◎今回は以前から気になっていたペンタックスの小型のFズームレンズ「smc PENTAX-F ZOOM 35-105mm F4-5.6」を分解・清掃し、作例を載せてみました。
Aレンズの「SMC PENTAX A ZOOM 35-105 mm F3.5」と違って小型化を目指した為にF値が犠牲になっていますが、無理をしていないズーム倍率なので画質はなかなか良いみたいですね^^
もちろん買ったのは酷いカビジャンクレンズですが、いきなり結論から言ってしまうと、このレンズに関しては酷いカビジャンクレンズを買うのはあまりおススメできません^^;
何故ならこのレンズは前玉を除く全てのレンズがアルミニウム枠による鉄カシメの為に、かなり困難な作業を強いられる事になるからです(汗)
1988年発売~1989年生産終了 回転式ズーム・オートフォーカスレンズ
マウント: Kマウント レンズ構成: 12群14枚 絞り羽根枚数: 5枚
最小絞り: F22-32 最短撮影距離: ズーム全域1.4m(マクロモード時: 0.25m)
フィルター径: 58mm(純正フードRH-B58mm) 外寸: 72x71mm 重さ: 345g
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①レンズ前群を外していきます
A: まずレンズ前面に貼ってある化粧シールを外しますが、再利用するのならドライヤーで温めながら変形しないように剥がす必要があります。
でも恐らくそれは無理なので、残った糊を綺麗にしてシールを廃棄した方が見た目は良くなると思います^^;
再利用して見た目が悪ければ、レンズガードやUVフィルターを付けるのがいいと思います。
B: レンズ位置決めの参考する為にフィルター枠とレンズのカニ目の部分に位置マーキングをします。
このフィルター枠パーツはレンズ前群を外すと簡単に外れてしまうので、フィルター枠とレンズ本体にも位置マーキングをしておきます。
C: 押さえリングにある3個のイモネジを緩め、押さえリングを反時計回りに回して外します。
D: 押さえリングには大きな銅ワッシャが入っているので、それも外します。
②レンズ前群の清掃
A: フィルター枠を本体側にずらしてレンズ前群を外しますが、外れる瞬間の位置がとても大事になりますので、外れる瞬間の位置をマーキングしておきます。
B: 前玉を固定している押さえリングを外し、前玉を外して清掃します。
C: 前群の後ろレンズはフレアカッターを外すと清掃が楽になります。
因みに後ろレンズは嵌め殺しになっているので外す事ができません^^;
D: フレアカッターはこんな感じで3つの爪で固定してあるだけなので、部品を歪ませれば簡単に外れます。
③中群前のレンズ外し
A: カニ目ツールなどを使って中群前のレンズユニットを反時計回りに回して外します。
B: レンズユニットには銅製のスペーサーが入っているので無くさない様にしてください。
レンズを清掃しますが、このユニットはレンズが嵌め殺しになっている為に、もし中にカビが生えていたらレンズにマスキングをして固定枠をリューターで削ってレンズを取り出す必要があります^^;
幸いこのユニット内部にはカビがありませんでした。
C: フィルター枠パーツはつまむ感じで引っ張れば簡単に外れますが、フィルター枠パーツ下の爪が入る位置のマーキングだけは忘れないで下さい。
D: もしフレアカッターを外す時は絞りピンストッパー(右のネジ)を外す必要がありません。
④後玉とマウント外し
A: 後玉だけの清掃ならフレアカッターを外せばアクセスできます。
中群後ろは中のズームユニットを外さないと外す事はできません^^;(画像⑥へ)
B: カニ目ツールを使い、後玉を外して清掃しますが、もし内部にカビがある場合は嵌め殺しを削ってレンズを取り出す必要があります^^;
実は僅かなカビがあったのですが、リスクを考えてここは削らない事としました。
C: マウントを外す前にFレンズはピン接点の高さが1番と4番が高いので注意してください。
D: マウントを外す為に5個のネジを外します。
この時にフレアカッターは取り外さなくても大丈夫です。
⑤電子接点と絞りリングの取り外し
A: マウントを外すと接点だけでなくアース用のバネも入っているので無くさずに回収します。
