◎今回は1958年にネオカ株式会社が発売した「NEOCA 35 ⅣS」を分解・清掃・修理してみました。
アイキャッチ画像(作業中の写真なので一部のパーツは取り外しています)を見て頂ければどれほど酷い状態か判断して頂けると思いますが、正直言ってフォーカスリングの製作が上手く出来なかったら掲載を見送るつもりでした。
(お世辞にも上手く出来たとは言えませんが: 笑)
状態は「このカメラの顔とも言えるフォーカスリング紛失」、「貼り革は剥がれて無い」、「ⅣSのネームプレート欠品」、「メッキ剥げ剥げ」、「絞り羽根ぐちゃぐちゃ」、「レンズは汚れて使えるか不明」、「巻き上げ不可」、「シャッターボタン降りない」、「二重像動かず」というまさに最悪を絵に描いた感じでした。
自分でも良くやる気になったなぁ~、と後から思うほどです(笑)
1958年発売 ¥14.500 1眼式連動距離計ダイレクトフォーカシングシステム
レンズ「NEOKOR A.C 45mm/f2.8」 3群3枚 トリプレット型 ピントは前玉回転式
最短撮影距離:0.5mらしいです。 絞り羽根枚数:8枚 セルフタイマー内蔵
シャッター:シチズン-MV シャッター羽根:5枚 シャッター速度:B・1~1/400s
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①レンズシャッターを外し、メカ清掃注油、絞りを修理します
A:レンズシャッター部を固定しているリングナットをフィルム室側から外し、レンズシャッターを取り外しますが、この時にチャージリングレバーにバネが付いているので注意しながら外します。
そして距離計連動の細い棒も取り外しておきます。(このカメラは紛失してました)
B:前後のレンズを全て外して清掃します。
次に前のパネルを外し、矢印の部品は外れるので保存しておきます。
そして後ろのギヤからピンを引き抜き(抜く向きがあります)、ギヤとワッシャーを外し、シャッターレバーのCクリップも外します。
ギヤを駆動するレバー付のチャージリングを外します。
絞りリングの2本のネジを外して絞りリングを外し、見える4本のネジを外せば絞りとシャッターを分離する事ができます。
C:外れた「ぐちゃぐちゃになってる絞り部分」。
油で固着していたのを無理に動かすとこうなります(汗)
D:絞り羽根は一枚ずつ油を落として板金しました。
そして絞りを組み立てますが、絞り可動側の円盤は切り欠きがチャージギヤ側、ネジのナット部が平らな方がシャッター側になるので注意します。(間違えると引っ掛かって絞りがバラバラになります)
シャッター羽根は最後の一枚だけ角の無い羽根になっているので注意してください。
後はシャーターメカをベンヂンなどで洗浄し、回転部分に筆などでチョンチョンと油を塗っておきます。(特に負荷の掛かる場所はモリブデンが有効です)
絞り羽根やシャッター羽根を分解せずに外からエタノールで洗浄する場合、洗浄後に「ボロン粉末」を付けて動かしておくと良いみたいです。
②シャッターメカと絞りを組み合わせます
A:絞り可動側の円盤の位置が180度間違っていると①に見える穴に隙間があり、②のギヤ軸の穴に円盤が飛び出ているのが分かると思います^^; (そのまま組んで動かすと絞りがバラバラになります)
ここでX-M切替スイッチも取り付けておかないと後から面倒な事になるので注意します。
X-Mのピンが入っている状態は画像Cを参照してください。
B:レリーズレバーは下から押し上げてマイナスドライバーが入っている場所に組み込みます。
そしてストロボの接点に気を付けながらシャッターメカと絞りを組み合わせます。
C:X-M切替スイッチピンとバネの位置関係図です。
自分は後から入れて涙目になりましたが、そんな時のコツはカメラ側に一旦バネ先端を飛び出させて組む感じです。
D:そして絞りリングをリングと本体の間にクリックバネが挟まないように組付け、レリーズシャフトにCクリップ、チャージ軸にワッシャー、ギヤ、固定ピンを取り付けて完成です。
チャージ軸のギヤは反対側のツメとピンの位置(画像①のB参照)がズレていると入りませんので注意してください。
③軍艦部のカバーを外します
A:巻き上げレバーの飾り環は「逆ネジ」になっていますので、時計回りに回して外します。(ネオカは皆そうなっているそうです)
この時にもうレバーが取れると思って、そのままレバーを外そうとするとリターンバネが取れて面倒な事になるので注意してください。
巻き上げレバーに付いている3本のネジを取ればレバーは外れます。
B:軍艦部カバー左右のネジ合計4本を外します。
C:巻き戻しダイヤルはフィルム室の金属シャフトを固定して反時計回りに回せば外れます。(上のネジはフィルム感度メモ板用なので外さなくてOKです)
D:そして軍艦部カバーを上に引き抜いて外しますが、この時にフィルムカウンターのパーツが落ちるので気をつけてください。
更に接着剤が劣化したファインダーのレンズも脱落する事がありますので、レンズが落ちて割らないようにします。
④ファインダーの清掃・レンズボード周りの点検
A:ファインダーを清掃する時はフロントパネルも外すと作業が捗ります。
しかしながらこのカメラはファインダーレンズの接着剤が劣化しており、パネルを外すと同時に前の大きなレンズもポロッと落ちてきました…(汗)
