◎今回はタムロンのオールドズームとしては高性能版のSP版でもないのに良く写ると言われている「TAMRON 35-70mm F3.5 CF MACRO(17A)後期型」を分解・清掃して、フルサイズカメラのニコンD700で撮った作例を載せてみました。
もちろんこのレンズはハード〇フのジャンクコーナーに転がっていたもので、カビジャンクの為に価格は千円を切っていたと思います。
あとこのタムロン17Aは一応、前期型(フォーカスリングゴムの四角模様が細かい)と後期型(フォーカスリングゴムの四角模様が大きい)に分かれていて、フォーカスリングゴムの模様だけでなく、後期型は前群ユニットを外す為のサービスホールがフォーカスリングに追加されています。
(ゴム模様が細かい方が製造番号3×××××番台、大きい方が5×××××番台ですが、サービスホールが追加された製造番号は不明です)
注意点としてこのレンズは前群がフォーカスリング内に隠れたイモネジで固定されており、前期型は全分解が必要、後期型はフォーカスリングをずらして横にある穴から隠れたイモネジを探して緩めれば前群を外して清掃が可能です。
1982年発売、1987年生産終了 当時の価格は¥39.000 開放F値: f3.5
レンズ構成: 7群7枚 2群ズーム 最小絞り: f32 最短撮影距離: 0.25m(Macro)
ズーム形式: 回転式(M.O.Dセレクターシステム) 最大撮影倍率: 1:2.8
フィルター径: 58mm 絞り羽根枚数: 8枚 重さ:330g 外寸: 65.6×59.5mm
フード: 42FH
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①フォーカスリングゴム外しと自作ツール
A: フォーカスリングゴムを外すので、筆などの丸棒を間に入れて回しながらリングゴムを外します。
B: リングゴムを外したら「昭和60年4月18日」と書かれていました… (懐)
C: このレンズのフォーカスリングを外れない様にしているリングナットを外すのは至難の業なので、今回は傷つけない為に特殊工具を自作しました。
これは100均のラジオペンチをヤスリで削ってピンを取り付けた物になります。
(後期型のレンズ清掃のみならこの作業は必要でなく、画像②のCの文章を参考にして下さい)
D: 白矢印のリングナットをこの自作特殊工具を使って反時計回り回して外します。
もしここを緩める事が出来なかった場合は下記の絞りユニットを取り出せば何とか全てのレンズを清掃できます。
②フォーカスリングの取り外し
A: フォーカスリングのリングナットを後方へずらしておきます。
B:フォーカスリングを無限遠にセットし、フォーカスリングを固定している4個のイモネジを緩めます。
C: フォーカスリングを取り外します。
組み立てる時はこの写真の様にヘリコイドがヘリコイドストッパーで止まっている位置で組み、無限遠マークに合わせてイモネジを締め付けるだけです。
【後期型のレンズ清掃のみでしたら前群を位置マーキングし、フォーカスリングを1.2mくらいにセットしてフォーカスリングを固定しているイモネジ4個を緩め、フォーカスリング横の穴(黄色丸参照)から前群ユニットを固定しているイモネジ4個をフォーカスリングを回しながら探して緩め、前群ユニットを外れるまでの回転数を数えながら外してレンズ清掃して下さい】
D: 無限遠の位置マーキングと念のために前群ユニットとアウターケースとの段差を測っておきます。(このレンズは0.8mmでした)
③前群ユニットの取り外しとヘリコイドグリス交換
A: ヘリコイドをちょっと回し、見えたイモネジ4個を緩めます。
B: 前群ユニットを固定位置から回転数を数えながら取り外します。
組み立てる時はイモネジを外し、イモネジの穴から前群ユニットの横に付いている打痕を中央に合わせれば出荷時の調整に完璧に合わす事ができます。
C: ヘリコイドを外してヘリコイドグリスを交換します。
ヘリコイドは外れる瞬間の位置が重要になりますので、必ず外す時はゆっくり慎重に回し、外れる瞬間の位置をマーキングしておきます。
古いグリスは灯油とブラシで落とし、新しいグリスを固い筆などで薄く塗付します。
D: レンズの分解はなるべくカニ目ツールを使わず、吸盤オープナーで外すと傷を付けなくて済みます。
固くて緩まない時はネジ溝にアセトンかエタノールを染み込ませて3分待ってから緩めるか、ドライヤーで温めてから緩めると良いです。
④前群レンズと中玉の清掃
A: 前群ユニットのレンズを清掃しますが、2枚目のレンズの向きは注意してください。
B: 中玉を固定しているリングナットを外し、中玉をレンズサッカーなどで取り外します。
C: 外した中玉を清掃します。
D: ズームを35mmにセットして後群を伸ばし、レンズを固定しているリングナットを外してレンズをレンズサッカーで取り出します。
ここはとても固いので、ドライヤーでガンガンに温めてから緩めると良いです。
⑤後群レンズの清掃と鏡筒の分解
B: 各レンズの向きとスペーサーの位置関係で、スペーサーに向きはなさそうでした。
レンズの清掃のみでしたら、後は逆の手順で組み立てて完成になります。
C: ここからは絞り羽根を清掃する場合の分解になります。
まずマウントを固定している3個のネジを外します。
D: マウントを外すとワッシャーが3枚入っているので無くさない様にして下さい!
