◎今回はとあるリサイクルショップのジャンクコーナーにあったペンタックスのカビジャンクレンズ「Super-Multi-Coated TAKUMAR 300mm F4」を分解・清掃し、作例を載せてみました。
タクマーの300mmシリーズは1960年代に発売された「タクマー300mmF4前期型(3群3枚)」に始まり、その後レンズ枚数が1枚増やされた「タクマー300mmF4後期型(4群4枚)」となり、更にレンズが1枚増やされたこの「Super-Multi-Coated TAKUMAR 300mm F4(5群5枚)」になったそうです。
1971年頃発売 レンズ構成: 5群5枚 最短撮影距離: 5.5m 最小絞り: F22
フィルター径: 77mm 重さ: 946g フルフレーム35mm 絞り羽根枚数: 6枚
マウント: M42 最大撮影倍率: 0.06 格納式フード内蔵 マニュアルフォーカス
外寸: 85×186.5mm
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①本体を分割して前群から掃除していきます
A: まず内蔵フードを前に出し、空いたスペースと本体の後ろ部分をゴム付きの手袋などで持ち、本体をひねって分割します。
固くて緩まない時はドライヤーでネジ山付近を温めてみて下さい。
それでも緩まない時は画像Bの飾りリングを先に外してずらす事ができますので、そこからネジ山にエタノールを流して数分待つと簡単に緩む事があるのでおススメです。
B: 中間にある飾りリングを外し、内蔵フードを取り外します。
C: 前群レンズユニットを分割します。
D: 前群レンズ(前部分)の前玉を固定しているリングにエタノールを染み込ませて数分待ってから緩め、前玉を外して清掃します。
②レンズ前群の清掃とレンズ後群の取り外し
A: 前群レンズ(前部分)の後ろ側2枚目のレンズホルダーを反時計回りに回して外し、レンズを取り出して必ず向きのマーキングをしてから清掃します。
レンズの向きだけは間違えない様にして下さい。
B: 前群レンズ(後ろ部分)のレンズを固定しているリングナットにエタノールを染み込ませて数分待ち、リングナットを反時計回り回して外し、レンズを取り出して清掃します。
各レンズの清掃が完了したら逆の手順で組み立てます。
C: マウントに付いているフレアカッターを取り外します。
D: フォーカスを無限遠にセットし、カニ目ツールなどを使ってレンズ後群を取り外します。
③レンズ後群の清掃
A: レンズを固定しているリングナットにエタノールを染み込ませて数分待ち、リングナットを反時計回り回して外します。
レンズを取り出したら必ず向きマーキングをしてから清掃します。
B: フレアカッター部を外し、上記の要領でリングナットを外します。
ここのレンズの向きは非常に分かりにくいので、必ずレンズを外す時にレンズの向きをマーキングしておいて下さい。
恐らく向きを間違えると周囲が流れる画像になります^^;
後は逆の手順で組み立てます。
レンズの清掃のみでしたら、ここまでで作業は終了となります^^
④ヘリコイドグリスの交換
A: まずリング式になっている三脚座をピンを溝に通して取り外します。
B: フォーカスリングを最短撮影距離にセットしておきます。
C: フォーカスリングを固定している3個のイモネジを緩めます。
イモネジが固い時はエタノールかラスペネ(ネジ緩め剤)などを染み込ませてから再度チャレンジします。
D: 中のヘリコイドが動かない様に慎重にフォーカスリングを外します。
そして指標線からくる位置にヘリコイド位置をマーキングしておきます。
しかしながらこのレンズは接着剤が劣化して矢印のリングが空転する個体が多いと思われます。(フォーカスリングのイモネジが固定する部分になります)
これは組み立て時の阻害になりますので、できればちょっと接着剤を流して隙間ができないように押さえて接着しておけば後々楽になります。
⑤ヘリコイド分解の続きと絞り分解
A: 今度はヘリコイドの頭の下くらいに、指標線からくる位置マーキングをしておきます。
B: フォーカスリング部を白矢印の向きにゆっくり慎重に回し、回転数(回転角度)を数えながらまずヘリコイドが直進キーから外れる位置を探ります。
ヘリコイドが直進キーから外れる瞬間のフリー位置をまずマーキングします。
(組み立てる時はフォーカスリングを小刻みに動かして直進キーにセットします)
そして引き続きフォーカスリング部を回してヘリコイドが外れる瞬間の位置をマーキングします。
C: ヘリコイド部が外れる瞬間には絞り駆動ピンと直進キーが入る位置を確認しておいて下さい。
絞り駆動ピンを組む時はマウント側から覗きながら絞りリングを動かしてセットします。(フレアカッターは外しておいた方がいいです)
古いヘリコイドグリスを灯油などで清掃し、新しいグリスを100均の筆などで薄く塗付して組み立てます。
フォーカスリング部のサブヘリコイドの動きが渋い時も、外れるまでの回転角と外れる瞬間の位置をマーキングして取り外し、粘度の低いグリスと交換します。
D: 絞り羽根の清掃の為に筒の固定位置をマーキングして3個のネジを取り外しますが、ここには小さいワッシャーが入っているので気をつけてください。
⑥絞り羽根の清掃
A: これがネジに付いているワッシャーですので、紛失に気をつけてください。
B: ヘリコイド部から絞り機構を取り外します。
C: 絞り部を固定している周囲のネジを釣り外し、慎重に絞り部を取り外します。
D: 絞り羽根を外してエタノールなどで油分を清掃します。
後は逆の手順で組み立てれば完成です。
お疲れ様でした^^
⑦「Super-Multi-Coated TAKUMAR 300mm F4」の作例
使用カメラはAPS-C 1200万画素の「ペンタックス K-x」になります。
絞り値はすっかり忘れてしまいましたが、F8以上は使っていないと思います^^;
⑧渡船
一度だけ乗った覚えがあります^^
昔は有料でしたが、今はボランティア活動みたいですね。
⑨渡船到着
またサイクリングで使ってみたいですね^^
⑩堤防の雑草
⑪ボート
ボートって割と維持費が掛かるみたいですね^^;
バブル時代の象徴みたいな…
⑫ヒメジオン
最短撮影距離が5.5mもあるので、テレマクロ撮影はキツイです^^;
⑬カワウ
この日は野鳥に恵まれませんでした^^;
また機会があったら野鳥の作例を追加するかもしれません。
⑭戦前からある橋
向こうに新しい橋ができた時はまだ使われていたんですが、区画整理で新しい道路が完成してからはすっかり使われなくなりました…
⑮トンボ(1/4トリミング)
⑯甲種輸送
⑰架線
⑱釣り人
しかしこのレンズは開放から良く写りますね~
欠点は重くて寄れない事ですが、なかなかその気にさせてくれるレンズだと思いました^^
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【ペンタックス「Super-Multi-Coated TAKUMAR 300mm F4」分解・清掃・作例】でした!
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