トキナ「Tokina AT-X 35-70mm F2.8 (AT-X357)」分解・清掃・作例

AT-X357 アイキャッチ トキナー・コシナ

◎とあるリサイクルショップのジャンク箱に良くある古いマニュアルフォーカスのズームレンズが転がっていました。
いつもはこうしたズームレンズをスルーするのですが、通常のズームレンズよりひと回り大きい事に気づき、手に取ってみるとそれはF2.8通しのレンズ。
1985年頃に売られていた「Tokina AT-X 35-70mm F2.8」で、 モデル名「AT-X357」でした。

しかしながら自分はつい最近までこのレンズの存在を知らなかったんですよね^^;
それもその筈、この頃のトキナレンズの高性能バージョン「AT-X」(ADVANCED TECHNOLOGY-Xの略)の記念すべき1号モデルであったにも関わらず、このレンズはそれほど売れなかったそうで、後の1988年に発売された「AT-X270(28-70mmF2.8)」が広角側を広げてヒットしたそうです。

1985年発売? 当時の価格は¥56.000 レンズ構成: 10群13枚 最小絞り: F22
絞り羽根枚数: 9枚 最短撮影距離: 0.6m フィルター径: 62mm 重さ: 510g
外寸: 81.3x67mm

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

 

①レンズのみの清掃から

AT-X357 レンズ清掃A: まず銘板を吸盤オープナーなどで外しますが、緩んでいても吸盤オープナーで押さえて回すと回りませんので、残りは指で回すと良いです^^;

B: 前群レンズユニットを吸盤オープナーで反時計回りに回して外します。
もちろん「カニ目レンチ」を使ってもいいですが、自分は傷を付けたくないのでなるべく「吸盤オープナー」を使う様にしています。

C: 前玉を固定しているリングナットを外し、前玉を外したら清掃しておきます。

D: ユニットの組み立てにはネジ止め剤が塗付してありますので、ネジ溝にエタノールを垂らして柔らかくしておきます。

②前群、後群のレンズ清掃

AT-X357 レンズ清掃2

A: ネジ止め剤が柔らかくなったら吸盤オープナーを使って前群ユニット分割します。

B: ユニットを分割するとレンズが2枚出てきますので、落下破損に注意して下さい!
(自分は落としてレンズを欠かした事がありますorz)

C: 前群(後)ユニットをカニ目レンチで反時計回りに回して取り外し、ユニットを分解して各レンズを清掃して組み立てます。
(必ずレンズの向きはマーキングしておきます)

D: ズームを35mmにして後群を繰り出し、後群ユニットを反時計回りに回して取り外しますが、スペーサーが入っているので回収するのを忘れないようにします。
各レンズを分解清掃します。

③後群(前)レンズの清掃

AT-X357 レンズ後群清掃

A: カニ目レンチでリングナットを外し、奥にあるレンズ後群(前)をレンズサッカーなどで取り外します。
しかしながら奥の貼り合わせレンズのバルサムが劣化して軟化し、固着して取れない場合がありますので、その時は外さずにそのまま清掃するのが良いと思います。
絞りを開いて前から押せば大方外れると思いますが…

B: 外したレンズを清掃しますが、奥の貼り合わせレンズ周りのベタベタバルサムはエタノールなどで拭き取っておきます。
しかしトキナーのレンズのバルサムってエポキシの匂いがしますよね^^;

レンズ清掃のみでしたら後は組み立てて作業は終了となります^^

④ヘリコイドグリス交換

AT-X357 ヘリコイドグリス

A: まずフォーカスリングを無限遠にセットし、フォーカスリングゴムを外して被写体側にあるイモネジ3個を緩めます。
位置決めマーキングの為にここから絶対にレンズを回さないように作業します。

B: フォーカスリングを取り外しますが、丸印のストッパーが引っ掛かるのでフォーカスリングを両側から挟みながら外すと良いです。

C: フォーカスリングを外したらヘリコイドに指標線と同じ位置にマーキング、そしてイモネジの打痕位置にもマーキングしておきます。
組み立てる時はまずヘリコイドを指標線にセット、そしてフォーカスリングをイモネジ位置にセットします。

D: そしてこの位置からヘリコイドを締め込み、止まる位置と止まるまでの回転角をマーキングしておきます。
このレンズは止まるまでの回転角がとても少なく、小型化の努力だと思いました…

E: 最後にヘリコイドをゆっくり慎重に外れる方向に回し、外れる瞬間の位置をマーキングしておきます。
外したヘリコイドの古いグリスを洗浄し、新しいグリスを塗って逆の手順で組み立てます。

⑤固着している絞り羽根の分解清掃

AT-X357 絞り修理

A: まずマウントのアウターリングを赤矢印の半月部分を押しながら3個のネジが見えるまで回します。
そして3個のネジを取り外します。

しかしこのレンズの反射はバルサムが弱っている時に出る模様ですね^^;
外したレンズは確かにバルサムが弱ってましたが、透明度はあったので今回は貼り直しをしませんでした^^;

B: マウント部分をちょっと浮かせ、中のリンク状態を覚えておきます。
マウントの大きい方の連動ピンが駆動する丸ピンは右側に位置します。

C: マウントの小さい連動ピンが駆動するピンは、ピンのセンターに入っています。

D: マウントを外す時にセンターに入っているピンが抜けにくい場合はズームリングを35mm側にするか、ドライバーなどで押してあげると外れます。

⑥マウント周辺の分解

AT-X357 マウント周辺分解

A: マウントを外す時にマウントを固定している各ネジの位置をマーキングしておきます。
これをやらないと、どこにネジが入るか分からなくなります^^;

B: 絞りリングを外す時は細かい部品を紛失するので注意!!
この段階に来たら焦らず透明なビニル袋の中で作業するのがおススメです^^;

