンらしく、ちょっと弱くて制御音が大きい感じですが…(汗)
でもレンズの修理はやっぱり機械式の単焦点がいいと思う自分です…(苦笑)

 

 

☆レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、落ち着いて慎重に行って下さい。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、参考程度にして下さると嬉しいです。
あとレンズの分解・清掃は必ず自己責任でお願い致します(汗)
以上、【タムロン「AF18-270mm Di II VC(B003)」分解・清掃・修理】でした!

 

コメント

  1. ピンボケの魔術師 より:

    本当に素晴らしい!!

    • ayumu3 より:

      ピンボケの魔術師さんコメントありがとうございます!
      そして労いのお言葉ありがとうございます^^
      この整備は楽しくもあり、苦しくもありました(笑)
      やっぱり機械式のレンズの方が整備性もいいですし、末永く使えると思いました。
      また頑張ります!

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