◎とあるリサイクルショップのジャンクコーナーに「FD 50mm f1.8 S.C. (TypeⅠ)」が¥550で転がっていたので回収してきました。
状態はレンズにカビ、ヘリコイドは重く、絞り羽根は油で不動と最悪な状態です。
大体、外観が汚いレンズは保存状態も悪く、こうしたトラブルを抱えている事が多いですね💦
幸いレンズのコーティングが無事だったのが何よりの救いでした。
今回は全分解整備してセンサーサイズ違いのミラーレスカメラ2機種で作例を載せた記事になっています。
発売日: 1973年(昭和48年)3月発売 当時の価格は16,500円 レンズ構成: 4群6枚
絞り羽根枚数: 6枚 最小絞り:f16 最短撮影距離: 0.6m 最大撮影倍率: 0.103倍
フィルター径: 55mm 外寸: 64×44.5mm 質量: 255g
この後、1976年(昭和51年)3月に発売された「FD50mm F1.8 S.C. (II型)」は価格が¥4.500値上がり、絞り羽根枚数は5枚に減り、全長は6mm小型化、プラスチックの多用で55gもダイエットされました。
買うなら重いけどⅠ型の方が良さそうな感じがしました。
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①前群レンズの清掃とマウント外し
A: 銘板を吸盤オープナーなどで反時計回りに回して外し、フィルター枠に位置マーキングをして3個の固定ネジを外して外します。
B: 前群レンズユニットを吸盤オープナーで反時計回りに回して外し、レンズを清掃します。
残念ながら前群レンズユニットのレンズは固定枠のプラスチックを溶かしてレンズを固定するハメゴロシになっていますので、もし内部にカビがある場合は固定枠を削ってレンズを取り出す必要があります。(見た目が悪くなるので後ろを外すと良いです)
C: マウントのロックを押して、ブリーチロックを固定ネジ3個が見える位置まで反時計回りに回します。
D: 現れたマウント固定ネジ3個を外し、ゆっくり慎重にマウントを取り外します。
この時にマウントを下にして作業すると小さなピンとバネが脱落するので気をつけてください。
②マウント側の分解
A: マウントを外したら小さなピンとバネ、そして絞りリングに付いているカム板を外します。
B: カム板のネジには長短がありますので注意します。
C: 絞りリングを外す時はクリックボールが飛び出す事が多々ありますので、必ず袋の中で作業して下さい。
このレンズはクリックボールが二か所ありますので、両方回収します。
D: 外した各パーツを奇麗にして新しいグリスを塗布しておきます。
③後群レンズの清掃とヘリコイド分解
A: 後群レンズを固定しているロックリングを反時計回りに回して外し、レンズとスペーサーの向きをマーキングしながら外します。
B: 各レンズを清掃します。
C: ヘリコイドを一番縮んだ状態(無限遠)にして、鏡筒とヘリコイド部の突き出し量と位置をマーキングしておきます。
D: 直進キーの位置マーキングをして取り外します。
何故直進キーにマーキングが必要なのかと言うと、ここがずれるとヘリコイドが重くなってしまうからなんです。💦
特に斜めになっていたり、レンズ側に出過ぎているとヘリコイドが重くなる原因になります。
④ヘリコイドグリス交換
A: 直進キーを外したら内側のメインヘリコイドをかなりゆっくり慎重に回し、外れた瞬間の位置関係をメインヘリコイドとサブヘリコイドにマーキングしておきます。
B: 外したヘリコイドの古いグリスをホワイトガソリンか灯油で奇麗に落とし、新しいヘリコイドグリスを固めの筆などで塗布しておきます。
C: フォーカスリングストッパーの位置マーキングをして取り外します。
ここは無限遠調整にもなっていますので、無限遠が出ない時はここで再調整します。
D: 因みにサブヘリコイドを締め付けるとすぐにこの位置で止まりますので、組み立ての参考にしてください。
⑤ヘリコイドグリス交換の続きと絞りの取り外し
A: サブヘリコイドもゆっくり慎重に回し、ここも外れた瞬間の位置マーキングをしておきます。
B: 絞りユニットを固定している3個のネジを外し、絞りユニットを取り外します。
(絞りユニットは画像①のBの状態からでも脱着清掃が可能です)
C: 外したら油でベチョベチョでした…
これはグリスが劣化すると成分から基油が分離する事で発生します。
D: 外した絞りユニットのリターンスプリングを取り外します。
⑥絞り羽根の清掃
A: 絞りユニットを組み合わせている3個のネジを外し、絞りユニットを分割します。
あと矢印の部分にはレンズ側の絞り駆動ピンが入りますので、組み立ての参考にして下さい。
B: 分割したら絞り羽根の入っている方向と向きをチェックし、分解します。
C: 外した部品は全てホワイトガソリンかエタノールで油分を除去します。
そして部品を乾燥したら組み立てます。
D: 絞り駆動ピンの位置に注意しながら組付けます。
後は逆の手順でレンズを組み立てます。
⑦マウントの組み立て
A: マウントを組み立てる時はまずピンを組み込み忘れていないかチェックします。
そしてカム位置がこの位置にあるのをチェックし、絞りリングを「A」にセット、マウントの各ピンはこの位置にセットします。
B: そしてピンを基準位置にして各絞り連動ピンをこの位置に入れながら組み立てます。
組み合わさったらマウントを各方向に動かしてガタがないかチェックしてからネジ3個を取り付けて固定します。
動作チェック: マウントのブリーチロックを反時計回りに回し、長いピンをロックして短いピンを動かした時に絞りが動く事をチェック、今度は短いピンを動かさずに長いピンで絞りが動けばOKです。
お疲れさまでした。
⑧「FD 50mm f1.8 S.C. (Ⅰ型)」の作例
まず1インチセンサーのミラーレスカメラ「ニコン1 V1」で撮影した作例になりますが、この画像は別ブログで載せたものを拡大して載せています。
ぶっちゃけ、暑くて体調が悪いので手抜きです。(汗)
⑨ジョギングする人
⑩木の幹
⑪日を浴びる葉
⑫ベンチ
⑬落ち葉
⑭公園の景色(カメラはα7)
ここからはカメラを変えてフルサイズミラーレスの「ソニーα7」で撮影しています。
⑮水遊び場
⑯花壇
f1.8開放
フルサイズ機だと距離によってはボケが五月蠅くなります。
⑰逆光テスト
旧型の「スペクトラコーティング」なので、この後の「スーパースペクトラコーティング」よりフレアが多めに感じました。
ただ、カビでコーティングが痛んでいる可能性があるのであまり参考にならないと思います。
⑱口径食
「FD 50mm f1.8 S.C. (Ⅰ型)」は典型的なダブルガウスの写りを楽しめるベーシックなレンズだと思います^^
この後、「New FD」まで「R50 f1.8 Ⅱ型」から始まった対照型のダブルガウス構成は変わりませんでしたが、「EF50mm F1.8」から前群レンズに貼り合わせの無い5群6枚構成へと設計変更がされました。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【キャノン「FD 50mm f1.8 S.C. (TypeⅠ)」を分解・清掃、作例】でした!
コメント
最近オールドレンズを買い始めたのでとても参考になります
ハードオフに週一で通ってますw
どんさん初めまして!
この度はご訪問、コメントありがとうございます。
自分も毎週と言っていいほどハードオフやリサイクルショップに行ってます^^
ジャンクだとトラブルも多いですが、これからもオールドレンズライフを楽しんで下さい♪