タムロン「TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (CZ-150)」分解・清掃・作例

タムロン

◎とあるリサイクルショップのジャンクボックスに転がっていたタムロンの「TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (CZ-150) 」を分解・清掃し、ソニーα7での作例を載せてみました。
この頃のタムロンの機械式レンズはレンズ前群やレンズ後群が中でイモネジによって調整固定されている為に、位置を測定&マーキングし、外装を分解して取り外す必要があります。
それでも初期のTAISEI KOUGAKU (泰成光学)時代のレンズなど、イモネジの数の多い固定方法やパズルみたいな仕組みによりはまだマシかなと思います。(汗)

タムロンの70-150mmシリーズは1976年に開放値f3.5、最短撮影距離1.5mの「CZ-150」と開放値f3.8、最短撮影距離2.0mの「CZ-715」が外観、重量、レンズ構成10群12枚が同じで価格差¥1.000と言う謎の併売で始まります。
次に発売(1978年)されたのが「QZ-150M」で、光学系が一新されて11群13枚になり、1979年には外装をリニューアルした「02A」、1980年には全てを一新して10群13枚(高屈折ガラス採用)になった「20A」で70-150mmシリーズは幕を下ろします。
因みに「20A」は「ニコンシリーズEの75-150mm f3.5」とレンズ構成がほぼ同じになっています。

1976年発売、1978年頃生産終了 当時の価格は¥44.000 モデル名: CZ-150
マウント: 交換式アダプトール 焦点距離: 70-150mm 開放f値: f3.5
レンズ構成: 10群12枚 最小絞り: f22 絞り羽根枚数: 6枚 フィルター径: 52mm
最短撮影距離: 1.5m ズーム方式: 回転式 重さ: 465g 外寸: 64.5x117mm

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

2023/11/28更新: レンズの型番が間違っていました💦申し訳ありません💦
想桜さんご指摘ありがとうございます!!

 

①前群レンズユニットの取り外し

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)前群レンズ外しA: フードを固定している銘板兼フィルター枠を反時計回りに回して取り外します。
タムロンは製品によって時計回りの物もあるので注意が必要です。

B: 銘板兼フィルター枠を外したら内蔵フードを引き抜きます。

C: ここは無限遠調整になっていますので、突き出し量を測定するか、マーキング、もしくは組み立て時にネジ穴から覗いてネジの打痕をセンターに合わせる確実な方法もあります。
イモネジを取り外します。

D: 前群レンズユニットを反時計回りに回して取り外します。

②前群レンズ清掃とヘリコイド分解

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)ヘリコイド分解A: 外した前群レンズを分解し、各レンズを清掃します。

B: フォーカスリングゴムを外し、フォーカスリングを3mくらいにセットして穴にあるヘリコイドストップネジを取り外します。

C: そしてフォーカスリングをゆっくり慎重に回して外れる瞬間の位置をマーキングします。
外れるまでの回転数は数えなくてもヘリコイドストップネジが基準位置になるので大丈夫です。

D: フォーカスリングを外したら古いヘリコイドグリスを清掃して新しいヘリコイドグリスを固めの筆などで薄く塗付しておきます。

③2群レンズの清掃とマウント外し

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)マウント外しA: ロックリングを反時計回りに回して外し、レンズの向きをマーキングしながらレンズサッカーなどで取り出します。

B: 2群レンズを清掃します。

C: マウントの固定ネジ3個を緩めます。

D: このマウントは小さなワッシャーが挟んであって組み立てがとても面倒なものですから、遮光板にマイナスドライバーなどを突っ込んで、アッセンブリーごと外すのがベストです。

④絞りリングの取り外しなど

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)絞りリング外しA: こんな感じでマウントはアッセンブリーで外すと組み立てがとても楽になります。

B: 絞りリングを固定しているリングのネジを3個緩めます。

C: 絞りリングを外す時はクリックボールが飛び出す可能性がありますので、必ず袋の中で作業します。
絞りリングを固定リングと一緒に外し、クリックボールと小さなスプリングを回収しておきます。
組み立てる時はボールをグリスで固定しながらやると良いです。

D: 後玉のロックリングはネジ止め剤で固定されていますので、予めアセトンを染み込ませてちょっと放置しておきます。

⑤鏡筒の分解

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)鏡筒の分解A: ロックリングを外し、後玉の向きをマーキングしながら外したらレンズを清掃します。

