◎今回はレンズ単独でAF(オートフォーカス)の出来るコシナ「COSINA AF 75-200mm/F4.5 MC MACRO」(FDマウント)を分解・清掃してみました。
買った時の状態が「レンズのカビ」&「電池ボックスは液漏れで緑青ガチガチ」という酷い物だった為に3年以上放置していましたが、意を決して連休中に分解・清掃してみた次第です^^;
1987年発売 当時の価格は¥49.800 以下カタログより
「レンズタイプ/35mm一眼レフ用マイクロコンピューター制御オートフォーカスレンズ 最大口径比/1:4.5 焦点距離/f75-200mm レンズ構成/9群12枚 最小絞り/F22
画角/13~31.5度 最短撮影距離/1.1m 最大撮影倍率/1:4 フィルター径/58mm
オートフォーカス方式/TTL位相差検出装置、検出素子CCD、プッシュスイッチで手動、マニュアルフォーカシング可能 使用輝度範囲/EV3-EV18(ISO100) パワーズーム/
T・Wプッシュスイッチによる電動方式、マニュアルズーム可能 モード切換/S=シングルAF(フォーカスロック可能)ブザーにより合焦合図 C=連続AF(ブザー音無し) OFF=電源オフ 使用可能フィルム本数/24枚撮りフィルム150本 電源/単4乾電池3本
最大径x長さ/73mm×129.5mm 重量/650g(乾燥重量) ケース別売り」
当時は7種類のマウントに対応していたのが凄いですね^^;
システム名は「サイバネティック・スマートフォーカシング・システム」(凄い!)
別売りのレリーズアダプターを付ければ、シャッターに連動してAFさせる事ができました。
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①まず電池ボックス周辺のカバーを外します
A: まずはモード切換スイッチ側のカバーを4本のネジを外して外しますが、マウント側のネジはタッピングネジが使ってあるので組み立てる時に間違えない様にして下さい。
この時にスイッチのレバーも外れますので保存しておきます。
B: AFスイッチの化粧パネルを剥がし、中のネジを外します。
そして電池ボックスの中のネジ2本とマウント側1本のネジを外し、電池側のカバーを配線が伸びる範囲で浮かしておきます。
C: 半田ごてを使ってプラス側の配線を取り外します。
D: そしてそのままブザーの配線とマイナス側の配線も取り外します。
②電池ボックスのサビ取りとマウント外し
A: 今度はコネクタから信号コードを外し、スイッチの基盤を取り外します。
この時にスペーサー3個とボタン、バネが落ちてきますので無くさない様にして下さい。
この時に全体の配線の様子を必ず撮影しておいて下さい!!
何故なら作業中に配線が取れて場所が分からなくなる事故が発生するからです^^;
B: 電池の液漏れで緑青が生成された電池ボックスの端子…
こうした時は「食酢」か「重曹」に浸ければ落ちるそうですが、程度にもよりますね^^;
C: 今回は端子の錆取りを「重曹」で対処してみました。
結論を言ってしまうと、これだけ緑青が積もるとなかなか落ちませんね^^;
なので最終的にはドライバーとリューターで削り落とし、駄目な端子にはバネを取り付けて対処しています。
D: FDマウントを取り外します。
(マウントによって仕組みが違いますので注意して下さい)
そして絞りリングを取り外す時はボールとバネが飛び出しますので、必ず袋の中で作業して下さい。
③レンズ後群の清掃と前玉外し
A: マウントの中間リングを外す前に絞りレバーが奥のどのレバーに引っ掛かっているのかを鏡筒の奥をライトで照らして確認します。
そしてマウントの中間リングと後玉ユニットを外します。
(矢印の部分はバックフォーカスの調整がされていますので気をつけて下さい。)
B: 外した後玉ユニットのレンズを分解・清掃しますが、レンズとスペーサーの向きはマーキングなどをして厳守して下さい。
C: ここは緩めなくてもOKです。
…知らなかった自分はズーム接点のネジを外してズームリングを回してしまい、電子接点がぐちゃぐちゃになりました(何とか板金修理しました)
D: 前玉ユニットを外す前に鏡筒とフォーカスリング、前玉ユニットの位置関係をマーキングします。
前玉ユニットがヘリコイドから外れる瞬間の位置も必ずマーキングして下さい。
もし忘れても「全て仮組をしてフォーカスリングを無限遠にセットし、遠景にレンズを向け、カメラのファインダーを覗きながら前玉を回して無限遠にセットしてネジで固定するだけ」です。
④前玉と中玉の清掃・基盤のネジ外し
A:外す時に分かると思いますが、フォーカスリングにはスライドする爪があり、入る溝の位置も確認しておいて下さい。
外した前玉のレンズを分解・清掃します。
B: 中玉はそのまま反時計回りに回せば外れますので、これもレンズの向きをマーキングしてから清掃して組み立てておきます。
C: 基盤をフリーにする為に固定しているネジを外します。
スイッチ部分にはスペーサーが入っているので無くさない様にして下さい。
D: ここにもネジがありますので外しておきます。
⑤鏡筒の分離
A: ギヤボックスを固定しているネジ(確か3本で、1本大きさが違います)を外し、青丸のシャフト固定パーツ(調整されているので要マーキング)も外します。
そして配線を切らないように注意しながらギヤボックスをずらし、隠れているネジを外します。
B: 基盤のICチップの下にもネジが隠れているので外します。
C: そして鏡筒を分離しますが、こちらのシャフトはキーを穴に合わせて抜く必要があります。
左のシャフトはそのままでOKです。
D: 配線に注意しながら鏡筒を分離します。
このままでもプリズムの入ったレンズ後群を外す事ができますが、自分は配線を痛めたくなかったので、ズーム固定ピンネジ2個とリングナット、ギヤリングを外し、基盤も外して鏡筒を完全に分離して作業しました。
