◎今回はあまり興味が無かったのにリサイクルショップのジャンクコーナーで¥330という価格に負けて買ってきてしまったキャノンの望遠レンズ「CANON FD200mm F4 S.S.C」を分解・清掃した時の記録になります。
この1973年に発売された「CANON FD200mm F4 S.S.C」は1971年に発売された「CANON FD200mm F4」のレンズコーティングを「スーパースペクトラコーティング」に変えたものですが、何故か50g軽くなっています^^;
この後、1979年に発売された「New FD200mm F4」とは全く共通性はありませんでした。
ただ残念だったのが、このレンズに関してFLレンズで良くあったレンズの曇りが前群2枚目に発生していた事ですね^^;
やはり初期のFDレンズも曇り玉があるのを改めて感じたワンシーンでした…
写りに関しこのレンズは開放からとても良く写るのでちょっと残念。
あとこのレンズはネジ止め剤がたっぷり塗ってあるみたいで、その事に関しては分回欄に記述しておきます。
1973年3月発売 当時の価格は¥31.500 フィルター径:55mm 重さ: 675g
レンズ構成: 5群6枚 絞り羽根枚数: 8枚 最小絞り: F22 最大撮影倍率: 0.1倍
最短撮影距離: 2.5m 外寸: 67x133mm
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①まずレンズの清掃だけをします
A: まず銘板のネジ部にエタノールを染み込ませて数分待ってから銘板をカニ目ツールを使って反時計回りに回して外しますが、ここで前玉がいきなり取れるので落下に気をつけてください。
B: 前玉(貼り合わせレンズになってます)を向きマーキングしてから外し、スペーサーも必ず向きをマーキングしてから外して下さい。
そして2枚目のレンズも外し、外したレンズを清掃します。
C: レンズのコーティングが曇ってます… 残念!!
今回はレンズコーティングを「硝酸セリウム」で表面のザラザラが消える程度で研磨を止めておきました。
斜めの光にはダメですが、直進する光なら透過率がありそうだったからです^^;
D: それでは中玉を外すためにフォーカスリングゴムを外し、穴に位置マーキングをし、周囲のイモネジ3個を緩めます。
②分解による中玉清掃断念の理由
A: フォーカスリングをずらすと鏡筒にイモネジ2個があるので緩めます。
(このイモネジは非常に浅いので紛失に注意して下さい)
赤矢印の指している部分が分割部なので、イモネジの穴や分割線部分にネジ止め剤を柔らかくするエタノールを流し込んで数分待ちます。
B: そしてレンズを最短撮影距離にセットして伸ばし、フォーカスリングを元に戻して黄色矢印部分を持って捻ります。
すると本当は画像Aの赤矢印分割部で鏡筒を分割でき、中玉にアクセスできるようになるのですが…
このレンズはネジ止め剤がガチガチに塗られていて分割できませんでした^^;
(ヒートガンでガンガンに熱してもダメ、鏡筒をエタノールに2晩浸してもダメでした)
なので諦めて前からクリーニングペーパーを付けた筆で清掃、後ろはレンズ後群を外し、絞りを開いた状態で清掃しました^^;(画像③のC参照)
2003/11/27追記: 別の同レンズでイモネジの穴からアセトンを垂らし、3分ほど置いて回したら簡単に緩みました!
C: レンズ後群を外すのでフォーカスを無限遠にして工具を届きやすくしておきます。
D: カニ目ツールを使ってレンズ後群を取り外します。
このFD200mmやFD300mmはレンズ後群を外さないとマウントが取れない構造になっているので注意して下さい。(理由は画像付きで下に書いておきました)
③レンズ後群と中玉後ろの清掃
A: 取り出したレンズ後群です。
B: レンズやスペーサーに向きマーキングをしながら取り出し、各レンズを清掃したらレンズ後群を組み立てます。
C: レンズ後群を外した状態で絞りを開き、筆に付けたクリーニングペーパーなどで中玉の後ろを清掃します。
レンズの清掃のみなら後は組み立てて完成となります^^
④FD200mmのマウント外し
A: FD200mmやFD300mmなどはレンズ後群を先に外さないとマウントは基本的に外れない様になっています。(理由は画像⑤のDを参照して下さい)
あとNewFDレンズになると仕組みが異なります。
まずマウントを外す前に各リンクの繋がりをチェックしておきます。
B: ここは丸いピンが必ず右側になります。
C: ここのカムは必ず山に乗っている必要があり、もし赤い部分に入っていると正常に動きません。
C: マウントのリングをロックしているピンを押し、リングを矢印の方向に回して固定ネジ3個が見える位置まで回します。
⑤マウント外しと先にレンズ後群を外す理由
A: 見えるマウント固定ネジを3個外します。
B: 各リンクの繋がりを観察しながらゆっくりマウントを引き抜きます。
C: マウントを外す時はここの小さなピンとバネに気を付けて下さい!!
