◎今回はひょんな事から手に入れたフイルムマガジン無し(汗)のヤシカ「YASHICA-16(Y16)」を分解・清掃し、外したレンズ「YASHINON F3.5/25mm」を1インチミラーレスカメラで使ってみました。
正式名称は「Y16」ではなくて「ヤシカ16」で、お洒落なツートンカラーはフロントパネルの色が全部で5色(ゴールド、珊瑚、深紅、グレー、チャコールグレー)選べたそうです。
当時の取扱説明書を見ると「隠し撮りのテクニック」などの説明があったり、巻き上げは「巻き上げダイヤルと本体底部を手で挟んで本体を回す」と書かれていたのには驚きました(笑)
ただY16はフィルムマガジンへのフィルム装填が難しいらしく、新しく1964年に発売された「Yashica 16EE」をカートリッジ式にしたのですが、ミノックスマガジン機「Yashica Atoron」の発売を期にヤシカは16mmから撤退したらしいです。
自分が思うにこのヤシカ16のフィルムマガジン無しの中古が多く出回っている理由は、オーナーさんが外したマガジンを暗室に置いてそのまま時間が流れてしまうケースが多かったのだと思いました…(遠い目)
1959年発売 当時の価格は¥4.700(革ケースは¥250)
フィルム: 16mmクリップロードマガジン 外寸: 35x105x51mm 重さ: 300g
レンズ: 固定焦点式 3群3枚 トリプレット構成 YASHINON F3.5/25mm
シャッター速度: S(Slow)・1/25・1/50・1/100・1/200秒
フィルム巻き上げ: ボディノッブ式 順算式枚数計
ファインダー: 逆ガリレオ式 0.45倍 48頁「Y16写真術」添付
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①フロントパネルの取り外し
A: まず「Y16」と書かれたプレートを外すのですが、ここは接着剤がガチガチに流し込まれていますので、隙間からしっかりエタノールを時間かけて染み込ませる必要があります。(画像は接着剤を削り落とした後になります)
接着剤が柔らかくなったら極細マイナスドライバーを少しずつ隙間に入れてプレートを剥がし、中の接着剤を削り落としてからナットを外します。
B: ファインダー側は爪で固定されていますので、シャッターボタン側からフロントパネルを外します。
この時にシャッターボタンが脱落しますので紛失しないようにして下さい。
C: 一応、シャッターボタンには向きがありますので注意して下さい。
D: ストロボのシンクロ端子を反時計回りに回して外します。
②ケースから内部メカを取り出す手順
B: 外した部品はパートごとに100均のジッパー付き小袋に保存するのをおススメします。
そして今度は巻き上げダイヤルに付いているYマークのプレートの隙間にエタノールを流し込んで接着剤を柔らかくします。
C: 極細のマイナスドライバーでYマークプレートを慎重に剥がしたらダイヤルを固定している逆ネジを時計回りに回して外します。
D: 巻き上げダイヤルを外すと厚いワッシャーとリンクがありますので取り外します。
巻き上げダイヤルを取り付ける時はリンクの凸部分を巻き上げダイヤルの凹部分に入れて組み立てます。
③ケースから内部メカの取り外し
A: リンクを外すと今度は薄いワッシャーがありますので取り外します。
B: ストラップホルダーを固定している2個のネジを取り外し、ストラップホルダーを奥に押し込みますが、この時にシャッター速度ダイアルを右にいっぱい回しておく必要があります。
C: ストラップホルダーをケースに引っ掛からない位置まで押し込んだら、慎重に内部メカを引っ張り出します。
D: この時まれにファインダーの接眼レンズが外れる事がありますので紛失に注意して下さい!!
④ファインダーの清掃とフラッシュ接点の取り外し
A: 内部メカをケースから取り外した状態だとリンクプレートが浮いてここのピンが外れるので、組み立てる時とシャッターの空打ちに注意して下さい!
特にここが外れたままシャッターの空打ちをするとシャッター幕が破損します!!
