◎とあるリサイクルショップのジャンクコーナーにカビカビのタムロン「TAMRON SP 60-300mm F3.8-5.4 23A ADAPTALL2」があり、あまりタムロンのSP(Super performance)レンズを分解清掃した事がなかったので買ってきてみました。
この時代のタムロンズームを分解する際に気を付けないといけない事は、絶対に後群レンズユニットをいきなり緩めない事です。
何故ならここは調整されていて、内部のイモネジで固定してあるからです💦
もしやってしまった場合はイモネジの打痕は残っている筈なので、大抵のタムロンズームは指標部がずらせるので、そこからイモネジを緩めて後群を外し、イモネジの打痕を確認したら、イモネジを外して後群を入れ、ネジ穴のセンターに打痕を合わせて組めば解決します。
(ここが狂うとテレ端から広角端でのズーム移動時にピント位置がズレます)
1983年発売、2000年生産終了 当時の価格は¥69,000 モデル名: 23A
マウント: 交換式アダプトール2 焦点距離: 60-300mm 最小絞り: f32
開放f値: f3.8-5.4 レンズ構成: 11群15枚 ズーム形式: 直進式
最短撮影距離: 1.9m(マクロ時は0.3mくらい寄れます)
最大撮影倍率: 1:1.55 フィルター径: 62mm フード: 48FH 重さ: 926g
外寸: 68x166mm 絞り羽根枚数: 8枚
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①マウントと1群レンズの取り外し
A: マウントはプレートの間に小さなワッシャが入っていて組み立てのタイムロスになるので、ネジを入れたまま丸ごと取り外すのが楽です。
遮光プレートも外します。
B: 絞りリングを外しますが、クリックボールとバネが飛び出す事があるので、必ず袋の中で作業します。
絞りリングを外す時は必ず溝の入った絞りリング連動スライド板が入っているピン位置をチェックして下さい!
紛失防止の為にクリックボールとバネは回収しておきます。
C: フォーカス&ズームリングゴムは破かない様にドライヤーで温めながら外します。
D: 1群レンズユニットを反時計回りに回して外し、各レンズを清掃します。
②ズームリングの取り外し
A: フォーカスを無限遠にセットしたら無限遠の調整固定をしているテープと盲蓋(めくらぶた)の鉄板を、固定面をずらさない様にしながら剥がし、位置合わせマーキングをしておきます。
B: 参考として無限遠でのズームリングとフィルター枠との幅は12.2㎜でした。
C: 念の為にフォーカス&ズームリングの組み合う位置とフォーカスコロの位置マーキングをしておきます。
マーキングしたら赤矢印のネジ&ワッシャを全て外します。
D: フォーカス&ズームリングの下半分を取り外します。
③4群レンズ後部ユニットの取り外し
A: 指標部の2カ所&4本のネジを取り外します。
B: 指標部はネジ位置が不定間隔になっているので、マーキングせずに取り外せばOKです。
C: これが4群レンズ後部ユニットの調整を固定しているネジになっています。
このネジを緩めます。
D: 4群レンズユニットが外れるまでの回転数を数えながら外します。
④4群レンズユニット清掃とズームユニット分解
A: これが4群レンズユニットを調整固定していたネジの打痕です。
組む時はネジを外し、4群レンズユニットを数えた回数までねじ込んだら、ネジ穴をライトで照らしながら打痕がネジ穴のセンターに来るようにして組み立てます。
B: 外した4群レンズユニットの各レンズを清掃します。
C: ズームユニットのコロ&ネジを外しますが、ここはかなり固く締められていますので、ネジの頭を軽く叩いておくと緩め易くなります。
因みにここはコロが二階建てになっていて、まず2階部分の取り外しになります。
D: コロは凹んだ方が外側になります。
⑤ズームユニットの分解
A: コロの1階部分を外す前にズーム筒の位置関係3ヶ所に合いマーキングをしておきます。
このネジは特殊ネジになっており、しかもとても固い締め付けになっているので絶対に壊さない様に外す必要があります。
アセトンをネジ山に塗布し、画像④のDのネジだけつけて軽く叩いてから外すのが無難だと思います。
B: 外れた2階建てのコロ&ネジ。
C: ここのコロ&ネジも外します。
D: 絞り連動機構の取り付け位置マーキングをしたら、2個のネジを外し、矢印部を押しながら絞り連動機構を外します。
(この時に機構に繋がっている絞り駆動部分を組み立て時の為にチェックしておいて下さい)
⑥ズームユニットの分解B
A: ズームユニットのアウターとヘリコイド部の位置関係をマーキングしたら、溝の入った絞りリング連動スライド板の入っている位置をチェックしてアウターを取り外します。
B: このコロ&ネジを取り外します。
C: ここも壊さない様に慎重に取り外します。
D: 4群レンズ前部ユニットの位置関係マーキングをしながら取り外します。
⑦4群レンズ前部の清掃とヘリコイド分解
A: 4群レンズ前部ユニットを分解してレンズを清掃します。
B: このカビが深くて跡が残ってしまいました… がっくり💦
C: フォーカスを最短撮影距離にしてネジの位置マーキングをし、コロ&ネジ2カ所を外します。
ここから絶対にフォーカスリングを回さない様にして下さい!