注意点として接点はバネと簡単に分離してしまうのと、ピンの1番と4番は長いのでマーキングをしておくと良いです。
B: 絞りリングは外さなくても作業はできますが、もし作業中に外れるとクリックボールやバネを紛失するので前もって外しておくと安心です。
C: 絞りリングを外す時は部品が飛び出す確率が高いので、必ずビニルの中で作業して下さい。
D: 絞りリングを外すと取れる部品。
バネとクリックボールを組む時はグリスをちょっと塗ると作業が捗ります。
⑥ズームユニットの取り外し
A: まず絞り伝達ピンを位置マーキングしてから取り外します。
この時に必ずピンが入っている奥の場所を確認しておきます。
B: そして中のズームユニットを固定しているネジ3個を取り外します。
C: そしてゆっくりズームユニットを引き出しますが、この時にズームリングと連動する位置を確認しておいて下さい。
D: ついでに鏡筒内部にある電子接点を接点復活剤などで綺麗にしておくと安心です。
⑦中群後ろの取り外し
A: ズームユニットにある2個のネジ&コロを取り外します。
B: そして後玉動作用のパーツを位置マーキングしてから取り外します。
C: ここまで分解してようやく中群後ろを取り外す事ができます^^
D: しかしながら中群ユニットもレンズは嵌め殺し…
レンズをマスキングして固定枠をリューターなどで削るのが理想ですが、今回はちょっと荒いやり方をしました^^;
固定枠の金属はかなり薄く、先を鋭利にしたマイナスドライバーを隙間に入れ、下向きに広げる感じで差し込みます。
これだとレンズが割れる確率が高いので、おススメはリューター研磨です^^;
注意点として、決してドライバーを回して広げない事です。
とにかくプラスチックを溶かして固定しているレンズの方がまだリスクが低く、このレンズのカビジャンクはおススメできません^^;
⑧中群後ろレンズの清掃と絞り羽根チェック
A: レンズとスペーサーを取り出す時は必ず向きマーキングをして下さい。
そして各レンズを清掃して組み立てます。
B: カシメ直す時はプライヤーなどで挟まずに曲面部分で押す感じが良いです。
実は最初プライヤーで挟んでいたら、レンズの角がちょっと欠けてしまいました…(汗)
アルミニウム製で柔らかいので、押すだけで十分でした^^;
しかし見た目がみっともない感じになるのは仕方ないですね…
C: 絞り羽根の動作が悪かったり、油が滲んでいたら分解清掃する必要があります。(特にAFだと露出が暴れます)
今回は問題が無かったのでスルーしました。
D: もし絞り清掃の為にズームユニットを分解する時は、ここの調整だけはマーキングして厳守して下さい。
(おそらくバックフォーカス調整だと思います)
後は逆の手順で組み立てて完成です^^
⑨ペンタックス「smc PENTAX-F ZOOM 35-105mm F4-5.6」の作例
35mm F7.1
カメラはAPS-Cセンサーのペンタックス「K-x」を使っています。
⑩雑草
105mm F5.6開放
⑪川の欄干
105mm F5.6開放
⑫街の一角
35mm F8.0
⑬ライダー像
43mm F6.3
⑭ライダー像(ヘアー)
105mm F6.3
⑮逆光撮影
105mm F7.1
割と逆光には強い感じです。
⑯クレーンメカ
105mm F7.1
⑰サッカーゴール
105mm F5.6開放
⑱食べてます(笑)
35mm F7.1
⑲物撮り(プライズフィギュア)
105mm F11.0
⑳物撮り(マクロモード)
105mm F7.1
このレンズはズーム倍率を無理していないのもあって良く写りますね^^
「SMC PENTAX-F 35-135mm F3.5-4.5」も持っていますが、写りはこちらの方がいい感じがしました。
ただ、35mm側でマクロモードは使えずに最短撮影距離が1.4mもあるので、被写体によっては不便を感じる事もありました。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【「smc PENTAX-F ZOOM 35-105mm F4-5.6」分解・清掃・作例】でした!
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