マウントを外したら必ず回収しておきます。
D: 何故レンズ後群を外さないとマウントが外れない理由はここにあります。
絞り駆動ピンのスライダーはレンズ後群の凹部分を用いて動いているからなんです。
爪部分が引っ掛かっているのでマウントは外れないんです。
⑥諦めずに鏡筒の分割に挑むも…
A: 諦めずに鏡筒の分割に挑みました…
これはヘリコイドを固定している縦に入ったネジ3個を無理やり緩めて分割した図なんですが、やはり絞りや中玉にはアクセスできませんでした^^;
B: この状態で溶剤アタックやヒートガンアタックをしたのですが、分割部を攻略するには至らず^^;
C: ここを緩めて悟りました…
メッチャクチャ固い!!!
しかしこんなにネジ止め剤を塗るなんて有り得ない事です。
これを見て鏡筒の分割を諦める事にしました。
なので今回は絞り羽根の清掃も諦める事に^^;
D: ヘリコイドグリス交換はまずフォーカスリングを最短撮影距離にセットし、ストッパーの位置、ヘリコイドと鏡筒の位置関係をマーキング。
そしてストッパーを外し、金色のヘリコイドを回しながら鏡筒をブラさず直進方向に抜きつつ「直進キーから外れる位置」と「ヘリコイドから外れる瞬間の位置」をマーキングしておきます。
⑦マウントの組付けなど
A: そしてヘリコイドグリスを灯油やベンジンなどで奇麗に落とし、新しいグリスを塗って組み立てます。
サブヘリコイドも必要ならここから外れる回転角と外れる瞬間の位置をマーキングし、グリス交換(柔らかめ)をやっておくと良いです。
B: マウントの取り付け
①絞りリングは開放側に。
②マウントの回転リングは固定用のネジ穴が見える位置に。
③絞りピンはロックしておきます。
④絞り連動ピンは凹凸で組み合わせながら入れます。
⑤この小さなピンが入る位置で組み合わせます。
組み合わせたら上下左右にマウント部を微動させガタが無いかチェックし、取り付けネジ3個を締め付けて完成です。
C: このレンズのフォーカスリングゴムは伸び伸びになっていたのでカットしました^^;
トラブルの多いレンズでしたが、とりあえず作例に移りたいと思います💦
⑧「CANON FD200mm F4 S.S.C」の作例
開放F4
使用カメラは1インチセンサーのニコン1でレンズの周囲画像は使いませんが、フルサイズの画像を約1/7クロップしたような過酷な条件の為にレンズ性能が出やすい特徴があります^^;
レンズが曇っている為に明るい画像は若干コントラストを上げています。
⑨田んぼ
⑩花
⑪橋の欄干
開放F4
⑫木にいるサギ
開放F4
⑬稲
開放F4
⑭ネジの蜘蛛の巣
開放F4
⑮池のアオサギ
F8.0
⑯田んぼの景色
F8.0
⑰景色の圧縮効果
F8.0
あのホテルまで約5㎞、奥の高速道路まで約11㎞あります。
望遠レンズの圧縮効果って面白いですよね^^
⑱物撮り(プライズフィギュア)
開放F4
⑲物撮り(プライズフィギュア)
F8.0
開放から良く解像し、スーパースペクトラムコーティングの発色の良さも良いと思いました。
レンズが曇ってこれなので、状態の良いレンズはもう少し良く写ると思います^^;
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【キャノン「CANON FD200mm F4 S.S.C」分解・清掃・作例】でした!
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