◎今回は1951年に発売された35mmの距離計連動型カメラ、コニカ「Konica Ⅱ」を分解・清掃・修理してみました。
このカメラの特徴として、 ダブルヘリコイド式沈胴(沈胴時はシャッターロック)、 セルフコッキングではないノブ巻き上げ方式、レンズはコニカでは数少ないヘリアータイプの「ヘキサノン50mm/F2.8(3群5枚)モノコーティング」が使われています。
あとストラップ用のアイレットが無いので、持ち運びには革ケース必須になります^^;
「KONICA IIシリーズ」はこの他、「1955年 ヘキサー50mm/f2.8 or 50mm/f3.5 Tダイアル無し KONICA IIB型」、「1956年 ヘキサノン48mm/f2.0 KONICA IIA型」、「1957年 ヘキサー 45mm/F3.5 シャッターはセイコーシャMX KONICA IIB-m型」があり、珍しい物はⅡ型に「Made in Occupied Japan(MIOJ)」と刻印されている物や、通販会社「イエナ精光」が販売した「KONICA IIF型 」、幻の「レンズ交換式KONICA II型」などがあるそうです。
1951年発売 当時の価格はめっちゃ高い¥35.900。
当時の大卒の初任給はおおよそ¥12.000くらいだったので、いかに贅沢品だったか分かります^^;
レンズは「Hexanon 50mm/F2.8(3群5枚) ダブルヘリコイド式沈胴」
シャッターユニットは「コニラピッドS B、1~1/500 Time露出機構付」
フロントパネルに「24×36の刻印」 重量約690g
販売台数は43,000台なので割と良く見かけます。
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①まずは底部カバーとヘリコイドユニットを取り外します
A: ①まずはパトローネ室の軸をドライバーなどで固定し、巻き戻しクランクを反時計回りに回して外します
ちょっと分かりにくい裏蓋の開け方は、「C状態の底面のハンドルを持ち上げ、半回転させてOにし、そのままハンドルを倒して押し込むと開きます」
巻き戻しクランクの穴から長いドライバーを入れて②の黒い部品を固定しているネジを外し、ハンドル一式を外します。
③を固定しているネジを外し、底部カバーを外します。
④ギヤを押さえているパーツを外します。
B: 巻き上げノブが重い場合はここを分解して清掃・グリスアップします。
今回は時間が無く、それほどノブが重くなかったので簡単な清掃・グリスアップで済ませました^^;
C: 4つの固定ネジを外してヘリコイドユニットごとレンズを取り外します。
外す前にシャッターと距離計伝達レバーの位置関係をチェックしておいてください。
D: ここは外す必要はありません(汗)
Time露出ダイヤルの動きが悪かったので、ここまで分解してしまいました…
②ヘリコイドとレンズの清掃
A: レンズ・シャッターユニットは後ろのリングを取れば外れます。
B: 今回はヘリコイドの調子が悪くないので、見える部分だけ清掃・グリスアップしました^^;
ここは二重ヘリコイドになっているので、悪い場合は全分解が必要になります。
(分解する時は写真を撮りながら行い、特にヘリコイドが外れる位置が重要です)
C: レンズは前・後群共に回せば外れますので、清掃しておきます。
D: 回り止めのロックの平らな面をレンズ側に向け、3つの隙間を見ながら反時計回りにちょっと回すと銘板部分が外れます。
③シャッターユニットの分解と鉄粉除去
A: 銘板を外したら、シャッターコントロールリングが動かす各レバーや1/500用の加速バネをチェックしておきます。
B: 外れる部品は外しておきます。
組む時は加速バネを一番最後に組みます。
C: 鉄粉を除去する為にベンヂンでメカを丸洗いします。
洗浄後は鉄粉で傷が付く可能性があるので、絶対にシャッターや絞りを動かさない様にします。
理想は絞りとシャッター羽を外した後が良いですが…^^;
D: 今回はこれだけ鉄粉が出ました…
これを見る度に、機械式のカメラって命を削っているんだなぁ~、と思います。
④ガバナの取り外しは取付位置のチェックが必要です
A: まず左のネジを外して取付位置の写真を撮ります。
写真を撮ったらネジをまた取付けます。
B: 今度は右のネジを外し、また取付位置の写真を撮っておきます。
これは組み立て時に大事な資料となりますので、間違って消去しない様にします。
この位置通りに組み立てて、シャッターを切った時にガバナのカンギ車が抜けて安定しない時は矢印の方向に調整するとギヤ抜けは無くなります。
C: 取付位置の写真を撮ったらガバナを取り外しますが、ネジの種類が違うので気を付けてください。
D: フラッシュの端子と配線を取り外します。
この時に丸印の端子下にある小さな絶縁プラスチックワッシャーを外すのを忘れないようにします。
自分は忘れて紛失し、結局ハンドメイドしました^^;
⑤シャッター羽の清掃・組み立て
A: 絞りユニットとシャッターユニットを分離する為に3つのネジを外します。
そして分離するのですが、70年も経つと古い油でなかなか剥がれないと思います^^;
壊さないように少しずつ力を入れて分離します。
B: 外れたシャッターユニット。
ここだけ羽が2枚になっています。(最後の羽をサンドイッチする感じ)
C: 外したシャッター羽をエタノールで優しく洗浄します。
力を入れると曲がって破壊しますので、くれぐれも注意してください^^;
D: 組み立てる時は裏にヘアスプレーのキャップなどをセロテープでくっつけておくと便利です!!