B: ヘリコイドを固定しているネジ3個を取り外します。

C: ヘリコイドを外したら順次、中間外装リング、ズームリングを外していきます。

D: A/M切り替えスイッチカバーのイモネジを緩めて前方にずらし、ここもクリックボールとスプリングが飛び出しますので、袋の中に入れてA/M切り替えスイッチを外します。
そしてクリックボールとスプリングも回収しておきます。

⑥後群レンズユニットの取り外し

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)後群外しA: これでようやく後群レンズを調整固定しているイモネジを緩める事ができますが、ここは調整されているので必ず後群ユニットの突き出し量を測定する必要があります。
但し、組み立てる時にこのイモネジを外して穴のセンターにネジの打痕をぴったり合わせれば測定の必要はありませんし確実です。

B: 一応後群レンズユニットの突き出し量を測定してみました。
(後玉を外した状態です)

C: 測定の結果、後群レンズユニットの突き出し量は10.3mmでしたが、個体差があるので参考程度にしておいて下さい。

D: 外した後群レンズユニットのレンズとスペーサーの向きをマーキングしながら取り出して各レンズを清掃します。
どんなレンズでもそうですが、向きのなさそうなスペーサーでも向きを厳守しないと当たりの問題で光軸が狂う確率があります。

⑦鏡筒の分割と3群レンズ清掃

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)鏡筒の分割A: 鏡筒を固定しているイモネジ3個(軸合わせ用)とネジ3個を取り外します。

B: 組み合わせ位置のマーキングをして鏡筒を分割します。

C: 3群レンズのロックリングを外し、レンズをレンズの向きをマーキングしながら取り外します。

D: 外したレンズを清掃します。

⑧絞り羽根の清掃

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)絞り清掃A: 絞り羽根を固定している押さえ板の3個のネジを外しますが、この押さえ板の下には小さなスペーサーが入っているので紛失に気を付けて下さい。

B: 絞り羽根を点検し、油が滲んでいる場合は羽根を外して擦れる面を全てエタノールなどで奇麗にします。
組み立てる時にスペーサーがずれていると押さえ板が変形するので注意して下さい。

C: 鏡筒を組む時は最初にプラスネジ3個を締め付けずに仮止めし、イモネジを締めつけてからプラスネジを締め付けないと光軸がずれるので注意して下さい。

D: イモネジを使って固定している箇所は全てイモネジの打痕がセンターに来るように組めば元の組み立て精度で組む事が可能になるのでおススメです。

後は逆の手順で組み立てて完成となります。
お疲れ様でした!

⑨タムロン「TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (CZ-150) 」の作例

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)作例風景使用カメラはフルサイズミラーレスカメラの「ソニーα7」になりますが、前群レンズにややコーティングの痛みがあるのと、焦点距離や絞り値は忘れてしまったのでご想像にお任せします💦

⑩不法投棄のタイヤ

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)作例タイヤ相変わらず家電や廃タイヤの不法投棄は多いですね…

⑪セイタカアワダチソウ

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)作例セイタカアワダチソウこのレンズは最短撮影距離が1.5mなのがネックです。
タムロンのHPには「マクロ付き」って書いてあるのですが、このレンズにはどう見てもそんな機能は付いてない気がするんですけど…??

⑫景色(150mm)

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)作例橋橋にピンを合わせています。

⑬ススキのある景色

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)作例ススキ秋の景色も深まってきました。

⑭ススキ

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)作例ススキ風に流れるススキは優雅なもんです。

⑮橋の欄干

TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (QZ-150M)作例 橋の欄干

⑯峠道にて

⑰ミカちゃん

⑱ハードオフ

⑲夕暮れ

⑳テールランプ

当時のズームレンズとしては良く写ると思いますが、何となく被写界深度が浅い気もしました。
あとこの焦点域であまり寄れないのはちょっと残念ですね^^;

 

◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)

コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。

 

以上、【タムロン「TAMRON ZOOM 70-150mm f3.5 (CZ-150)作例」分解・清掃・作例】でした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント

  1. 想桜 より:

    お久し振りです。
    今日、QZ-150Mを入手しました(既に手元にあるような記憶がありつつも…やっぱり入手)
    こちらの記事のレンズにはマクロ機能が無い、ということはQZ-150MではなくCZ-150だと思います。
    タムロンの紹介ページの写真がCZ-150は白黒ですし、外観がそっくりなので分かり難いですが、フォーカス、ズーム、絞りの各リングのゴム環の幅がCZ-150はQZ-150Mよりも狭いです。それと被写界深度指標が彫られている左横にマクロの倍率も彫られていないようですのでCZ-150で間違いないと思います。
    今回私が入手したレンズはカビ、汚れが奇跡的に無く、絞りもスムーズに動きますので分解はしないつもりです。ハードオフで330円でした。いい買い物をしました。