⑥AFセンサユニットとレンズ後群を外します
A: AFセンサユニットの位置マーキング(ネジの凹み痕でもOK)をしたら、フレキシブルケーブルを絶対に断線しない様に注意しながらネジを外してユニットを取り外します。
B: 外したAFセンサユニット。(48bit24ペア-CCDラインセンサー)
中のレンズに僅かにカビがありましたが、周辺だったので今回はスルーしました^^;
因みにここの調整も弄らない方がいいと思います。
(ラインセンサーの測距点が光軸の中心になるよう微調整してある為)
C: プリズムの入った後群は調整されていますので、後ろの固定リングを外す前に必ず
位置マーキングと何回転で外れたかをメモって下さい。
どんなレンズもそうですが、こうした板バネが入っている場合は必ず調整されています。
(特に後群で締め込みが緩いっ!、と思ったらすぐ元の位置に戻してマーキングするのが安全です)
D: 後群ユニットを分解・清掃しますが、プリズム(ビームスプリッタ)を取り出す時は四角い銅のスペーサーが入っている位置だけ気をつけて下さい。
そしてプリズムとレンズを清掃したら逆の手順で組み立てていきます。
因みにプリズム(ビームスプリッタ)で30%の光損失があるそうです。
⑦FDマウント組み立ての注意点
A: 鏡筒を組み立てたら絞りレバーがこの位置に来てるか確認します。
このレンズの絞りレバーは3箇所どの位置でも組める様になっていた為に、自分は120度間違えてしまい、また最初からやり直しました^^;
因みにAFが前ピンだったり後ピンの時はこのAF微調整リング(本来はバックフォーカス調整と思われます)である程度調整できるのが分かりました。
これは後群全てが移動するので、画質に問題は無い筈です。
B: マウントの中間リングを組付けたら、レバーを動かして絞りがスムーズに動くか確認します。
C: 小さなクリックボールとバネを入れ、絞りリングを取り付けます。
この時もボールが飛んでいく確率大なので、袋の中で作業をするのがおススメです。
D: 各リンクはこの位置に入れる必要があり、確か右側のレバーは手で押さえながら入れる必要があります。
マウントアダプターなどに取り付けて動作チェックをします。
⑧カバーと配線の取り付け
A: 配線は腐食していたのでほとんど交換しました^^;
ハンダ付けの時は電池ボックスが熱で溶けないように鉄製のクリップなどで熱を逃がしてあげると良いです。
B: まずは電池ボックスカバーから組み立てます。
ゴールは近いので慎重に行って下さい。
C: ここの調整は絶対に弄らないで下さい。
おそらく専門の知識と測定器が無いと無理だと思います。
実験でマーキングしてからちょっと弄ってみましたが、AFが怪しくなるだけでした^^;
D: このチップ…
AF特許「ミノルタ・ハネウェル特許訴訟」でミノルタが負けて165億円支払い、他の日本メーカーも合わせて400億円も払った黒歴史を思い出します。
あれが無かったら今頃ミノルタはどうなっていたんでしょうかね^^;
⑨分解・清掃が完了した「COSINA AF ZOOM 75-200mm/F4.5 MC MACRO」
組み立てたら電池ボックスの接触不良やAFが前ピンなどのトラブルがあったものの、割とあっさり動きました。
AFは確かに遅いですが、割と正確で自分は時代を考えると妥当に感じます^^;
あとパワーズームは五月蠅いし使い勝手が悪いからほとんど使いませんでした。
この後発売された「COSINA 75-200mm/F4.5 AF MARKⅡ」はパワーズームが省略されましたが、使っている動画を見るとちょっとAFが早くなっているように感じます。
しかしこのレンズを見てると1980年代のメカという感じがしますね~^^
合焦の時の音が予想以上に大きくてびっくりしますが(笑)
因みにフードは「タクマー135mm f2.5」の物を使ってます。
⑩「COSINA AF ZOOM 75-200mm/F4.5 MC MACRO」の作例
75mm f4.5 1/2000 ISO400
使用カメラは「ニコン1 V1」です。
⑪遊歩道
75mm f4.5 1/2000 iso400
⑫ジニア(ヒャクニチソウ)
135mm? f5.6 1/1250 iso400
⑬バイクマンの像
100mm f5.6 1/1250 iso400
⑭タテハチョウ
200mm f5.6 1/1250 iso400
⑮停車中
200mm f4.5 1/200 iso400
⑯ほかほか弁当屋さん
75mm f4.5 1/80 iso400
逆光にはちょっと弱く感じましたが、開放でもズーム全域で良く写る印象です。
但し、ミラーレスで使う場合は絞り過ぎるとAFが迷うので(開放測距にならない)、注意が必要です^^;
この時代のコシナAFは「200mm f3.5」や「28-70mm f3.5-4.8」などもありました。
あとタムロン「47A AF ZOOM 70-210mm F4 IF」やキヤノン「New FD35-70mm F4 AF」は僅かばかりに見かけますが、見かけないのがチノン、シグマ「SIGMA U-AF 55-200mm F4.5」やオリンパス「AF ZUIKO AUTO-ZOOM 35-70mm F4」、リコー「AF RIKENON 50mm F2」。
存在している筈ですが、一度も見かけた事はありません…
コレクターズアイテムとしておススメです^^;
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【コシナ「COSINA AF ZOOM 75-200mm/F4.5 MC MACRO」分解・清掃】でした!
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