◎今回はあまり見かけないキャノン「Canon FL50mm f1.4 Ⅰ型」を分解・清掃・絞り修理してみました。
このキャノン「Canon FL50mm f1.4」のⅠ型(5群6枚)とⅡ型(6群7枚)の判別はとても分かり易いのですが、詳しく調べておられるOhBeHelloさんの情報によればⅠ型でも前期型(アトムレンズ)と後期型があり、製造番号「3****」で光学系の厚みと鏡筒の造りが変わっているそうなんですよね^^;
更にキャノンのホームページに載っている最初期型(4群6枚)の「Canon FL50mm f1.4」が存在するそうですが、未だに謎のままだそうです。
(でもOhBeHelloさんが言う通り、自分もHPの誤記(4群ではなく5群)だと思っています)
今回はⅠ型の後期型を分解・清掃してみました。
あとⅠ型の前期型は別館の方で分解・清掃しましたが、このレンズは古くなると絞りが油で動かなくなる確率が高いみたいです^^;
1966年9月発売 当時の価格は¥21.800 外寸: 64x43mm フィルター径: 58mm
レンズ構成: 5群6枚(後期型は前玉と中玉が薄くなっているそうです)
絞り羽根枚数: 8枚 最小絞り: 16 最短撮影距離: 0.6m 最大撮影倍率: 0.104
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①それでは前群レンズから清掃していきます
A: まず銘板を吸盤オープナーなどを使って外しますが、緩んでもなかなか外れない時はネジ溝にエタノールをちょっと垂らすと簡単に外す事ができます。
B: カニ目レンチを使って前群ユニットを外します。
C: 前群ユニットを外したら、レンズの押さえリングを外し、向きマーキングをしてからレンズを清掃して組み立てます。
D: マウント部分のフレアカッターを外します。
②鏡筒の分離と後群レンズの清掃
A: フォーカスを無限遠にして後群を繰り出し、後玉のすぐ横にあるリングナットを取り外します。
B: そして絞りピンの入っている位置を確認しながら鏡筒を分離します。
この時に銅製のスペーサーが入っているので、外して保存しておきます。
スペーサーは組む時に忘れない様にして下さい(忘れました: 笑)
C: そして後玉を押さえているリングを吸盤オープナーなどで外し、向きマーキングをしながら後玉、スペーサー(向きは厳守して下さい)、中玉の順に外して清掃します。
D: 絞りは動かずこんな状態…
こうなっていたら絶対に絞りリングや絞りレバーを動かさない方がいいです。
下手に動かすと絞り羽根が割れたり、絞り羽根のピンが脱落します^^;
③鏡筒の分解
A: 鏡筒の位置決めネジと銅製の大きなCリングを外します。
B: A/M切替リングを外しますが、この時にクリックボールと小さなバネが落ちてくるか飛んでくるので、必ず袋の中で作業して下さい。
C: 次に絞りリングを固定しているリングを3個のイモネジを緩めて外しますが、この時もクリックボールと小さなバネが落ちてきますので、袋の中で作業する事をお勧めします。
D: 絞りリングの固定リングは組み立てる時にイモネジの打痕を参考にして組み立てます。
④鏡筒の分解B
A: 絞りリング連動ネジを外します。
B: 1番目の大きなCリングを外し、絞りリングに連動する中のリングを外します。
C: 2番目の大きなCリングを外し、A/M切替リングの連動リングを外しますが、この時に突き出ている連動用のネジは外さなくてもリングを外す事が出来ます。
D: 3番目のこのCリングは外さなくてもOKです。
⑤絞りユニットの取り外しと分解
A: 絞りユニットを固定している3本のネジを外します。
B: 鏡筒の絞りピンが入っている位置を確認しながら絞りユニットを外します。
C: ひっくり返してバネとネジ3個を外し、絞りユニットのカバーを外します。
D: 絞り羽根を取り出したら板金&油分除去を行い、絞りユニット側も油分を除去しておきます。
⑥絞りの組み立てとヘリコイド分解
A: 絞りの板金と油分除去が終わったら組み立てます。
絞り羽根は割と脆いので、フェザータッチで組み立てて下さい。
B: 組み立てたらカバーとバネを付けて動作チェックします。
あとは逆の手順で鏡筒を組み立てていきます。
C: クリックボールはグリスで落ちないようにしてから組み立てると楽です。
D: ヘリコイドがスカスカなので分解します。
画像中央上のヘリコイドストッパーを外す時に必ず位置マーキングをしてから外します。
⑦ヘリコイドの分解とグリスアップ
A: フォーカスリングを外します。
B: その状態でヘリコイドを締めこんで組み立て後の位置確認用のマーキングをします。
C: そしてマウントと中の黒いヘリコイドを固定しながら(中の黒いヘリコイドの位置はマウントから外れるまで直進キーの位置で)、中間の銅製ヘリコイドを回して外します。ここで中間の銅製ヘリコイドがマウント側から外れる瞬間の位置を位置マーキングしておきます。(組む時にとても重要です)
D: そして今度は中間の銅製ヘリコイドから中の黒いヘリコイドを外しますが、ここでは外れるまでの回転数(回転角)と外れる瞬間の位置をメモ&マーキングしておきます。
マーキングをしたら組み立てる時のシュミレーションをしておくと良いです。
⑧ヘリコイドの清掃・鏡筒の組み立て
A: 分解したヘリコイドをブラシと洗浄液で綺麗にし、ヘリコイドグリスを塗って組み立てます。
組み立てたらヘリコイドの位置が画像⑦のBの位置で止まるか確認しておきます。
B: あとは全ての部品を組み合わせて完成です。
下の画像: 完成した「Canon FL50mm f1.4 Ⅰ型(後期型)」とミラーレスカメラ「ニコン1V1」に取り付けた様子です。
⑨「Canon FL50mm f1.4 Ⅰ型(後期型)」の作例
カメラは1インチセンサーのミラーレス「ニコン1V1」に取り付けて撮影しています。
f8.0 1/200 iso400
⑩フェンス
f1.4開放 1/3200 iso400
⑪消火器ボックス
⑫照明塔
f1.4開放 1/3200 iso400
⑬エスカレーター
f1.4開放 1/640 iso400
⑭枯れたアパガンサス
開放f1.4 1/500 iso400
⑮マンションの間接照明
開放f1.4 1/1000 iso400
⑯物撮り(キャラクターフィギュア)後ボケ
開放f1.4 1/1250 iso100 最短撮影距離0.6m
⑰物撮り(キャラクターフィギュア)前ボケ
⑱物撮り(キャラクターフィギュア)f5.6
f5.6 1/125 iso100
開放の描写はソフトで芯があり、ボケは状況によって賑やかく感じるかもしれません。
Ⅰ型の前期型はもう少しソフトだった気もしますが、どちらもちょっと絞れば解像度はぐっと上がります。
開放での特徴あるボケや収差を生かした写真作りにこのレンズは楽しめる1本だと思います^^
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【キャノン「Canon FL50mm f1.4 Ⅰ型」分解・清掃・絞り修理・作例】でした!
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