B: ファインダーの対物レンズは嵌めてあるだけなので、取り外して清掃します。
接眼レンズは接着してありますので、このままクリーナー液を付けた柔らかい綿棒などで清掃します。
C: 接点と銀色のSSプレート押さえバネの位置関係を良く観察するか写真を撮っておきます。
D: 特にSSプレート押さえバネは組む時に位置調整が必要になるので良く観察するか写真を撮っておいて下さい。
⑤接点パーツの順番とレンズの取り外し
A: パーツの順番はネジ2個→絶縁プラ→線の付いたメイン接点→絶縁プラ→プレート押さえバネ→可動接点になります。
B:まずレンズに付いている絞りリングを外しますが、組み立て時にここのイモネジを締め過ぎるとリングの動きが固くなるので注意して下さい。
そしてレンズを外すにはまず長いバネを外します。
次に固定している4個のネジを外すのですが、左上のネジにはシャッターボタンストローク調整用の偏心ワッシャーが入っていますので、位置マーキングをしてから外してください。
C: 偏心ワッシャには長いネジが使われていますので、組み立てる時に注意して下さい。
D: 前群ユニットを外してレンズを清掃します。
今回は前玉の後ろと中玉の前には汚れが無かったのでスルーしましたが、万が一ある場合は前玉の押さえリングを外して清掃可です。
⑥後玉の清掃とシャッター幕の取り外し
A: 後玉は押さえリングを外して取り外しますが、必ず向きをマーキングしてから清掃しておきます。
もし向きを間違えると物凄く周囲が流れる画像になります^^;
B: シャッター速度調整ダイヤルは固定している2個のネジとクリックバネを取り外す事で簡単に外れますが、リンク先端のコロが組み合わさる場所だけはしっかり写真を撮っておいて下さい。
あと丸印のここは油で固着している事があるので、軽く動く様に注油しておく必要があります。
C: シャッター幕を外す為にファインダーを取り外しますが、外す時に赤矢印のレバー類が引っ掛かりますので、各レバーを動かしながら外すと良いです。
D: シャッタースピード調整リンクを下にどかし、シャッター後幕のバネを外し、シャッター後幕をスライドさせて取り外します。
⑦シャッター先幕の取り外しと組み立ての注意点
A: シャッター先幕に付いているバネを取り外し、シャッター先幕をスライドして取り外します。
B: 外したシャッター幕やシャッターが擦れる部分を清掃し、気になるならボロン粉末を塗布して組み立てると良いです。
あとは逆の手順で組み立てれば完成です^^
C: 組み立ての注意点は…
絞りリングのイモネジは締め過ぎない。
メカをケースに入れる時にリンクプレートのピン(画像④のA)が入っているか確認。
巻き上げダイヤルのネジは逆ネジです。
シャッターボタンには向きがあります。
シンクロ接点の配線はレンズ鏡筒の溝に入れないとケースに入りませんので注意して下さい。
…の以上です!
⑧外したレンズのお手軽固定方法(あまりおススメできません💦)
A: 今回は16mmフィルムの大きさに良くマッチングする1インチセンサーのニコン1を使ってみました。
16mmフイルムの感光面が10.26×7.49 mmで、1インチセンサーは13.2×8.8mmになります。
レンズの固定は引き伸ばしレンズのヘリコイドに「吸盤オープナー」でレンズを固定するお手軽マウントですが、あまりおススメできません💦
B: ヘリコイド部分を外して中のレンズ基部を回すと絞り調整ができます。
ちょっと面倒ですけど、レンズの傾きもチェックできます^^;
⑨「YASHINON F3.5/25mm」の作例
タンポポを開放F3.5で撮影しています。
⑩川の土手に咲く花々
手前の花々にピントを合わせ、開放F3.5で撮影しています。
⑪ぐるぐるボケ
開放F3.5
⑫フィギュアを入れて撮影してみました
開放F3.5
被写体は「バンプレスト一番くじプレミアム アイドルマスター PART1 D賞 双海真美」
⑬川辺の景色 (2021/04/26画像更新)
以前の画像はF5.6ではちょっと無理があったので、今回はF8.0まで絞りました。
⑭景色をバックに花を撮影
開放F3.5
⑮車両通行止め
⑯寺
開放F3.5 (2021/04/26画像更新)
開放だと周囲がちょっと流れます。
1インチセンサーが16mmの感光面よりも大きいのと、トリプレット構成はレンズ周辺が流れやすいのも原因の一つと思われます^^;
レンズを再分解してレンズの向きをチェックし、マウントに対するレンズの傾きも修正して撮り直しましたが、結果は同じでした。
景色を開放で撮る人はいないと思うので参考程度にしておいて下さい^^;
⑰ハルジオン
開放F3.5
⑱物撮り(ねんどろいど)
開放F3.5
周辺減光とボケの流れが目立ちますが、ピントが合っている場所はトリプレット構成らしくシャープです。
⑲ねんどろいどF8.0
F8.0
⑳MD ZOOM
開放F3.5
㉑プライズフィギュア
開放F3.5
㉒プライズフィギュアF8.0
F8.0
㉓プライズフィギュア(バストアップ)
開放F3.5
「YASHINON F3.5/25mm」はトリプレット構成の特性である「中央はシャープで周辺のボケが流れやすい」と言う典型的な写りを楽しめました。
固定焦点の設計ならではの癖のある写りなのかもしれません^^
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【ヤシカ「YASHICA-16(Y16)」の分解・清掃・ミラーレスカメラでの作例】でした!
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