◎今回はリサイクルショップのジャンク棚に置いてあったペンタックスの「smc PENTAX-DA 50-200mm F4-5.6 ED」を分解・清掃してみました。
もちろんカビジャンク品で、DAレンズを持っていなかったというのも購入に至った経緯であります^^;
簡易防滴のWRではありませんが、マウントは金属製ですし、DAエンブレムも立体のメッキパーツでゴージャスな仕上がりだと思いました。
2005年6月発売 価格はオープン価格なので不明 レンズ構成:10群11枚
開放絞り値:F4-5.6 最小絞り:F22-32 画角:31.5-8.1°
絞り羽根枚数:6枚 最短撮影距離:1.1m 最大撮影倍率:0.24倍
フィルター径:52mm 外寸:66.5×78.5mm 重さ:255g
当時のメーカーの説明文
「76.5~306mm相当の望遠4倍ズーム●EDガラスを採用した高性能光学系●ペンタックスデジタル一眼レフカメラ専用のDAレンズ●新AF/MF切り替え機構を採用●フードにPLフィルター操作窓を設置●300mm相当の望遠で4倍ズームの小型軽量レンズ●Quick-Shift Focus System。AFで合焦後、ピントリングを回せば直ちにMFに移行。切り替え操作の手間がなく、スムーズに操作できる」
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①それでは前群レンズから分解・清掃していきます
A: いきなりですが、フォーカスリング&ズームリングのグリップゴムを外す必要はありませんでした(汗)
折角なので要らなくなった歯ブラシと中性洗剤で手垢を落としておきました。
B: まず銘板シールを剥がしますが、これは極薄の鉄板を曲げた物を差し込んで剥がすのが理想です。
それでも失敗してちょっと傷付いちゃいましたけどね^^;
C: シールを剥がすとネジが4個見えますので、前群ユニットに位置マーキングをしてから取り外します。
D: やっぱりか…
現代の廉価版ズームのレンズ固定は決まって「プラスチック枠を溶かしてレンズを固定するレンズの熱カシメ(パルスヒート接合)」なんですよね^^;
カビがレンズの表なら問題ないのですが、決まって中なんですよね(汗)
②このレンズの熱カシメ部は薄かったのでヘラを使いました
A: 前側の熱カシメ部をボロボロにするのはみっともないので、まず後ろから攻めます!
このレンズは幸いレンズを熱カシメ固定している部分が薄いのに気づきました。
そこでプラスチック製のヘラを使い、カシメ部分を持ち上げていきます。
B: カシメ部の持ち上げが終了したら、外すレンズの向きをマジックなどでマーキングしておきます。(後からエタノールで拭きとります)
しっかり本体をドライヤーで温めたら、外れたレンズを受け止める為の「吸盤オープナー」と組み合わせ、レンズを落とすようにポンポン下に優しく叩きます。
C: レンズが取れました。
D: 外れたレンズを清掃します。
が! ここで前玉1枚目と2枚目の間にもカビが繁殖しているのを発見(汗)
前の溶着を痛めるのは見た目がみっともなくなるので避けたいですよね^^;
結局、後ろからレンズを外したのが功を奏す事に。
③前玉の取り外し
A: なるべく熱カシメ部を割らないように隙間を広げる感じでヘラを一周通します。
そして一枚目のレンズは向きが非常に分かりにくいので、必ずマーキングしておきます。
B: 再びドライヤーで本体を加熱したら、レンズを落とす場所にクッション材を敷き、クリーニングペーパーを巻いた指でレンズを後ろから押します。
割と軽い力で抜けると思いますが、なかなか抜けない時は更にカシメ部を広げ、ドライヤーで温めて再チャレンジします。
C: 外れたレンズを清掃したら、再びドライヤーでレンズ枠を温めてレンズを組み込みます。
D: レンズを組み込んだらカシメ部をドライヤーで温めながらヘラで強く押し、レンズをしっかり固定します。
これは一見、強度に不安を感じるかもしれませんが、後ろから押してもなかなか外れませんでした。(もちろんカシメ部がしっかり残っている場合に限ります)
それでも不安な時は過熱したマイナスドライバーを押し当てる方法もあります。
今回は誰が見てもレンズを前から外したと思えない仕上がりになりました^^;
④マウント部の分解
AB: まずフレアカッターを取り外しますが、画像Bのネジは絞りピンのストッパーになりますので外さないで下さい。
C: マウントを外すと電子接点5個&アース用バネ1個がありますので、無くさないように回収します。
特に電子接点は接点とバネが分離して飛んでいく事があるので注意して下さい^^;
そして絞りのリターンスプリングの左側を外し(右は接着されています)、絞り伝達リングを外します。
D: そして外周4個のネジを外し、内周4個のネジも外しますが、内周のネジを緩めると、鏡筒とマウント基部の間のスペーサーが脱落するので気をつけて下さい。
(画像⑤のA参照)
⑤鏡筒の分解
