◎今回はそれほど見かけないと思ってリサイクルショップのジャンク棚から救出したミノルタの「MINOLTA TELE ROKKOR-QE 200mm f5」を分解・清掃してみました。
1964年製だったので、あの剥がれやすいアクロマチックコーティング(AC)は使われてないと思ったのですが、光を当てたら緑色に反射しました…^^;
アクロマチックコーティングの清掃に関しては絶対にエタノールやクリーニングペーパーを使わず、奇麗ならスルーをするか、もし清掃するのであれば脂を落とした指に中性洗剤を付けて水を流しながら優しく撫でる感じで清掃するしかありません💦。
1964年発売 画角: 12.3°(35mm full frame) マウント: ミノルタSRマウント
レンズ構成: 4群5枚 絞り:プリセット絞り 最短撮影距離: 2.5m
フォーカシング: マニュアル 重さ: 430g 外寸: 56x149mm
フィルター径: 52mm 絞り羽根枚数: 9枚 最小絞り: f22
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①まずレンズ本体を分割します
A: マウントを外すので、固定している4個のネジを外します。
B: マウントには電気&機械的接続は一切ありませんので、そのまま外せばOKです。
C: レンズ側とヘリコイド側を分割する為に矢印のリングナットをカニ目ツールなどで反時計回りに回して外します。
D: こんな感じでレンズ側とヘリコイド側で分割できました。
②前玉の取り外しと清掃
A: 分割の位置合わせはこうなっていて、右側のカラー(固定されていないので、この時点で外してもOKです)の溝は前側の溝が浅くなっています。
B: 前玉はアウターカバーを外した方が作業性が断然良いので、3個のネジを外してカバーを外します。
C: 前群ユニットを外し、銘板を外すと前玉が外れますので清掃します。
(固くて外れない時はネジ溝にエタノールを染み込ませて数分待ってから作業します)
D: 前群ユニット内のリングナットをカニ目ツールで外し、前玉2枚目を外して清掃します。
ここのレンズ貼り合わせ部分がベトベトしていたらバルサムが劣化し始めていますので、清掃時の多量のエタノールは避けた方が無難です^^;
③注意が必要な中玉と後玉の清掃
A: 中玉に光を当てると緑色に反射したので、おそらく剥げやすいアクロマチックコーティングだと思われます。
B: レンズ表面に触れない様に外します。
エタノールやクリーニングペーパーを使うと一撃で剝げますので、奇麗ならスルーをするのがおススメです^^;
もし清掃するのであれば脂を落とした指に中性洗剤を付け、水を流しながら優しく撫でる感じで清掃し、最後に水をブロアで吹き飛ばしてください。
C: 後玉も光を当ててみると緑色に反射しましたので、中玉と同じ要領で外します。
D: 後玉の清掃も中玉と同じ要領で行います。
組む時は向きを間違えない様にして下さい。
(レンズの向きはアイキャッチ画像左下の構成図を参考にして下さい)
レンズ清掃のみなら、後は組み立てて作業は終了です^^
④ここからは絞り羽根の清掃になります
A: 指標基準点が付いているリングのイモネジ3個を外します。
B: ここは緩めるだけでは次の作業に入れないので、ここのイモネジを完全に外す必要があるのですが、これが固くて苦労するんですよね💦
ラスペネ(浸透潤滑油剤)などをネジ山に染み込ませ、タップをかける感じで締めて緩めるを繰り返しながら外すと良いです^^;
ネジを潰すとドリルで削るしかありませんが、ここは指標基準点の固定だけなので神経質になる必要は無いと思います。
C: プリセットリングのクリックボールが入っているネジを外しますが、中に小さなボールとスプリングが入っているので、透明な袋の中で作業するのがおススメ!
