キャノン「New FD28mm F2」分解清掃・ガタの原因であるコロ交換・作例

キャノン

◎もう8年も前の話になりますが、初めて分解清掃した広角の単焦点レンズがこの「Canon New FD28mm F2」だったんです。
その時は2群2枚目の貼り合わせレンズのバルサム切れ修理という、初心者の自分には超難関な整備でした💦
しかもそれだけでは終わらず、焦点機構がやけにガタガタするのに気づいてレンズを分解していくと黒いプラスチック片がポロポロと出てきました…
(コロが付いているのは近距離補正機構・フローティングシステムがあるからです)

そうこれが、この時代のFDレンズの持病であるコロの崩壊なんですよね💦
これを知ったのは「FD 35-70mm F2.8-3.5」や当時のFDズームを分解していった時でした。
今回はレンズ清掃よりコロ交換をメインにしていこうと思います。

1979年6月発売  当時の価格は¥64.500  レンズ構成: 9群10枚
絞り羽根枚数: 8枚  最小絞り: f22  最短撮影距離: 0.3m  重さ: 265g
フィルター径: 52mm  最大撮影倍率: 0.13倍  外寸: 63×47.2mm
因みに先代の「FD28mm F2 S.S.C.」とはレンズ構成が異なります。

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

①1群・2群レンズの取り外し

A: 銘板を吸盤オープナーなどで反時計回りに回して取り外しますが、固い時はドライヤーで温めて下さい。
B: フォーカスリングゴムを取り外します。

C: まずフィルター枠を固定しているネジ3個を外し、フィルター枠を取り外します。(フィルター枠には取り付け位置がありますので、取り付ける時はフード取付部の切り欠きを指標線に合わせて組みます)
次に1群レンズユニットとスペーサー2枚を外すのですが、ここで指標線を基準とした位置マーキングを両方ともしておかないと組む時にパズルになるので注意して下さい💦

D: 次に2群レンズユニットを反時計回りに回して取り外します。

②前群レンズ清掃

A: 2群レンズユニットを外したら分解して各レンズを清掃しますが、もし2枚目の貼り合わせレンズがバルサム切れしていたら、固定枠を削って取り出す必要があります💦

B: 1群レンズユニットも分解して1枚目と2枚目前側(ハメゴロシ)を清掃して組み立てます。
C: 1群レンズユニットの後ろも外れますので、分解して清掃したら組み立てます。
残念ながらこのレンズは2枚目のレンズ裏がちょっと曇ってました…orz

D: マウントを分解する前に各ピン位置を確認しておきます。
レンズの清掃のみでしたら、ここで後群レンズを外して清掃すれば作業は完了となります。

 

③マウントの取り外し

A: マウントのバヨネットを固定している3個のネジを外します。
B: バヨネット部を外します。

C: ゆっくり慎重にマウント可動部を外し、各パーツの入る位置を確認しておいて下さい。
基本的にこの状態で組めば問題が起こる事は無いと思います。(絞りリングはA)

D: 3群後ろのレンズを取り外します。

④3群レンズ清掃とマウント部の分解

A: 後ろのレンズを外したら分解清掃して、次に奥のレンズも向きマーキングしながら外して清掃して組み立てます。

B: マウントベースを固定している3本のネジを外しますが、ここは1本だけ色が違うので注意して下さい。
C: マウントベースを外しますが、ロック解除ボタンは割と簡単に外れてしまうので、注意しながら外して下さい。

D: 連動リングは図のように左から持ち上げて引っ張るように外し、組み立ても同様にして下さい。

⑤ヘリコイド分解前の測定

A: まず必ずフォーカスリングを無限遠にセットして動かさないようにして下さい
フォーカスリングを分割する前に位置合わせマーキングをし、周囲のイモネジ3個を外します。(紛失注意!)
B: 無限遠になっている事を確認したら、フォーカスリング前側を外します。

C: 無限遠の状態でヘリコイドの突き出し量を測定します。
黒いヘリコイドの突き出し量は5.1mmでした。
D: 次に銀色のヘリコイドの突き出し量を測定します。
銀色のヘリコイドの突き出し量は3.4mmでした。
これは組む時に大切な目安となりますし、個体差もあると思いますのでしっかり測定して下さい。

⑥フローティング機構の分解

A: 銀色のヘリコイドをゆっくり回してネジの見える位置で止め、見えたネジを3個外します。
B: フローティング機構を外す前に取り付け位置(回転方向)をマーキングしておきます。
そしてフローティング機構を取り出すのですが、おそらく劣化したプラスチック片が引っ掛かって簡単には抜けないと思いますが、ブロアしながら頑張って外して下さい💦

C: するとボロボロになったコロが見えると思いますので、3個取り外します。
これ以上作業したくないと思いますが、プラスチック片がヘリコイドに引っ掛かって動作に支障が出ますので、できれば全バラ清掃をお勧めします💦

