◎とあるリサイクルショップのジャンクボックスにフォーカスリング&絞りリングのゴムが無く、カビ&バルサム切れしているタムロンの望遠レンズ 「BBAR MULTI C. TAMRON 300mm f5.6 (T-300)」が1コインで転がっていたので回収してきました。
今回はそのT-300を分解整備して作例を載せた内容になっています。
指標部が透明なプラスチック製のこのレンズはタムロンの旧製品情報にも載ってなく、1973に生産終了した2群4枚の「670Au」と1976年に発売された4群4枚の「CT-300」の間に発売された製品と思われます。
調べていたら海外のサイトで型番が「T-300」と分かり、レンズ構成は前製品の2群4枚「670Au」から受け継がれています。
1973年発売? 1976年生産終了? 当時の価格はおそらく¥30.000くらいと思われます。
モデル名: T-300 マウント: 交換式アダプトール 焦点距離: 300mm 開放値: f5.6
レンズ構成: 2群4枚 最小絞り: f22 最短撮影距離: 2.5m フィルター径: 62mm
重さ: 770g(実測) 外寸: 71x198mm 絞り羽根枚数: 9枚
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①前群レンズを外します
A: まずフードを押さえているフィルター枠は逆ネジになっていますので、ドライヤーなどで温めてから時計回りに回して外します。
このフィルター枠を外さないと銘板リングは噛んで外せませんので注意して下さい💦
B: 銘板リングを反時計回りに回して外します。
C: そして前群レンズを固定しているロックリングを外し、前群レンズを取り外したらレンズを清掃します。
レンズの清掃のみでしたら、後は後群レンズ(画像④のA)を外して清掃すれば完了です。
D: このイモネジは前群ユニットの固定ネジでもあり、無限遠調整の固定ネジでもあります。
無限遠調整をする時はレンズを組んだ状態でフードを外してこのイモネジを緩め、カメラにレンズを取り付けたらフォーカスリングを無限遠にセットし、ファインダーを見ながら前群ユニットを回して遠景にピントを合わせてイモネジを締めつければ完了です。
②ヘリコイド部の分割
A: 前群ユニットを外した状態。
元の位置に戻す時はイモネジを外し、ネジ穴からネジの打痕が真ん中に来るように前群ユニットを締め込んで固定すればOKです。
B: フォーカスリングゴムを外し、ヘリコイドストッパーのネジを外します。
C: ここからはフォーカスリングを慎重にゆっくり回し、外れる瞬間の位置をマーキングしておきます。
D: 透明なプラスチックで作られている指標数字部を固定しているネジ3個を取り外します。
③ヘリコイドグリス交換
B: ヘリコイドを固定している3個のイモネジを緩めます。
固定する時はここもネジ穴からイモネジの打痕がセンターに来るようにしてからイモネジを取り付けると確実です。
C: 吸盤オープナーでヘリコイドを反時計回りに回して外します。
D: ヘリコイドを外したら古いグリスをホワイトガソリンなどで取り除き、新しいヘリコイドグリスを固い筆などで塗布しておきます。
メス側のヘリコイドも同様に奇麗にしておきます。
④後群レンズとバルサム切れ修理
A: ロックリングを外して後群レンズを外し、レンズを清掃します。
残念ながらこのレンズは前も後ろもバルサム切れをしていました…💦
B: 以前作った「自動バルサム剝がし器」を使用してレンズを剥がしました。
C: 古いバルサムを奇麗にして貼り合わせます。
このレンズは剥がした時にバルサムの香りがしなかったので、おそらくカナダバルサムではなく、合成樹脂を使っているのだと思いました。
D: マウントを外す為に3個の固定ネジを外します。
(ここからの整備は絞りリングやM/A切り替えスイッチの動きが渋い時に限ります)
注意点として、アダプトールの場合はネジをさしたまま黒い遮光部をまとめて外さないと隙間に入っているワッシャーが脱落して組み立てが非常に面倒な事になります💦
⑤絞りリングの取り外し
A: こんな感じでまとめてマウントを外さないと、矢印部に入っている小さなワッシャーが脱落して紛失の原因になります。
B: 絞りリング連動レバーの2個のネジを外しますが、その前に画像Cの位置マーキングをしておきます。
あと必ず連動レバーが入っている絞り部の様子も確認しておきます。
C: これは分かり易い様に取り外した状態になりますが、連動レバーと固定パーツとの位置マーキングを絞りリングの固定ネジ2個を外す前にしておきます。
D: 絞りリングを外す時はクリックボールとバネが飛び出しますので、必ず袋の中で作業します。
絞りリングの内側を奇麗にして新しいグリスを塗布します。
⑥M/A切り替えスイッチの取り外し
B: 「MADE IN JAPAN」と書かれているリングを固定しているイモネジ3個を緩めます。
C: そしてM/A切り替えスイッチを「M」にして、ボール飛び出し防止の為に袋の中に入れたら、切り替えスイッチを下に押し下げてクリックボールを回収します。
D: そして画像Bのリングを回してピンネジの見える位置まで回し、ピンネジを取り外します。
⑦鏡筒の分割
A: ピンネジを外すと切り替えスイッチが外れますのでグリスアップしておきます。
B: 固定位置を確認して、リングを外します。
組み立てる時の位置決めはイモネジの打痕に合わせると良いです。
C: 紛失しないようにバネも回収しておきます。
D: 三脚座を回すとネジ穴からネジが3個見えますので取り外します。
⑧絞りユニットの取り外し
A: 指標部の入っている位置をマーキングしたら鏡筒を分割します。
B: 絞り駆動ピンが入っている状態を確認します。
C: 絞りユニットの取り付け位置をマーキングしたら、絞りユニットを固定しているイモネジ3個を緩めます。
D: 絞りユニットを取り外します。
丸印は画像⑥のAの連動レバーが入るピンになります。
⑨絞り羽根の清掃
A: 絞りユニットを分割しますが、ここも調整されていますので必ず位置マーキングをしてから3個のネジを取り外します。
B: 絞りを分解します。
C: 絞り羽根だけでなく、稼働して擦れる部分は全てエタノールなどで洗浄します。
絞り羽根は曲げない様にフェザータッチで洗浄して下さい💦
D: 絞り羽根を組み立て、カバーを付ければ完成。
後は逆の手順で組み立てれば完了です。
お疲れ様でした!
⑩「BBAR MULTI C. TAMRON 300mm f5.6 (T-300)」の作例
使用カメラは「ニコンD700」で、絞り値は景色以外ほぼ開放で撮影しています。
⑪噴水の水しぶき
⑫花壇の花
⑬公園のベンチ
⑭玉ボケ
⑮木々の葉
⑯公園の道
⑰川を飛ぶカラス
⑱学校の校舎
⑲鉄道路線
⑳線路のセンサー
㉑豊作
最近はお米の代わりに高騰している小麦を作っている農家が増えていますね。
㉒花
㉓向日葵
あまり寄れませんが、2群4枚のシンプルなレンズ構成もあって、なかなか抜けの良い画像を出すレンズだと思いました。
オールド望遠レンズを楽しめる1本だと思います。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【タムロン 「BBAR MULTI C. TAMRON 300mm f5.6 (T-300)」分解清掃・作例】でした!
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