B:それぞれのレンズやミラーを「FUJIFILM レンズクリーニングリキッド」で清掃しますが、矢印のハーフミラーはコーティングが簡単に剥がれてしまうので、隅から様子をみながらフェザータッチで清掃してください。
…と言うかハーフミラーはできればやらない方がいいくらいです。(ちょっと剥げました)
C:ファインダーの調整は軍艦部のカバーを外せばできるのですが、おそらく専用ツールが必要だと思われます。
赤丸部分は専用ツールで回して横位置調整、黄色丸部分はおそらくU字フックみたいな専用ツールを差し込んで鉄板の細い部分を曲げて上下を調整するのだと思います^^;
上下はできると思いますが、横位置は画像Dのピン部分にスペーサーを噛ますか削るかで対応するのが無難かもしれません。
D:レンズボードを外し、可動部の点検・清掃・注油を行います。
黄色丸は距離計の連動ピン、赤丸はチャージ・レリーズになります。
⑤カメラ下部の点検と紛失したフォーカスリングの製作
A:レンズボードを取り付ける時はネジの打痕に合う様にセットします。
B:カメラの下部カバーを外し、各リンク・ギヤーを清掃・注油しておきます。
三脚ネジ穴のホルダを固定しているネジは中央のみ長い物が使われていました。
C:紛失している「フォーカスリング」を作る為、自分の部屋にあるいらない物を徹底的に分析したところ、ペトリのテレコンマウントがピッタリなのを発見!!
これに他サイトさんの分解記事からフォーカスリングの仕組みに近づけるべく、テレコンのパーツをストッパー&距離計用のピンスライダーに加工製作しました。
D:無限遠のストッパーは固定、そこから距離計のピンがスムーズに移動できるようにスライダーも兼ねています。(テレコンには絞りピン用の穴が開いているので)
望遠側ストッパーは無限遠時に格納されなければならないので、後ろからバネで可動する様にしました。
また、整備時は前のネジを大きく傾ける事でフォーカスリングが外れるようにしています。(但しレンズボードを外して距離計連動ピンを抜く必要あり)
⑥無限遠調整と距離計連動ピンの調整
A:何とかカッコよくならないかとバフがけに挑戦するも失敗(笑)
B:そしてルーペ代わりの引き伸ばしレンズとフォーカシングスクリーンを付けて無限遠調整をします。
C:無限遠調整をしたら、「自作したフォーカスリング」の無限遠位置で二重像の無限遠位置が合う様に「自作した距離計連動ピン」を削って調整します。
ピンが太すぎたり、削り過ぎたりして、結局製作3本目で合格。
D:できましたよ~♪ 自作のフォーカスリング!
まだカッコ悪いけど、とりあえずミラーレスにこの「NEOKOR A.C 45mm/f2.8」を取り付けて作例を撮影してみました^^
⑦「NEOKOR A.C 45mm/f2.8」の作例
ヤマユリ f4.0
使用カメラは「ニコン1 V1」で、FDレンズのマウントにビニールテープでぐるぐる取り付けたら無限遠ピッタリでした。
ビニールテープで取り付けたので、絞りは確かf4.0固定になっていたと思います。
⑧とある丘の階段
⑨とある景色
後から気づいたんですが、レンズをビニールテープで固定した為にレンズ本体が僅かにちょっと傾いてました(汗)
⑩雑草の雨露
⑪アサガオ?
3枚玉のトリプレットですが、良く写るのでびっくりです。
いったいどこがこのレンズを製造したのでしょうね。
ひょっとしてこれもズノー光学工業株式会社だったりして…
そんな訳ないかな(笑)
でもネオカと共倒れしたズノー以外にわざわざ発注する事があるのかなぁ~とも思ったりします。
そんなズノーもヤシカに吸収されました。
⑫物撮り(プライズフィギュア)
確かf5.6くらいで撮ったと思います^^;
⑬物撮りB(プライズフィギュア)
62年前のレンズですが、とても良く写るのでちょっとサプライズでした^^
あとこのカメラの説明書をネット上で見る事ができますが、ページ数は確か24ページで、今見るとかなり不親切な内容でした^^;
⑭最後にこのカメラが仕上がった姿をお披露目(汗)
A:前玉枠とフォーカスリングは無限遠の位置で接着してしまいましたが、①を外し、②の距離計連動ピンを外し、フォーカスリングのネジ頭を右に倒せばフォーカスリングを外す事ができます。
今思えば前玉枠にはフィルターを取り付けれるネジ溝があるので、それを使ってフォーカスリングに前玉を固定する様に改良する事も可能です。
そして残りの画像はこの「NEOCA 35 ⅣS」の完成した姿になります。
まだフォーカスリングの前に銘板を付ける予定ですが…(笑)
今回の整備はとても大変でしたが、楽しくもありました^^
◎カメラの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、カメラの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしカメラを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【部品欠品、ボロボロなネオカ「NEOCA 35 ⅣS」を分解・清掃・修理してみました】でした!
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