◎リサイクルショップにて回収してきたカビカビのタムロン高倍率ズーム「AF28-300mm Ultra Zoom XR F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO (Model A06)」を分解・清掃してみました。
手ブレ補正やレンズ内モーターの無いニコンマウントなので、分解・組み立ては割と簡単でしたが、これがキャノンマウントだとレンズ内モーター&絞り制御モーターがあるので難易度が上がると思います^^;
今回は分解できない「ハメ殺しレンズ」の横に穴を開け、超音波洗浄機でテスト洗浄も試みています。
2002年発売、2004年生産終了 価格¥64,000 レンズ構成 13群15枚 重量420g
最短撮影距離 0.49m(ズーム全域) 最大撮影倍率 1:2.9(300mm時) フィルター径62mm
絞り羽根9枚 最小絞りF22
この前のモデル「AF28-300mm(Model 185D)」はとても大きかったので、このモデルがコンパクトを謳うのは良く分かると思いました。
コンパクトな分、整備性が犠牲になっているかと思ったのですが、そうでもありませんでした。
(以前B003をやっているから余計にそう思えるのかもしれませんが:汗)
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①それではA06を分解・清掃していきます
A:まず銘板の切り欠きに小さなマイナスドライバーを入れてヘラを入れる隙間を作ります。
この時、めくり過ぎるとプラスチックのピンが折れますので注意して下さい。
因みにこのレンズはジャンクの為に「前玉に大きなキズ」が付いていますが気にしないで下さい(汗)
B:銘板は3つの細いプラスチックのピンで固定してあるだけですので、レンズにキズを付けない様にペーパーを挟んでヘラなどで少しずつ持ち上げて外します。
C:銘板を外すと前枠と前群を共締めしているネジが現れますので、前群を絶対に回さない様にしながら3つのネジを外します。
D:そして前枠を外し、前群の固定してある位置をマーキングしてから前群を外します。
②前群を超音波洗浄機で洗浄トライしてみました
A:前群はご覧の通り凄まじいカビで、レンズはハメ殺しになっている為に分解不可です。
カッターなどで削るのは精神的に良くないですし、何より見た目がかなり悪くなってしまいますよね^^;
B:まず対角に小さな穴を二ヵ所開けます。
これはかなりハイリスクな作業で、レンズにキズを付けない様にレンズ間のクリアランスのチェックをし、貫通寸前にドリルの力を抜く技巧が必要になります。
C:超音波洗浄機で3分ほど洗浄しました。
カビは取れても、カビの根がしつこいので何度も繰り返す必要があります。
③超音波洗浄は仕上げも大事
A:超音波洗浄が済んだら、エアーを穴から送って中の水を飛ばします。
B:しかしながら水道水で洗浄すると、ゴミやカルキなどの成分が残ってしまいます。
C:そんな時は汚れと水分を「精製水」と「無水エタノール」を使って置換します。
まず水道水をある程度抜いたら「精製水」を入れ、水道水と置換して吹き飛ばします。
それを3回ほど繰り返します。
そして今度は精製水を抜き、「無水エタノール」を入れて置換します。
それも3回ほど繰り返すと…
D:ここまで綺麗にする事ができました。
まだ汚れが残っていますが、もう少し繰り返せばいい状態まで戻せると思います。
今回は時間が無かったのでここまでとしました(汗)
④マウントと後群を外します
A:まず接点を固定しているネジ2本を外してから黒い遮光パーツを外します。
そしてマウントを固定している4本のネジを外し、マウントも外します。
B:絞りリングを外す時は部品が飛び出しますので、必ず袋の中で作業して下さい!!
袋の中で慎重に絞りリングを外し、ボールとバネ、ボタンを回収します。
C:奥側のネジ3本を外し、後群ユニットを外します。
この時にスペーサーが入っているので、向きと場所をチェックしておきます。
製造ロットによってはここに小さな銅リングのスペーサーが入っているかもしれないので、後群ユニットを外す時は地雷だと思ってゆっくり抜き、ユニット側&レンズ側に小さなリングスペーサーが残っていないかチェックする必要があります。(これを怠ると光軸が狂います!)