A: 鏡筒とマウント基部の間に入っている厚みの違う2種4個のスペーサーを回収します。(組み込み方は画像⑨を参照してください)
B: ここでズームの電子接点を位置マーキングして取り外しておきます。
自分は最初、外さなくても大丈夫だろうと思っていたのですが、鏡筒を分離するとズームリングが過回転して接点が曲がってしまいました^^;
もし接点が折れたりすると、露出が狂う可能性があります。
C: ズーム駆動伝達パーツを外します。
D: 鏡筒インナーとアウターの位置関係をマーキングし、鏡筒を分離します。
三カ所の爪部分は鏡筒を傾けながら外せば分離できます。
この時に外れた鏡筒のインナーはどこも動かさないで下さい。
⑥鏡筒の分解(続き)
A: 外した鏡筒インナーの部品の位置関係(黄色丸)を全てマーキングします。
黄色丸(大)はアウターとの位置関係をマーキングします。
できれば写真を撮っておくと保険になります^^;
B: そしてヘリコイド部を外しますが、外れる瞬間の位置が重要になりますので、しっかりマーキングしておきます。
この時にアウターチューブの位置関係もマーキングしておきます。
C: アウターチューブを外れる位置まで回して外します。
D: そして盲蓋になっている黒いシールを薄い鉄板などを入れて剥がします。
⑦中玉の清掃とレンズ後群の取り外し
A: 黒いシールを剥がすとネジが3個あるので外しますが、念のためレンズユニットが入っている位置は確認しておいて下さい。
B: そして中玉ユニットを外し、レンズを清掃します。
幸いこの中はカビてなかったですが、もしカビがあったら上記の方法で2群3枚のレンズを取り出して清掃するしかありません。
C: レンズ後群はそのまま引っ張れば抜けてきますが、入っている位置と溝は確認しておいて下さい。
D: レンズの後玉を固定しているネジを外しますが、ここは小さなワッシャーが入っているので紛失に気をつけて下さい!
あとここは調整されていますので、必ずレンズの取付位置も厳守して下さい。
⑧レンズ後群の清掃
A: これが入っている小さなワッシャーで、紛失に注意してください。
B: 後玉レンズは2枚入っていますが、ここは厳密に調整されている可能性があるので分解はマーキング&写真撮影が必須になります。
今回はカビが無かったので、レンズの表だけ拭いて終了としました。
C: レンズ後群(前)を絞りを開いて清掃し、中の後ろも清掃しておきます。
もしここにカビがあったら絞りも分解しないといけないので難作業となります^^;
今回は幸いカビはありませんでした。
D: 絞りはちょっとでも油浸みがある場合、AFだと露出が狂うので要清掃です^^;
今回は参考でちょっとだけ分解しました。
後は逆の手順でマーキングに従って組み立てれば完成です。
⑨スペーサーの入れ方
レンズの組み立て時にマウント基部のネジを締め込まない状態でスペーサーをピンセットで入れればOKです。
それぞれの場所にまず厚い方から入れたら、薄い方を入れてネジを締め込みます。
お疲れ様でした!
⑩「smc PENTAX-DA 50-200mm F4-5.6 ED」の作例
使用カメラはAPS-Cのペンタックス「k-x」を使いましたが、「レンズ収差補正」をONにするのをすっかり忘れています^^;
63mm f8.0 1/100 iso400
⑪美術館
50mm F8.0 1/100 iso400
⑫終わりかけの紅葉
⑬ポケふた「ニョロモ」
115mm F7.1 1/60 iso400
⑭公園のすべり台
50mm F7.1 1/50 iso400
⑮噴水の一部
180mm F5.6 1/50 iso400
⑯ポケふた「ゼニガメ」
58mm F8.0 1/80 iso400
全国に設置されているポケモンのマンホール「ポケふた」の記念すべき100枚目はここ町田にあります。
でも見てると子供達がマンホールをゴール地点にして遊んでいるので、痛むのも早そうでした(笑)
⑰町田市の夕暮れ
50mm F8.0 1/160 iso400
⑱物撮り「ディフォルメフィギュア」絞り開放
138mm f4.5開放 1/160 iso200
絞り開放ではちょっと周辺減光が気になりますが、小型のレンズでは良くある事ですね^^;
⑲物撮り「ディフォルメフィギュア」f8.0
138mm F8.0 1/100 iso200
⑳物撮り「ディフォルメフィギュア」前ボケ
138mm F8.0 1/125 iso200
PENTAX-DA 50-200mmは写りも良く小型軽量で機動力があり、広角端が50mmから始まるのも使い易くていいですね~
開放では周辺減光を生かした撮影をするのもいいかもしれません。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【ペンタックス「smc PENTAX-DA 50-200mm F4-5.6 ED」分解・清掃・作例】でした!
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