ボロボロのペトリ「ペトリハーフ(PETRI HALF)」を分解・清掃してみました

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今回は以前から興味のあったペトリ「ペトリハーフ(PETRI HALF)」を分解・清掃してみました。
とにかくボロボロの個体で、レンズは拭き傷が酷く、とても撮影に耐えられない状態でしたが、とにかく「トリガー巻き上げ」と「グリーンオマチック」のファインダーが覗きたくて激安品を購入しました^^;

☆ペトリハーフの当時の謳い文句
「最高の連写性を誇るトリガーレバー:ピストルの引き金式のトリガーレバーは左手の人差し指だけで、フィルム送りとシャッターセットを同時に行う事ができる。
明るく見やすいブライトフレームのグリーンファインダー:ファインダーを覗くと被写体が緑色に見える。これはグリーンのフィルターの中に見えるゴールデン・ブライトフレームに撮影画面と同じ視野を決めるもので、フレームの覗き方が多少狂っても視野がズレない。」
オリンパスペンが口火を切ったハーフカメラ戦国時代の約一年後に発売されたペトリハーフです。

1960年3月発売 当時の価格は¥6.800(ケース・スナップバンド¥1.200)
使用フィルム: 35mm(ハーフサイズ 24x36mm)  外寸: 107x76x46mm
重さ: 385g  レンズ: Petri Orikkor 28mm F2.8(3群4枚テッサータイプ)
ファインダー: ブライトフレーム(グリーン・オ・マチックシステム)
シャッター: PETRI CARPERU-S B・1/15〜1/250s(5段階)
焦点調整: 目測  フィルム巻き上げ: トリガーレバー式

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

 

①軍艦部の取り外しから

ペトリハーフ軍艦部分解A: まず巻き戻しクランクの下部を固定し、巻き戻しクランクを反時計回りに回して外します。

B: そして軍艦部を固定しているリングナットをカニ目ツールなどで反時計回りに回して外します。

C: フィルムカウンタ側にあるネジを外し、軍艦部を上に持ち上げれば軍艦部を外す事ができます。(錆などで固着して外れにくい事があります)

D: この時にシャッターボタンが脱落するので注意して下さい。

②ファインダーの清掃

ペトリハーフ ファインダーの清掃A: シャッターボタンは取付穴が決まっていますので間違える事はないと思います。

B: ファインダーを清掃しますが、矢印のハーフミラーは簡単に剥げるので、中性の洗浄液などで隅から様子を見ながら拭くと良いです。
(綺麗なら埃を取るくらいでやめておくのが無難です💦)

C: このカメラの特長であるグリーンのガラスを外さないとファインダーは綺麗になりません^^;
ここはしっかり接着剤を削り、エタノールを染み込ませて数分待ってからガラスを割らない程度の力で押して様子をみます。
固い場合はもう一度エタノールを染み込ませて数分待ってからチャレンジします。
自分は3回目で何とか外し、清掃して組付け、ちょっとだけ接着剤を付けて固定しておきました。
やっぱり奇麗になった「グリーンオマチック」は新緑の味わいです^^

③シャッターユニットの取り外しと注油

ペトリハーフ シャッターユニット外し

A: シャッターユニットを取り外すにはフィルム室のリングナットを緩めないといけませんが、ここはおそらくT文字型の専用ツールで締められており、通常の道具で緩める事はできません。
なので自分はカニ目ツール(尖がっている方)をクロスさせ、後玉に気を付けながらリングナットを緩めました。

B: シャッターユニットを外すとスペーサーが入っていますので回収しておきます。
シャッターユニットを組む時はユニット側のシャッターをチャージした状態、そしてカメラ側のシャッターのレバーは上げた状態にしておくと入れやすいです。

C: 各可動部に筆などで軽く給油しておきます。

D: 今回はトリガーレバーの回転部も外して清掃・給油しておきました。
この時に固定しているリングナットは逆ネジなので注意して下さい!

④レンズの清掃

ペトリハーフ レンズ清掃

A: フォーカスリングを無限遠の位置にセットし、丸印の辺りに鉛筆で印を付けておきます。
このカメラは使い込まれており、おそらくオーナーさんがマメにレンズを拭く方だったんでしょうね…
レンズ前玉は傷だらけで修復不可能になっていました(汗)
あと、とにかくこのカメラの後玉は曇っている事が多く、レンズが研磨されている個体も多いので、多くの場合作例は本来の性能ではないと思います^^;
(このカメラの後玉も真っ白&バルサム切れ💦)
自分は弄って楽しむオブジェ用に買ったので悔いは無いですが… ←

B: フォーカスリングを固定しているイモネジ3個を2mmほど緩めます。
このカメラは激しい分解痕があり、1個のイモネジの頭が砕けていて大変でした…
何とか短いイモネジで代用できたので良かったです。

C: フォーカスリングを外したら、今度は前玉ユニットを締め込んで止まった角度をメモし、止まった位置もマーキングしておきます。
(組付け時の参考になります)
D: そして前玉ユニットを外し、中玉ユニットを外したら各レンズを清掃します。

⑤後玉の取り外しとシャッターユニット分解

ペトリハーフ シャッターユニット分解

A: 後玉を外して清掃します。
このカメラの後玉は高確率で曇っているので、酸化セリウムで欲張らない程度に研磨しておきます。(欲張ると光軸が狂います: 経験者は語る)
しかもちょっとバルサム切れしていましたが、レンズが鉄枠に嵌め殺しなので諦めました(前玉も嵌め殺しです)