D: クリックピン&バネが飛び出す事がありますので、絞りリングを袋の中で取り外して下さい。

⑦黒色ヘリコイドの取り外し

A: 2個ある直進キーを取り外します。
B: 取り外したら各パーツを清掃します。

C: 黒色ヘリコイドをかなりゆっくり慎重に回し、外れる瞬間の位置を銀色のヘリコイドの凹中心をセンターとして黒色ヘリコイドにマーキングします。

D: 外した黒色ヘリコイドをベンジンやホワイトガソリンで清掃します。

⑧銀色ヘリコイドの取り外し

A: 銀色のヘリコイドもかなりゆっくり慎重に回し、外れる瞬間の位置を指標線を基準としてマーキングします。
外した銀色のヘリコイドも清掃します。
B: とりあえず外したコロと部品は全て清掃します。

C: サブヘリコイドのストッパーネジを外します。
D: 無限遠の位置から締めこんで、どれくらいの回転数で止まるかメモします。
このレンズはおおよそ0.6回転で止まりました。
確認したらサブヘリコイドも分解して清掃します。

⑨ヘリコイドとコロ幅測定

A: ヘリコイドを全て清掃したら、新しいヘリコイドグリスを固い筆などで塗布します。
まずサブヘリコイドを組み立て、締まった位置から0.6回転戻して無限遠位置にし、ストッパーネジを取り付けます。
そして次に銀色ヘリコイドを外れた瞬間の位置から組み込み、測定した位置で止めます。
次は黒色ヘリコイドを外れた瞬間の位置から組み込み、こちらも測定した位置で止めます。
この時点で大方「直進キー」が入る位置にヘリコイドの溝が来ていると思いますので、直進キーを組み込んで完成です。

B: ヘリコイドが完成したら、無限遠位置で測定した値に来ているか計測して下さい。
もしずれていたら、おそらくヘリコイドを入れる位置が1つずれている可能性があります。

C: プラスチック部分が無くなったコロの直径を測定します。
約3.6mmでした。

D: コロが入る凹も測定します。
こちらは約3.8mmとなっていて、コロとの差は0.2mmでした。
という事は崩壊したプラスチック部分はたった0.1mmくらいしかありません💦

 

⑩とりあえず身近な物でコロを作りましたが…

こればかりは直す方にコロの代替品を考えてもらう方がいいように感じました💦
切削する技術や3Dプリンターをお持ちの方はコロを自作する事をお勧めします。
知り合いはレジンで作っていましたし、それぞれコロに対する精度や耐久性に対する考え方は違いますので、自分はすぐに出来る範囲で今回のコロ修理をしている事をご了承ください。

A: とりあえずフォーカスリングのコロの代用品は100円ライターのこれがピッタリボルトオンでした。
B: まず付いてる部品を外し、この部分で切り離します。

C: こんな感じで、穴を開ける必要もありません。
D: 外形は3.8mmで、ネジを通すとこんな感じになります。
ただ、実際にヘリコイドの凹に入れると若干ガタがあったので、ちょっと広げました💦

⑪フローティング機構のコロは…

A: フォーカス側は組んだらとても快調になりましたが、必ずグリスは塗布して下さい。

B: フローティング機構側の溝とコロもほぼ同じ値でした。
C: こちらのコロは太めの「熱収縮チューブ」に入れ、ヒートガンで収縮させました。(ホームセンターで売ってたもので、冷えると割とカチカチになります)

D: 熱収縮チューブ取り付け後の値は3.85mmと良い結果でしたが、コロのくぼみを埋めるのを忘れてました💦
もしやるならくぼみを埋めてからにして下さい。

組み立てる時はコロの向きに注意し、必ずグリスを塗布して下さい。

後は逆の手順で組み立てれば完成です。
お疲れ様でした😄

 

⑬キャノン「New FD28mm F2」の作例

使用カメラはフルサイズミラーレスのソニーα7で、絞り値は分かる範囲で記載しています。 (2枚目のレンズが僅かに曇っています💦)
この画像は走る車から撮影したもので、絞り値はf8.0です。

⑭放水路分流堰

f8.0

⑮農協のキャラクター

f2.0開放
流石に開放f2.0だけあって、背景は良くボケてくれます。

⑯買い物カート

開放f2.0

⑰市電

f8.0

⑱交差点

f8.0
ちょっと手振れしています💦

⑲看板

f5.6

⑳創立100周年・3500形3503号リニューアル限定ホワイトカラー

f11.0
この日がこの限定カラーの最終運行日でした。

☆キャノン「New FD28mm F2」はとても良く写る印象で、明るい広角レンズを楽しむには最適の1本だと思いました♪
ただ欠点はレンズ内のコロが劣化して崩壊する事ですね💦

 

◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)

コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。

 

以上、【キャノン「New FD28mm F2」分解清掃・ガタの原因であるコロ交換・作例】でした!

 

 

 

 

 

 

 

 

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