◎今回はリサイクルショップなどで比較的良く見かける「Canon EF35-105mm F3.5-4.5」を分解清掃して作例を撮った内容になっています。
このレンズは基本的に1985年に発売された「New FD35-105mm F3.5-4.5」をAF化したもので、レンズ構成とズーム機構は同じになっています。
ただこのレンズのウィークポイントは、New FD時代を含めて後ろから3番目の貼り合わせレンズのバルサム切れとコーティング劣化が発生し易く、今まで手にしたジャンクのほぼ半数がダメになっていました💦
1987年3月発売 当時の価格は¥44.700 レンズ構成: 11群14枚
絞り羽根枚数: 5枚 最小絞り: F29 最短撮影距離: 0.85m 重さ: 400g
最大撮影倍率: 0.16倍 フィルター径: 58mm 外寸: 73.2×81.9mm
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①1群レンズユニットの取り外し
A: プラスチック製のロックリングを外します。
B: 1群レンズユニットの爪が入っている箇所にはねじ止め剤?が塗布されていますので、アセトン(100均ネイルリムーバーなど)などで柔らかくしてから除去します。
除去したら1群ユニットをどちらかに回して溝(画像C参照)から外し、本体から取り外します。
C: 引っ掛かっている爪(矢印)は短くて脆いので気を付けて下さい。
D: 1群レンズユニットのレンズは残念な事に嵌め殺しになっていますので、溶着してある部分を削ってレンズを取り出すしかありません💦
②1群レンズ清掃とマウント外し
A: 2枚目のレンズが外れたら清掃し、1枚目のレンズはドライヤーでガンガンに暖めてから後ろから押すと削らなくても割と簡単に外す事ができます。
B: 各レンズを清掃したらレンズを組み立て、レンズ枠を接着剤で固定します。(自分はセメダインスーパーXを爪楊枝に付けて塗布してます)
C: 電子接点のネジ2個を外します。
D: マウントのネジ4個を外します。
③マウント外しとフレキシブルケーブル外し
A: まずマウント①を少し持ち上げたら、遮光パーツ②を外し、電子接点③をフリーにしたらマウントを取り外します。
B: 絶縁シートを取り外します。
C: 半田ごて、フラックス、ハンダ吸い取り線を用意して下さい。
D: フラックスをハンダ付けしてある箇所に塗布します。
④基盤の取り外し
A: ハンダ吸い取り線をハンダ付け部に当てたら、上から半田ごてで暖めてハンダを吸わせます。(なるべく短時間で行って下さい)
B: こんな感じで基盤からフレキシブルケーブルを外します。
C: 全てのケーブルが外せたら基盤を外し、基盤に残った古いハンダも吸い取ります。
D: 絶縁シートの取付位置を確認しながら外します。
⑤鏡筒の分解
A: マウント下駄の固定ネジ3個を外します。
B: マウント下駄を外す時にフレキシブルケーブルの一部はT字形状で固定されている箇所もありますので、決して断線させない様に慎重に外して下さい。
C: マウント下駄をフレキシブルケーブルを傷めない様に慎重に外します。
D: ズーム部のグリップゴム(両面テープでくっつけてあります)を外し、ズームの電子接点を必ず外して下さい。
電子接点を外し忘れると接点がグチャグチャになって危険です。
⑥鏡筒の分離
A: AF/MFスイッチをMFにしておきます。
B: 取付位置の合わせマーキングをしたら、見える3個のネジを外します。
C: ゆっくり慎重に鏡筒を分離します。
D: ズームユニットに付いている白いスライダ爪を3個取り外しますが、接点に付いている物だけ形状が違うので注意して下さい。
⑦ズームユニットの分解
A: こんな感じでスライダ爪は1個だけ形状が異なります。
B: 穴から見える3箇所のピンを押し、少しずつ外れる方向に移動させます。
このピンは外部ユニットから外れる瞬間に飛び出しますので、必ず袋の中で作業を行って下さい!