B: シャッター速度調整リングを固定しているリングナットを外し、シャッター速度調整リングを外します。
ここでシャッターリングとガバナーを外してもいいですが、自分は組み立てにくいのでシャッターユニットを分解する事にしました。
因みにこの状態の写真は詳しく撮っておいた方がいいです。
何故なら分解中にバネが外れたり、部品の位置が分からなくなる事があるからです^^;
C: シャッターと絞りを組み合わしているネジを外します。
そして慎重に分割したら…
D: なんじゃこりゃあぁああ!
でした…(汗)
割と快調に動いていたのは錆で潤滑されていたからかもしれません(汗)
とにかく各羽が割れてなくて良かったです。

⑥絞り羽の錆落としと清掃

ペトリハーフ 絞り清掃

A: とりあえず絞りのカバーを外してみました。
嗚呼… 酷い(汗)

B: まず錆びを大まかにメラミンスポンジで取り除き、スクレーパーで突起した錆も取り除きます。
そして銅ブラシで優しく表面仕上げした後、エタノールで拭いて仕上げました。

C: 絞り羽根と可動部も外します。
しかし酷い錆です。

D: 同じように絞り羽根の破損に注意しながらBの要領で綺麗にしました。

⑦シャッター羽とガバナ清掃

ペトリハーフ シャッター羽とガバナ清掃

A: 絞りを組んで動かしたらメチャクチャ軽く動きます(汗)

B: シャッター羽を取り外します。 あーあ、酷い…。

C: こちらも絞りと同じ要領で綺麗に磨き上げました。
ボロン粉末を付けておけば馴染むのも早いと思います。

D: 外したガバナをベンジンに浸け、取り出してちょっと動かしてまた浸けるを繰り返すと軸受けやギヤの当たり面が綺麗になります。
そして可動部に筆などでちょいちょいと油分を付けて組み立てます。
(油の付け過ぎは厳禁なので、浸透する事も考えながらちょっとで良いです)

⑧シャッター速度調整リングの組付けなど

ペトリハーフ 組み立て注意点

A: シャッター速度調整リングを組み立てる前に丸印の部分がこうなっている必要があります。
なっていない時はシャッターリングが外れていると思います。

B: シャッター速度調整リングは必ずB(バルブ)の位置で組み立てます。
理由は各リンクの位置がフリーになっているからです。
このカメラは使い込むと左の黄色丸のピンがガタガタになっている事があるので、事前に耐衝撃金属用の接着剤でピンの根元を補強しておくと良いです。

C: 使い込んだカメラは絞りリングがこの部分で噛んで動かなくなる事があります。
そんな時は画像③のCの黄色丸部分のネジをちょっと浮かせてネジ止め剤で固定すると噛みこみを防ぐ事ができます。
もちろん絞りリングとネジのクリアランスは適宜調整する必要はありますが、とても快調に絞りリングが動く様になります^^

D: 巻き上げメカのメンテナンスの為に下の蓋を外します。

⑨チェーンとゼンマイ式巻き上げメカのメンテナンス

ペトリハーフ 巻き上げメカ

A: コストの掛かった巻き上げメカが特徴的なペトリハーフ
B: 巻き上げ不良の大半がこの黄色丸印部分の裏にあるラチェットのリターンバネの外れか折損みたいです。
今回は問題が無かったので、清掃して軽く注油しておきました。

C: ここも外して可動部を清掃・注油しておきました。

D: ここも動きが渋かったので注油しておきました^^;
後は逆の手順で組み立てて完成です。

⑩ロゴプレートが無いのは寂しいので…

ペトリハーフ ロゴ製作

A: ペトリハーフって、ここのロゴプレートを紛失している個体が多いですよね…
自分はペトリハーフのロゴ部分の画像を落とし、それを各大きさに印刷してみました。

B: 丁度良い大きさの物を切り取り、両面テープで貼ってみました。

C: なかなか良い感じになりましたが、小さな文字が上手く再現できなかったのと、文字部はややグレーを入れれば良かったかなと反省しています^^;
そう言えばここの「HALF」の文字が輸出品だと「Junior」や「Compact」になるみたいです。

D: このカメラは「前玉が拭き傷で傷だらけ、後玉のクモリ&バルサム切れ」で作例を撮る気力が全く起きなかったのですが、3枚だけミラーレスでの作例を載せる事にしました。

⑪クモリ玉「Petri Orikkor 28mm F2.8」の作例(汗)

Petri Orikkor 28mm F2.8クモリ玉

使用カメラは1インチセンサーのミラーレスカメラ「ニコン1V1」です。
あまりに撮影した画像が濃霧だったので、かなりコントラストを上げています^^;
因みに全ての画像は絞り開放で撮影しています。

⑫寺尾 聰さんの「ルビーの指環」が良く似合うかも…

ペトリハーフ クモリ玉

ペトリハーフ クモリ玉②

♪~「くもり硝子の向こうは靄の街♪ 問わず語りの描写が切ないね~ 枯葉ひとつの重さも無い命 クリアを失ってから~♪
背中を丸めながら~ 腕のカメラ抜き取ったね~ ドフ(ハードオフ)に返すつもりなら捨ててくれ(オイ)」

ここまで曇っているとミラーレスでもピンの位置が分かりませんし、逆光は白い世界が広がるだけでした(汗)

でもこのカメラの魅力はレンズではなく、その巻き上げ機構とファインダーにあると自分は思っています^^
とにかくトリガーレバーの巻き上げは今回の整備でとても軽快に動く様になり連写を楽しむ事ができました。
でも最初は調子に乗り過ぎて、トリガーの尖った部分が指にめり込んで痛かったりもしましたが(笑)
ファインダーもその独自な世界観を堪能する事ができて良かったです。

 

 

◎カメラの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、カメラの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしカメラを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)

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以上、【ボロボロのペトリ「ペトリハーフ(PETRI HALF)」を分解・清掃してみました】でした!

 

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