D: 1群レンズ取付部をかなりゆっくり慎重に回し、外れた瞬間の位置マーキングをします。
⑧ヘリコイドグリス交換
A:2群レンズユニットを外し、各レンズを清掃します。
B: ヘリコイド部の取り付け位置をマーキングしたらネジ4個を外します。
C: 外したら最短撮影距離位置でのサブヘリコイド(左)のヘリコイド回転位置マーキングと高さを測定しておきます。
D: 古いヘリコイドグリスをブラシと洗浄油を使って奇麗に取り除き、新しいヘリコイドグリスを塗布します。
⑨サブヘリコイドと絞りユニットの取り外し
A: サブヘリコイドはただのネジになっていますのでそのまま外し、古いヘリコイドグリスを奇麗にしたら、新しいヘリコイドグリスを塗布してサブヘリコイドを画像⑧のC説明の位置に戻します。
B: 絞りユニットを固定しているイモネジ3個を緩めます。
C: 絞りユニットを外したら、横のイモネジの打痕を確認し、組み立てる時はネジ穴から覗いて打痕をセンターに合わせて組み立てます。
D: 絞りユニットを組んでいる4個のネジを外しますが、プレートの間には小さなワッシャーが入っているので気をつけてください。
⑩絞り羽根清掃と3群レンズ清掃
A: 絞り羽根の向きと表裏を確認しながら分解します。
B: 擦れる部分や可動部は全てエタノールで洗浄して組み立てます。
C: 3群レンズユニットは時計回りに回し、反対側から取り出します。
D: 外れた3群レンズユニット。
⑪3群レンズ清掃
A: 3群レンズを清掃したら、後は逆の手順で組み立てれば完成です。
お疲れ様でした!
⑫「TAMRON SP 60-300mm F3.8-5.4 23A ADAPTALL2」の作例
マクロモード f8.0(マクロモードは60mmでリングを反時計回りに回すと、直進ズームでマクロ倍率を変えられる仕様になっています。)
使用カメラはフルサイズ一眼レフのD700(暖色系になります)で、焦点距離と絞り値は覚えている範囲で記載しています💦
⑬マクロモードの最短撮影
マクロモード f8.0
このレンズはマクロモードにすると、フードに被写体が当たるくらいまで寄れるのでびっくりしました^^;
⑭リゾート
⑮マンション群
⑯落ちてる木の実
⑰マリン
⑱ベンチ
⑲光芒・フレア・ゴースト
60mm f22
コーティングが痛んでいるのでちょっと影響していると思います。
絞り羽根枚数が偶数の8枚ならではの光芒でした。
⑳しまじろうバス
㉑ゴジラみたいな雲
㉒帰路
60mm f3.8
ミスって絞るのを忘れたショットになります💦
開放でも広角端60mmなら被写界深度は割とありました。
㉓物撮り(フィギュア)
タムロン23Aはカビによってコーティングが痛んでいても、とても良く写るのでちょっと驚きました。
60mmからと言うのもいいですし、何より凄く寄れるのがこのレンズの良いとこですね^^
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
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以上、【タムロン「TAMRON SP 60-300mm F3.8-5.4 23A ADAPTALL2」分解清掃・作例】でした!
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