◎今回はそれほどカビの発生していないカビジャンクレンズ、ミノルタ「MINOLTA MC ROKKOR-PF 50mm f1.7」を分解・清掃し、作例を載せてみました。
この時代のミノルタROKKORレンズの酷いカビジャンクレンズはあまりおススメできません^^;
何故ならこの時代のROKKORレンズは少しでも触れると簡単に剥がれてしまう「AC アクロマチックコーティング」が前玉や後玉の裏面、中玉などに採用されているからです。
とにかく拭く時は絶対にエタノールを使わず、油を落とした指などに中性洗剤を付けて水を流しながら優しく洗うのがベストだと思っています^^;
今までの経験でエタノールやペーパーを使うと高確率で削れます。
コーティング面は光を当てると「緑色」に反射するので分かると思います。
☆当時のカタログからアクロマチックコーティングの謳い文句
「独自のアクロマチックコーティング ロッコール交換レンズ群には、他社に先がけて開発した、ミノルタ独自のアクロマチックコーティングが施されています。この独自のアクロマチックコーティングは、従来のコーティング(1層膜)ではまぬがれなかった、カラー再現に悪影響を及ぼす紫外線の透過をカットし、透過光は理想の白に近づいてます。 この結果、カラー再現力は飛躍的に向上し、どんな条件のもとでも自然のカラーを忠実に再現します。ロッコールレンズがカラーに強いという定評は、このアクロマチックコーティングの優れた特徴によるものなのです。」
しかしながらNewMDレンズから採用されなくなったのを見ると、コーティング技術がまた飛躍的に良くなった事を示している様に感じます^^;
1974年発売? レンズ構成: 5群6枚 絞り羽根枚数: 6枚 最短撮影距離: 0.5m
画角: 47° 外寸: 64.5x41mm 重さ: 240g フィルター径: 55mm
コーティング: アクロマチックコーティングによる多層膜 最小絞り: f16
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①それでは前群レンズから分解開始です
A: まず吸盤オープナーなどを使って銘板を反時計回りに回して取り外します。
B: そしてまた吸盤オープナーを使ってレンズ前群ユニットを取り外します。
「カニ目ツール」を使ってもいいのですが、傷が付きやすいので自分はなるべく「吸盤オープナー」を使う様にしています^^;
C: 前玉レンズを押さえているリングナットを取り外します。
D: 前玉にはクッション材としてゴム製?のスペーサーが噛ませてありますので、爪楊枝などを使って取り外します。
②前玉の裏側はアクロマチックコーティングなので要注意!!
A: 前玉を外す時は裏のアクロマチックコーティングになるべく触れないように取り外します。
前玉の裏を清掃する時は脂を落とした指に中性洗剤を付け、水を流しながら優しく撫でるように洗浄して下さい。
残った水滴はブロアで吹き飛ばします。
B: これが恐怖のアクロマチックコーティングで、光を当てると緑色に反射します。
決してエタノールやクリーニングペーパーを使わないで下さい!!