D:後群を分解すると、そこにもスペーサーが入っているので慎重に割ります。
ここも小さなリングスペーサーが入っていないかチェックします。
各レンズを清掃して後群ユニットを組み立てます。
(もし右側のレンズ内にカビがあった場合、おそらく捻れば分割できると思います)
⑤マウント側を分解していきます
A:すみません、この黄色枠のネジ4本を外す前にBのフレキシブルケーブルを外して下さい^^;
フレキを外したら、4本のネジを外してマウントベースを外します。
B:フレキシブルケーブルの外し方はコネクタの茶色い部分を持ち上げてケーブルを引き抜くだけです。
ここは組む時に狭くて難儀するので、ケーブルを痛めない様に慎重に組む必要があります(汗)
C:AF駆動ギヤと各ネジの位置。
黒いネジの位置は決まっているので注意して下さい。
D:スペーサーの位置と場所をチェックして外します。
⑥ズームリングと接点の取り外し
A:AFギヤユニットを外し、ズームリング部を固定しているネジを外します。
B:ズームリング部をゆっくり鏡筒から外しますが、この時にズームリング部と鏡筒の組み合わさる位置、1のフォーカス駆動レバーの入る場所、2のズーム駆動リンクとズームリング部奥のハマる場所、をチェックして写真を撮っておくと、後から組み立てがスムーズにいくと思います。
C:フォーカス位置の電子接点を外します。
D:このパーツは柔いので、痛まない様に保存して下さい。
もしこの接点を外し忘れると接点がぐちゃぐちゃになって涙目になります(汗)
⑦フォーカスリング部を外します
B:フォーカスリング部の入っている位置を確認し、フォーカスリング部を引き抜きます。
C:必ず1のズーム位置接点を外してから、2のコロ3箇所を外していきます。
D:ズームのセンターカバーを引き抜き、前カバーの位置をマーキングしたら「四角枠のネジ&コロ3つ」を外して前カバーも外します。
(センターカバーは接点取り付け位置が組み立ての目安になり、前カバーにはフードの取り付け位置マーキングがあるので、それを組み立ての目安にしても良いです)
⑧ズーム部を分解します
B:フレキに注意しながらズーム部を動かして穴からネジが見える様にします。
そしてネジと白いコロ3箇所を外します。
C:今度はズーム部を伸ばして各部にしつこいくらいマーキング&写真を撮影したら、丸印のネジと金属コロを3箇所外します。
D:1の接点の付いている筒を外し、鏡筒を縮めて絞りユニットの位置マーキングをしたら、2のネジ&コロ6カ所を外します。
⑨絞りユニットを外し、各レンズを清掃します
B:鏡筒の中群(前)を清掃します。
C:絞りユニットのレンズを清掃します。
D:各レンズの清掃が済んだら、マーキングに従って鏡筒を逆の手順で組み立てていきます。
⑩組み立ての諸注意
A:接点類は必ずパートごとの一番最後に組み、ちゃんとフレキシブルケーブルのパターン上をトレースしているか確認しておきます。
あまりずれているとカメラの測光に問題が生じたり、正しい絞り値と画角が表示されません。
B:⑥のズームリング部分を組み立てる時は伸ばした状態(望遠端)の方が組み立てやすいかもしれません。
ここはフォーカス伝達、ズーム伝達、ズームリング部の固定が全てしっかり噛み合わさっていないと問題が発生する為、組み立てに苦労すると思います^^;
(この時に集中し過ぎてフレキシブルケーブルを断線しない様にします)
C:マウントのピン二ヵ所はこの位置に組んで下さい。
四角枠のフレキシブルケーブルは入れにくいので、断線しないようにしっかり組みます。
☆以上で分解・清掃・組み立ては終了です。
お疲れ様でした!
⑪TAMRON「AF28-300mm Ultra Zoom XR F/3.5-6.3 (Model A06)」の作例
ブツ撮り 55mm f8.0
ズーム全域で最短撮影距離が0.49mなので割と寄れます。
⑫木にとまっている四十雀(シジュウカラ)
300mm f8.0 露出補正+0.7
暗かったのと、被写体が動いていたのでちょっとブレてます(汗)
驚いたのはこのシジュウカラが首輪をしていた事でした。
⑬逆光テスト
60mm f8.0
太陽の位置とかあまり参考にならなくてスミマセン(汗)
⑭建設中の高速道路
⑮車のテールライト
⑯大橋から夕陽を望む
28mm f5.6
中央は富士山で、シャッタースピードを稼ぐ為にあまり絞ってません^^;
⑰工事現場
☆タムロンA06を使ってみて、広角端から望遠端までほど良く写る印象でした。
手ブレ補正も無いし、デジタル対応でもありませんが、コンパクトで軽量、価格も安いので気楽に使うには良い選択かもしれません。
但しニコンマウントの場合はカメラボディにAFモーター内蔵のモデルでないとAFは使えないので注意が必要です。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、落ち着いて慎重に行って下さい。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、参考程度にして下さると嬉しいです。
あとレンズの分解・清掃は必ず自己責任でお願い致します(汗)
以上、【TAMRON 「AF 28-300mm f3.5-6.3XR (A06)」分解・清掃】でした!
コメント