C: 絞りリング周辺パーツ一覧
紛失すると大変な事になりますので、とにかく慎重に作業を進めて下さい。

D: ネジ3個を外し、マウントの下駄を外します。
赤丸部分は絞り開度調整部になっていますので触らないで下さい。

⑦ズームユニット分解

AT-X357 ズームユニット分解

A: マウントの下駄は絞り開度調整リンクがありますので、変形させないように慎重に取り外します。
組む時は絞りのピンを確実にリンクに入れて下さい。

B: ズームリングゴムを外してリングの合わせ位置にマーキングし、見えるネジを緩めてズームリングを分割します。

C: このレンズは一つの移動ズームパーツに対して2個のコロ(現在は3個のものが多いです)が使われていました。
まず溝の角度のキツい方の一方にアウター、センター、インナーそれぞれ三ケ所に縦線のマーキングをしておきます。
このマーキングは組む時にとても重要になってきます。

D: 今度は90度回して溝の角度が緩い方の一方にアウター、センター、インナーそれぞれ三ケ所に横線のマーキングをしておきます。
このレンズのコロとネジは全て同じ寸法の物が使ってありましたが、普通はどちらかが長かったりするので、違うズームレンズを作業する時は注意して下さい^^;

⑧絞りユニットの取り外し

AT-X357 絞りユニット外し

A: 中玉のマウンタを取り外しますが、固く締まったネジを潰さないように最適な工具を使って下さい。

B: これでようやく絞りユニットを取り外す事ができます^^;
しかし何やら錆びだらけ…
どうやら悲しい事に水没品だったようですorz

C: 絞り可動部を固定しているプラ部品の接着剤をしっかり削り落とします。
そして染み込んでいる接着剤を柔らかくする為にエタノールを垂らしておきます。

D: プラ部品を溝から外すように回転させて引き抜きます。
絞りがバラバラにならないよう慎重に外してください。

⑨絞りの分解

AT-X357 絞り分解

A: 絞り羽根がバラバラにならないように絞りの固定側リングを取り外します。

B: もう最悪の状態でした(汗)
おそらく高度に結露したか水没品でしょうね^^;
こうなっていると羽根が折損したりピンホール(穴)があるのは避けられません。

C: 貼り付いていた中玉はここで外しました。
トキナの古いレンズはバルサムがベトベトになっている個体が多く、レンズは慎重に取り外す必要があります^^;
レンズ周りのベトベトはエタノールで清掃しておきました。
(画像③のBはこの後に撮影したみのです💦)

D: 全ての錆を「錆取り剤」や「銅ブラシ」を使って取り除きます。
可動部は特にしっかりやっておく必要があります。

⑩絞り羽根の清掃と組み立て&ゴムリング劣化処理

AT-X357 絞り羽根清掃

A: 絞り羽根が入っている穴は右側になるので注意します。

B: 絞り羽根の清掃…
やっぱり細かいピンホールと折損が発生してしまいました^^;
実用に耐える範囲なのでこのまま組み立てる事にしましたが、いい部品取りがあったら交換しようと思います。

C: 組み立て完了した絞りユニット。
見た目は悪いけど、動きはスムーズなので良しとしました^^;
粉末ボロンをちょっと付けておくと安心です。

後はレンズを逆の手順で組み立てれば完成です☆

D: このレンズはフォーカスリングゴム、ズームリングゴム共に伸び伸びでした。
なので隅を裁断し、エタノール洗浄をしてから強力両面テープで取り付けておきました。
完成した写真は冒頭のアイキャッチ画像になります。

⑪「Tokina AT-X 35-70mm F2.8 (AT-X357)」の作例

AT-X357作例 花

絞り開放35mmの画像になります。
使用カメラはミラーレスのニコン1V1になりますので、画像隅の評価はできません^^;
解像度とボケ具合だけ参考にして頂けると嬉しいです。

⑫花の逆光撮影

AT-X357作例 花逆光撮影

曇り空ですが、割と逆光に強いのかもしれません^^

⑬ヒメジオン

AT-X357作例 ヒメジオン

70mmの開放はちょっとソフトな感じです。

⑭35mmの開放

AT-X357作例 35mmの開放

広角側の開放はソフトな感じが無くなります。

⑮モンシロチョウ

AT-X357作例 モンシロチョウ

70mm開放

⑯ポイ捨てコーラ

AT-X357作例 コーラ50mm開放

⑰田舎の景色

AT-X357作例 田舎の景色

35mm F8

⑱ヒメジオン群生

AT-X357作例 ヒメジオン群生70mm F4

⑲橋の配管

AT-X357作例 橋の配管70mm 開放

⑳雑草に覆われた道

AT-X357作例 雑草道

70mm開放

㉑水位計

AT-X357作例 水位計70mm開放

㉒プライズフィギュア

AT-X357作例 プライズフィギュア1

60mm付近 F8

㉓プライズフィギュア(バストアップ)

AT-X357作例 プライズフィギュア270mm F8

広角側は開放から良く写る感じで、望遠側の開放はややソフトに写る感じでした。全体的にコントラストはちょっと低めで、色乗りも優しく感じます。ボケは時に線が出る事もありますが、それほど五月蠅くない感じだと思います。

ニコン1の1インチセンサーはフルサイズ機の1/7くらいしかないので、このレンズをフルサイズ機で使えば画質はもっと良く感じると思います^^;
しかし最近のスマホのカメラはアクオスR6やライカみたいに1インチセンサーの物が出てきてびっくりですね~~
逆に言えばスマホもやる事が無くなってきた感もありますが^^;

 

◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)

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以上、【トキナ「Tokina AT-X 35-70mm F2.8 (AT-X357)」分解・清掃・作例】でした!

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