    • ayumu3 より:

      想桜さんお久しぶりです!!
      そちらのブログにコメントしようと思っていたのですが、FC2のパスワードを忘れてコメントできず申し訳ありません
      お父さんの事、お悔やみ申し上げます。
      とにかく大変だったみたいですね… 
      自分も未だに相続や登記で終わってない部分があるので他人事とは思えませんでした
      若い頃は人生って無限だと思って生きていましたが、こうして親が他界すると「あっと言う間なんだな」と思うようになりました。

      そしてQZ-150Mを入手なされましたか!
      このレンズはコンパクトでズーム比を無理していない分、良く写りますよね^^

      そしてそして!! ご指摘ありがとうございます!!!
      まさに仰る通りのミスでした(笑)
      また暇な時にでも訂正したいと思います♪

      あ、後ですね、想桜さんのペンタックス黒死病の記事を読まさせて頂いたのですが、MZシリーズは一桁機と二桁機、どちらも日本製が存在しています。
      リサイクルショップで確認しましたので、間違いないと思いますが…
      お節介で申し訳ありません

      • 想桜 より:

        ご返信ありがとうございます!

        親が亡くなってみると、色々思う事がありますね。生前は「やってあげられることはやっている」と思ってましたが、亡くなった後は「もっとできることはあったんじゃないか?もっとやさしく接してあげればよかった」と遺影を見るたび後悔と反省に苛まれています。
        先日、病院の待合室で半分ボケたようなお爺さんを連れた息子とおぼしき男性が、「何で病院に来なきゃいけないんだよ」と不満を言って言ってるお爺さんに対して、大きな声で「必要だから来てるんだよコノヤロウ!」とお爺さんを叱るように話しているのを見掛けました。次に息子が何か言ったら間に入って息子に話しかけてクルールダウンさせよう、と自然に思いました。結局診察もスムーズに終わったみたいでその後は何も無かったので話しかけることはなかったのですが・・・私もそうでしたが渦中にいると親も周りも見えなくなってしまいます。泣きたいのは息子の方かもしれませんしね。

        MZシリーズは日本製もあったんですね!補記しておきます。情報ありがとうございます。
        記事にも書きましたが、MZ-3は日本製、MZ-50と最近入手したMZ-60は「ASSEMBLED IN PHILIPPINES」になってました。組み立てだけフィリピン、ということですね。となると部品自体は日本製?それとも中国製と日本製の寄せ集め?もうよく分かりませんね(笑)
        最近PENTAXの昔のコンデジ(optio S30 復活しませんでした)を分解しましたらモニターはSONY製、基盤はパナソニック製でした・・・この業界では昔からよくある方式ですが、他の業界にはこういう関係性ってあんまりない特殊なつながりだと思います。

        • ayumu3 より:

          こちらこそお返事まで頂いて申し訳ないです

          まったく同感です。
          自分も生前は「これが自分の今できる精いっぱいの事なんだ」と思ってましたが、いざ亡くなってみると「ごめんな、本当はもっとできたのかもしれない」と自分の無力さを感じるばかりでした。
          不思議な事に亡くなってしまうと、悪い事は忘れて、お世話になった事や笑顔ばかり思い出してしまいます。
          きっと想桜さんが病院で見た息子さんも親が亡くなったらきっとそんな気分になるんでしょうね…
          そう思うと人間を成長させるのは悲しみなのかもしれません。
          それでも時が経つと記憶が次第に薄れ、カラー写真の色が薄れてモノクロになったような遠い記憶になりつつあります。

          父が使ってた壊れたラジオを直した時はまた泣けてきましたけどね(笑)
          https://ameblo.jp/ayumuhito12/entry-12824245463.html
          こちらのブログでもレンズやカメラの事をやっているので、また機会があったら覗いてみて下さい。

          MZシリーズは謎が多いですよね~~
          実はまた黒死病の修理の為にMZシリーズのジャンクをリサイクルショップ巡りをして探していたのですが、割と日本製(MADE IN JAPAN)があるのに驚きました。
          想桜さんが仰るように中身は日本製か中国製で、組み立てが海外なんでしょうね。

          そうそう、コンデジの修理は難しいですよね
          自分もちょっと前にキャノンG5をやったのですが、絞りのモーターの磁石が何と崩壊していたんですよね(修理不可)。
          その時は確か部品にソニーがあったのを覚えています(笑)

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