⑥鏡筒の分解
A: 取り付け位置を確認してからマウントの中間リングを位置外します。
B: 遮光パーツを外します。
C: 絞り連動レバーの位置マーキングをしたらネジ2個を外してレバーを取り外します。
D: 絞り連動レバーは絞り制御リングに引っ掛かっていますので、Cリングを外して絞り制御リングを外し、絞り連動レバーを取り外します。
⑦絞りリングの取り外しなど
B: 絞りリングを外しますが、クリックボールとバネが飛んでいってしまうので注意して下さい。
袋の中で作業する事をお勧めします^^;
C: とても小さいパーツなので、無くさない様に100均のチャック付きのミニ袋に入れておくと良いです。
D: ズームリングを固定しているリングのイモネジを緩めます。
⑧マウント基部の取り外し
B: ここで基準ネジを中心に位置マーキングを十字方向にしておきますが、特に重要なのがBF(バックフォーカス)調整リングの位置で、これは作業中に勝手に回転してしまう事から、しっかりマーキングしておいて下さい^^;
C: マウント基部を固定しているネジ6個を取り外します。
D: 取付位置を確認したらマウント基部を取り外します。
⑨ズーム鏡筒の取り出し
B: 特殊ネジになっていますので紛失に注意して下さい。
C: ズーム鏡筒を固定している4個のネジを外します。
D: ズーム鏡筒を引き抜いたら、絞りユニットを動かしているネジ&コロを2セット取り外します。
このネジは固いので、ちょっとエタノールを染み込ませてから作業すると良いです。
⑩更に鏡筒を分解する場合の補足
A: これでようやく絞りユニットを取り外す事ができますが、外す前に取り付け位置の確認はしておいて下さい。
B: ここからB~Cの作業は必ずしも必要ではなく、参考だけにしておいて下さい。
更にズーム部を分解する時はこのサービスホールに銅製のネジをセットします。
C: ここがコツが必要な場所で、このように対にドライバーをセットしたらまず右のドライバーを固定して左のネジを外し、次に右のドライバーを回して右のネジを外す手順でないと決して外れませんので注意して下さい^^;
D: ネジの構成とコロの方向性。
左のネジに右のネジ用のネジ穴がある為、左のネジを回しても右のネジが当たって外れないんです。
⑪絞りの分解清掃
A: まず矢印部にある制御レバーを外します。(写真は外した後です)
外す前に必ず位置方向とバネの位置は確認してください。
そして絞りの位置マーキング(調整されています)をし、絞りを固定しているネジ4個を取り外します。
B: 絞りを取り外します。
C: 絞りを分解するためにネジ3個を外しますが、右のネジ裏には小さなナットがありますので気をつけてください!
D: 絞りを分解したら全てのパーツをエタノールで奇麗にします。
⑫絞りの組み立てと無限遠など
B: 絞り羽根の向きに注意しながら組み立てていきます。
特に最後に羽根を入れる時は緊張しますよね(苦笑)
C: 組み立てる時は位置決めや指標の基準線に従うと良いです。
D: 無限遠を出荷状態にするには画像③のBにも書きましたが、ネジ穴から覗いてネジの打痕を中央にもってくるのが理想です。
それでも無限遠の調整をしたい時は画像の状態に組んでカメラに取り付け、前群ユニットを回して無限遠が出たらイモネジで固定すればOKです。
後は逆の手順で組み立てれば完成です。
⑬前期型と後期型の光学系の比較と純正フード
写真の撮り方が下手くそで申し訳ありません💦
それぞれのレンズを測定した結果、光学系の設計に変更は無かったみたいでした。
でも前玉の反射がやや異なるのでコーティングの変更はあったかもしれません。
純正のフード「42FH」は何とたまたま自分のジャンクフードコレクションの中にあったものです^^;
ほとんど見かけないので、ドフのフードケースにあったらラッキーだと思います。
でもこのフードって大きいので小型のカメラだと似合わないと思いました💦
⑭「TAMRON 35-70mm F3.5 CF MACRO(17A)」の作例
開放f3.5 70mm
使用カメラはフルサイズ機のニコンD700を使用しています。
撮影データは記憶が曖昧なので分かる範囲で記しています^^;
⑮山からの景色
⑯廃墟と化した地方の観光地
地方の観光地は廃れる一方です…
昔はゲームやスマホやPCが無かったから出掛けるのが暇つぶしでしたよね。
⑰当時の面影
⑱廃車
これ昔運転した事があります。
全開にしても100㎞でなかった記憶が…。
⑲落ち葉
⑳資料館
㉑資料館の石
㉒閉館した旅館
ここはテレビで取り上げられた数年後には閉館してしまいました。
建物も老朽化しているので仕方ないのかもしれません。
㉓ミニ
知り合いがこれでワンメイクレースに出ていました^^
でもこれからEVになるとエキゾーストノートと言う言葉は死語になってしまうんでしょうね。
㉔土手にて
ここで外国人が良くBBQをやっていました^^
自分もここでお弁当を食べるのが好きです。
㉕川べりのススキ
㉖夕暮れの川べり
割と繊細で温かみのある写りをするので、こうした景色を撮るにはいい感じです。
このタムロン17Aは廉価版でありながらとても良い写りをするレンズだと思いました。
今まで35-70mmと言うズームはAPS-Cでしか使った事がなかったのですが、フルサイズで使うと人間の視角を自然にカバーできる領域なんだと改めて感じた瞬間でもあります^^
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【タムロン「TAMRON 35-70mm F3.5 CF MACRO(17A)」分解・清掃・作例】でした!
コメント
後段の1番後ろ1枚の内側が曇っていたのでなんとかしたいと思っていたらこの記事、すごく助かりました、ありがとうございます
お返事が遅れて大変申し訳ありません
このレンズの固定は締め込みが固かったので大変だったと思います。
お役に立てれて自分も嬉しいです
良いカメラライフを♪