C: 内部ユニットを外しながら合わせ位置のマーキングもしておいて下さい。
丸印のフリクションプレートは取付方向を確認しながらこの時点で外しておくといいです。
D: コロに入っているピンとバネを回収しておきます。
⑧ズームユニット分解とレンズ清掃
A: 後玉の前後を清掃します。
B: フレアカッターには取付位置はありませんので、そのまま外してOKです。
C: ここのコロもバネが入っていますので、3箇所を押しながら少しずつ外す方向へ移動させます。
D: ここまで来たら、袋の中で慎重に2群レンズユニットを取り外して下さい。
⑨2群レンズユニットの分解清掃
A: 2群レンズユニットを外したらコロとバネを回収しますが、コロには向きがあるので組み立て時は気を付けて下さい。
B: ユニット裏にある固定爪を広げてカバーを取り外します。
C: レンズの向きをマーキングしながら取り出し、各レンズを清掃します。
D: 絞りユニットを固定している3個のネジを取り外します。
⑩最大の難関である3群レンズの取り出し
A: 絞りユニットのフレキシブルケーブルを固定しているクリップの4本の爪を外します。
B: 絞りユニットを取り外します。
C: ここからはこのレンズの最大の難関の作業となりますので、ちょっと休息してから作業に入って下さい💦
ここのレンズ固定方法はこの時期のEFレンズにありがちなCクリップによる固定となっていて、先端がL字になっている「ピックツール」を使用するといいです。
しかしながらクリップの位置がかなり奥にある為に、レンズに傷を付けない様に取り外すのがかなり大変でした💦
しかもこれを3回繰り返さないといけません^^;
因みに組み立ても緊張の連続となります。
D: 頑張って取り外した3個のレンズで、組み立てる時はレンズの向きとCクリップの大きさに気を付けて下さい。
外したレンズを清掃します。
⑪バルサム切れレンズ剥がし
A: 残念ながらこの貼り合わせレンズは見事にバルサム切れ&コーティング曇りを起こしていました…💦
B: 以前紹介した「自動バルサム剥がし器」を使って貼り合わせを分離します。
C: おおよそ3分で分離に成功しました。
D: 残った古いバルサムをエタノールとクレンザーを使って綺麗にします。
しかしながらコーティングは曇ったままなので…
⑫レンズ研磨と組み立ての注意点
A: 自作「扇風機流用ろくろ」で曇りを研磨しました。
光軸が狂うので、完璧は目指さずに研磨します。
後はバルサムで貼り合わせたら、逆の手順で組み立てれば完成です。
☆組み立ての注意点
B: つい忘れてしまうのがフレアカッターの組付けで、まずズームユニットにフレアカッターを入れ、外部ユニットにズームユニットを入れながらフレアカッターの凹を後玉の後ろの凸に入れていきます。(取付位置はフリーです)
C: 取り付けたらちょっと動かしてスムーズに動くかチェックして下さい。
D: フレキシブルケーブルのハンダ付けはまずフラックスを塗り、なるべく短時間でハンダを流して固定して下さい。
お疲れさまでした。
⑬「EF35-105mm F3.5-4.5」の作例
105mm F4.5開放
使用カメラはAPS-Cのキャノン「EOS KISSx4」になります。
レンズのAF作動音はちょっと大きいですが、割とAFは速く感じました。
あと今回一部の画像は車の室内から撮影している為、窓ガラスの反射でコントラスト低下しているものがあります💦
⑭アルファロメオ
⑮卒業シーズン
⑯首都高沿い
⑰岐阜方面
⑱川崎重工業
⑲この中にドフがあります
⑳桜
㉑GR86
㉒黄昏時のビートル
㉓夕焼け空
90mm F4.5開放
このレンズは3群が曇った物しか使った事がなかったものですから、今回分解清掃してみて標準レンズらしく割と良く写るものだと思いました。
もしこのレンズを買う時は必ず3群レンズの状態を確認すると良いと思います。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【キャノン「EF35-105mm F3.5-4.5」分解清掃・作例】でした!
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