D: 外すとこんな感じでボールが入っていますが、スプリングはグリスの粘度で落ちてこないと思います。
⑤絞りユニットの取り出し
A: 指標基準点のリングを前方へずらし、隠しネジを3個取り外します。
この時に基準点リングが傾いてやりにくいので、プリセットリングを回しながらスペースを開けると良いです。
B: 部品を画像の番号順に外します。
C: 絞りの回転部分を押さえるリングは3カ所のイモネジで固定されていて、ここは位置マーキングする必要はありません。
D: まず絞り駆動ピンを開放側にし、絞り駆動ピンの位置をマーキングしておきます。(画像では絞っている方の位置です)
そして絞り駆動ピンを外し、押さえリングの3個のイモネジを緩めて押さえリングを外します。
次に絞り駆動リングを外し、絞り羽根も外します。
⑥絞り羽根の清掃
A: ①は可動部の押さえリング、②の可動部は外す時に開放位置での位置マーキングをしておきます。
③の絞り羽根はとりあえずベンジンなどに漬けておくと、固着乾燥したグリス成分が溶けやすくなります。
絞りを分解したら、絞り可動部全てのパーツの油脂を清掃します。
B: 絞り羽根には向きがあるので注意して下さい。
C: 羽根を清掃する時は綿棒を一方通行で動かさないと、羽根を曲げてしまうトラブルに遭いやすいので注意してください^^;
あとこの形状の絞り羽根はグリスが付着していると変形破壊し易いので、できれば清掃しておくと安心ですし、動きが凄く良くなります。
絞りを組む時は最後の3枚がちょっと辛いですが、頑張って下さい^^;
D: 組む時の注意点として、指標基準点リングは凹みがある方がフロント側になります。
⑦ヘリコイドグリス交換
A: まずフォーカスリングを無限遠∞の位置にセットします。
そしてフォーカスリングを固定している3個のネジを外し、フォーカスリングを外します。
B: この時点で無限遠の位置でのサブヘリコイドのクリアランスは3.8mmでした。
C: 無限遠の位置でのサブヘリコイドとメインヘリコイドの位置関係はほぼツライチです。
D: このレンズは直進キーが2つあり、見えるキーはそのまま外し、隠れているキーは固定ネジを外します。
⑧ヘリコイドグリス交換の続き
A: 次に外側のサブヘリコイドをつまんで、中のメインヘリコイドと同時に回して外します。
この時の外れるまでの回転数は約13.5回転で、外れる瞬間の位置をマーキングしておきます。
またこの時に短い方の直進キーも落ちてくるので回収しておきます。
B: 次にサブヘリコイドからメインヘリコイドを外しますが、回転角は少ないので、必ず外れる瞬間の位置をマーキングしておいて下さい。
(組み立てる時はマーキングの位置で入れてサブヘリコイドとツライチにします)
C: 各ヘリコイドの古いグリスをブラシにベンジンや灯油を付けて洗浄し、新しいグリスをブラシなどで塗付します。
後は逆の手順で組み立てます。
D: 組み立てる時に短い方の直進キーはヘリコイドを半回転させて、この様に大きい方の直進キーの穴からセットすると良いです。
因みに大きい方の直進キーをネジで固定する時はキーを内側に押さえながらネジを締めると良いと思います。
(そのままネジを締めると直進キーのレール当たりが強くなり、ヘリコイドが重くなる可能性が高くなります。)
お疲れ様でした!
⑨「MINOLTA TELE ROKKOR-QE 200mm f5」の作例
使用カメラは1インチセンサーのニコンワンV1の手持ち撮影なので、参考程度にしておいて下さい^^;
絞り値はほとんど忘れてしまったので、雰囲気で感じ取って頂けると嬉しいです。
(確か絞り開放の画像が多いです)
⑩桜
⑪桜(アップ)
⑫ムスカリ
⑬桜と忠魂碑
⑭花筏
⑮野に咲く花
⑯物撮り(meisupii-S3) 絞り開放
⑰物撮り f8
⑱物撮り ポケモン
近距離なら開放から割とシャープに写ります^^
遠距離になるとちょっと収差が出ますが、絞ればそれなりに改善される感じでした。
いつか手ブレ補正付のフルサイズ機でまた撮り直してみたいと思います。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【ミノルタ「MINOLTA TELE ROKKOR-QE 200mm f5」分解・清掃・作例】でした!
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