向きを間違えないように5枚乗せたら… (下に続きます)
⑥シャッター組み立てとガバナの問題点&取り付け
A: シャッター羽はここまで組み立てたら、最後の一枚をここに重ねて完成です。
そして清掃した絞りと組み合わせます。
今回は絞りは分解せずにベンヂンの中で「30回動かす&放置」を3回繰り返したのち、粉末ボロンを付けて完成としました^^;
とても動きが良くなったので、このまま様子をみます。
絞りが撮影時に動くカメラは露出に影響するので、絶対に分解洗浄した方がいいですが…
B: ガバナが引っ掛かって動かなくなる原因はこれでした…
ゼンマイバネが縮んだ時に綺麗にまとまらずにギヤーに引っ掛かってました。
このバネはかなり弱く、おそらくギヤのバックラッシュ(キヤ間の遊び)を無くす為に付いているのだと思いました。
(後のガバナにはギアの工作精度が上がって付かなくなったみたいです)
弄っていたら、あまりバネが縮まらない状態で組めばギヤに噛まない事が分かりました。
油は筆で薄く塗る様に塗布し、余分な油は拭きとっておきます。
C: 以上の理由で、組付け時にバネが多めにせり出す様に組付けます。
(もちろん可動メカに当たらないかチェックしておきます)
これでガバナは快調に動く様になりました。
D: シャッターレバーリングを組む時は丸印の部品を動かしながら組む必要があります。
そして組んで動きをチェックしたら、最後に①の加速バネを取り付けます。
⑦シャッターの組み立て&ストローク調整
A: シャッター速度調整リングを付ける時はこの位置で組み立てます。
そして銘板を取り付けますが、入らない時はどこかが噛んでいるので再チェックが必要になります^^;
B: シャッターボタンを押してもシャッターが切れない時はフィルム室のここを開けて調整します。
C: 貼り革がボロボロだったので、横のカバーから移殖しました(笑)
横のカバーのみオリジナルの貼り革ではありません。
D:ここでちょっと休憩。
⑧軍艦部の取り外しなど
B: ファインダー窓を外して清掃します。
そして巻き上げノブのネジを緩め、巻き上げノブを反時計回りに回して外します。
巻き戻しノブも①のAを参照にして外して下さい。
C: 黄色丸印のネジを外し軍艦部のカバーを外します。
ファインダーの二重像調整はアクセサリーシュー(フラッシュ取り付け部)を外すと2つのサービスホールがありますので、上下左右を調整します。
D: 巻き上げノブが重い時はここを外して清掃・グリスアップしますが、ここの切り欠きは組む時に必ず中のバネの先端を入れる必要があります。
それでも重い時は下のギヤとスプール(参考画像A)を外して全バラ整備が必要になります。
⑨ファインダーの清掃とヘリコイド組付け
A: 各レンズとガラスを清掃しますが、ハーフミラーは反射コーティングが脆くなっているので、絶対にエタノールなどは使わないで下さい。
避けて通るか、「FUJIFILM レンズクリーニングリキッド」で隅から様子を見ながら清掃するのがいいと思います。
二重像調整のネジはここにあるので、全てを組んでから⑧のCのシューを外し、細いマイナスドライバーでファインダーを覗きながら調整します。
B: ヘリコイドを組む時は切り欠きを通す感じで入れ、シャッターと距離計のリンクに注意しながら組み立てます。
C: ヘリコイドが入ったら大きな隙間が無いか確認してネジ4本で固定します。
D: ヘリコイドを動かして距離計とシャッターの動作をチェックします。
沈胴した時に距離計の連動ピンが写真右下の溝に入ればOK。
☆お疲れ様でした。
⑩「Hexanon 50mm/F2.8」の作例 (物撮り)
カメラはミラーレスの「ニコン1 V1」を使っています。
レンズがモノコートなので、白い背景はコントラスト低下の原因になっています^^;
(逆光の条件に近くなります)
⑪ミニカー
⑫プライズフィギュア撮影
あまり参考にならないと思いますが、ヤシカなどはとてもシャープに写っていると思いました。
レンズ構成が「ヘリアータイプ」のレンズは少ないので、その写りを堪能できるカメラの1つだと思います。
あとこのカメラの波打つフロントデザインがオシャレな「Art Deco」っぽいのも個性的でいいと思いました。
◎カメラの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、カメラの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしカメラを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【1951年に発売されたコニカ「Konica Ⅱ」を分解・清掃・修理してみました】でした!
P.S. オリンパスの映像事業撤退は悲しいニュースでした…
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