C: 2枚目のレンズにはアクロマチックコーティングはされていないみたいですが、確証はありませんので各自で判断して下さい^^;
D: 3枚目のレンズもアクロマチックコーティングはされてなさそうでした。
③後玉の裏面もアクロマチックコーティングっぽいです…
A: 念の為に前玉2枚目の光の反射画像です^^;
アクロマチックコーティングはしてなさそうですが…
B: レンズ後群ユニットを取り外します。
C: どうやら貼り合わせレンズの方はアクロマチックコーティングは施されてないみたいでした。
D: 後玉の裏面は緑色に反射しているので、アクロマチックコーティングの可能性が高いです。
後玉の裏を清掃する時は脂を落とした指に中性洗剤を付け、水を流しながら優しく撫でるように洗浄して下さい。
ここもエタノールやクリーニングペーパーは厳禁です^^;
④ここからはヘリコイドグリス交換と絞り羽根清掃の作業になります
A: フィルター枠を固定しているネジ4個を外し、フィルター枠を取り外します。
B: フォーカスリングを外す前に部品の位置関係を無限遠の位置で位置マーキングをしておくか、写真を撮っておきます。
ここは無限遠調整になっていますので、無限遠が出ていない時はここでフォーカスリングを無限遠の位置で固定しながら中のヘリコイドを回転させて調整します。
ここからの分解は無限遠の位置を基準としていきますので、ヘリコイドは動かさないで下さい。
C: 飾りリングを3個のイモネジを緩めて取り外します。
D: 絞りリングを回して4個のネジが見えたら取り外します。
⑤ヘリコイドグリス交換
A: ネジ4個を外すとマウント部分とヘリコイドユニットを分離する事ができます。
外す時に絞りピンの入っている位置だけは確認しておいて下さい。
B: 3個の固定ネジを外し、直進キーを外します。
C: ヘリコイドを外す前に各部に位置マーキングや写真を撮っておきます。
そしてメインヘリコイドを外しますが、回転角と外れる瞬間の位置は必ずマーキングしておいて下さい。
そしておおまかにティッシュなどでグリスを拭いたら、灯油やベンジンなどをブラシに付けて古いグリスを落とし、新しいヘリコイドグリスを筆などで塗付します。
D: サブヘリコイドは無限遠の位置から締めこんで止まる位置をマーキングしたら取り外します。
そして上記と同様の作業をしてヘリコイドグリス交換をしますが、塗り過ぎると重くなるのでほどほどにしておくと良いです^^;
⑥絞り羽根の清掃
A: メインヘリコイドとの位置関係をマーキングしたら、固定リングを外してメインヘリコイドから絞りユニットを引き抜きます。
B: 中の絞り羽根押さえリングの位置マーキングをしておきます。
因みにめいっぱい絞った状態はこんな感じでしたので、組んだ後の参考にして下さい。
C: 絞り羽根押さえリングを固定している周囲のイモネジ3個を緩め、絞り羽根押さえリングを取り外し、絞り羽根をエタノールなどで洗浄します。
D: 絞り羽根を組み立てて、慎重にユニット内部に組み込みます。
後は逆の手順で組み立てて完成となります^^
⑦フード変形の板金など
A: このレンズのフードはぶつけたらしく、レンズに取り付けるのが困難な状態になっていました^^;
B: 叩いてもなかなか元に戻らなかったので、プライヤーで戻す事に…
しかしながらネジ山が凹凸になって入らなくなってしまったんですよね^^;
もう一度プライヤーで凹凸を極力減らしましたが、固くてなかなか入りません💦
C: 仕方ないのでネジ山にコンパウンドを塗り、ひたすら締めたり緩めたりしてネジ山を削りました^^;
レンズ側も削れてしまうので、できれば要らないフィルター径55mmのレンズを使って研磨するのがいいと思います。
これで綺麗にフードが入るようになりました。
⑧「MINOLTA MC ROKKOR-PF 50mm f1.7」の作例
使用カメラは1インチセンサーのニコンワンV1なので、参考程度にしておいて下さい^^;
絞り値は忘れてしまったので、雰囲気で感じ取って頂けると嬉しいです。
⑨路地裏の景色
⑩木の実
実はピンが枝の方に合ってしまっていますが、開放のボケ具合が良く分かる画像だったので採用する事にしました^^;
⑪街並み
⑫多摩川にて
⑬多摩川大橋
⑭橋の欄干
⑮草の中にあった置物
⑯何かの植物
⑰雨上がりの水溜まり
水溜まりに写る景色って結構好きだったりします^^;
この「MC ROKKOR-PF 50mm f1.7」は開放ではほどよく柔らかく、暖かい色合いで写る気がしました。
フレアは試してないので何とも言えませんが、逆光だと割と出るみたいです。
あと絞れば単焦点らしいシャープな写りを楽しめます^^
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【ミノルタ「MINOLTA MC ROKKOR-PF 50mm f1.7」分解・清掃・作例】でした!
コメント