キャノンズーム「New FD28-85mm F4 MACRO」分解・清掃・コロ交換

FD2885アイキャッチ キャノン

◎今回はキャノンのNew FDズームレンズ「New FD 28-85mm F4 MACRO」を分解・清掃してみました。

この頃のFDズームは、ズーム機構に使われているコロの黒いプラスチックが劣化して崩壊し、ガタガタになっている物を見かけます。
しかも不思議な事に高級ズームだけなるんですよね^^;
例えば「FD35-70mm F2.8-3.5」のジャンクの大半がガタガタですが、廉価版の「FD 35-70mm F3.5-4.5」とかガタガタになっているのをあまり見かけた事がありません。
ひょっとしたらレンズの重さも関係しているのかもしれませんが…
今回はこのレンズもコロが崩壊していたので、ついでに修理してみました。

1985年11月発売  当時の価格は¥87.900  レンズ構成11群13枚
絞り羽根枚数8枚  最短撮影距離0.5m  最大撮影倍率0.101
フィルター径72mm  重さ485g

参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。

 

①それでは分解・清掃していきます

マウント分解A:まずはマウント内側部分の金属リングを外します。

B:そしてマウントの回転部分を引き抜きますが、ゆっくり望遠側にズーミングしながら慎重に引き抜けば外し易いと思います。
この時に抜く瞬間のリンク位置関係の写真を撮っておくと、後の組み立てに役立ちます^^   (最後に説明してます)

C:マウントのアウターを取り外しますが、この時に銀色のロックボタンを不意に触ると画像Dのバネが飛んでいってしまう事があるので注意して下さい!

D:自分はこの小さなバネが飛んでいって涙目になりました(汗)
見つかったから良かったんですけど^^;

 

②マウント分解の続き

マウント分解2A:中の銀色のリングはこの位置で脱着します。

B:そして絞りリングを外しますが、ここでクリックボールとバネが脱落するので、透明なビニール袋の中で作業する事を勧めます。
(撮影する為にグリスでくっつけてあります)

C:外したパーツなどは100均の小袋などに入れ、外した順番で置いておくと作業が捗ります。

D:マウントベースを外しますが、1本だけネジの種類が違う(一番下)のでチェックしておきます。

 

③ズームリング取り外しとコロの破片

ズームリング&コロ崩壊A:ズームリングゴムをドライヤーで温めながら外します。
温めながらやらないと、劣化したゴムはいきなり割れる事があります^^;

B:ズームリングの取付位置&ネジの上下位置をマーキングしてからズームリングを外します。

C:すると黒いコロの破片がポロポロ落ちてきました。
この黒いプラスチック部分が崩壊したコロは、スライド部分との隙間が増えて大きなガタが発生する原因になっています。

D:崩壊した黒いプラスチックの厚みを測定。
おおよそ0.4~0.5mmくらいの厚みでした。
このレンズはコロが2種類あり、それぞれ若干厚みが違う模様^^;

 

④前群ユニットを外します

前群ユニット外しA:前玉前のカバーはダミーのプラスチック製で、はめ込んであるだけです。
時計回りにちょっと回せば外れますが、ここは接着剤が塗ってあるので「エタノール」をちょっと染み込ませて待つ必要があります。

B:ネジを緩める前にズーム位置、距離位置、前群ユニット位置を念のためメモ&マーキングしておきます。
ここのネジを外してしまうと「前玉がポロッと銅製のリングと共に落ちてしまう」ので、画像の様にちょっと緩めた状態で止めておきます。

C:そして前群ユニットを回して画像の位置で止めます。

D:そのままズーム部分を回して前群ユニットが一番奥になる場所で止めます。
そして小さなマイナスドライバーなどを使ってフォーカス駆動リングを外します。

 

⑤フォーカス部分の分解

フォーカス部分の分解A:前群ユニットを外す前に再び位置チェックor写真を撮っておきます。
そして何回転で外れるかメモし、外れる瞬間の位置が最も大切になりますので、慎重にゆっくり回して外れる位置をマーキングしておきます。
(忘れても後から無限遠調整はできます→フォーカス駆動リングを取り付けない状態でレンズを組み立てたらカメラに取り付け、フォーカスリングを無限遠にし、ファインダー見ながら前群ユニットを回して遠景にピンを合わせたら組み立てます)

外した前群ユニットのレンズを清掃します。

B:これから分解する部分の位置関係です。
可動部分はなるべく各部品の位置をマーキングするか、写真を撮っておくと、何かと後から役に立つと思います。

C:フォーカスリングの固定ピンを外します。

D:フォーカスリングも外れる位置がとても重要になりますので、ゆっくり慎重に回し、外れる瞬間の位置をマーキングしておきます。

 

⑥ズームユニットの分解

ズームユニット分解A:ヘリコイドのネジ溝部分を外します。

B:前群ユニットが入るヘリコイド兼ズーム部分を取り外します。
そして散らばっているコロの黒いプラスチック片を掃除します。

C:コロの崩壊した黒いプラスチックを綺麗に取り除きます。

D:中郡ユニットを取り外しますが、黒いコロは調整されているので外さないで下さい!
黒いコロは外さなくても中郡ユニットを外す事ができます。

この時にもズームユニットと中郡ユニットに付いているコロの黒いプラスチック片を掃除します。
破片を残すとズーム時に引っ掛かったりしますので、しっかり掃除しておきました。

 

⑦コロのプラスチックをストローで代用

コロの代用品コロの黒いプラスチックの代用品をいろいろ考えましたが、理想を言えば真鍮を旋盤で加工して作るのが一番いいでしょう。
でもビンボーな一般人にそんな投資は出来る筈もなく、一番身近な物で対処する事にしました。
空き缶を切り取って巻く事も考えましたが、どうしても巻き終わりの部分の処理と加工に自信が無かったので却下。
それと「熱収縮チューブ」も考えましたが、欠点は収縮すると厚みが変わるので却下。

A:そこで用意したのがテトラパックに付いている2段ストロー!!
耐久性はポリプロピレンなので紫外線に弱いみたいですが、レンズの中だから大丈夫そうです。
PPの特徴は最高の耐熱性、強度が高い、耐薬品性に優れる、吸湿性が無いなど、グリスなどにも耐えられそうです。

B:この通り、内径がコロにぴったり!
入りにくい時はドライヤーで温めると良いです。
厚みは画像⑥のBのコロにはピッタリでしたが、画像⑥のDだとやや足りないので、コロとストローの間に接着剤を盛って対応しました。

C:どんどん作っていきます。

D:ジャストサイズ!
なかなかいい感じです。

余談ですが、確か「FD35-70mm F2.8-3.5」は一回り大きなコロだったので、硬質のチューブを使って製作した思い出があります。

 

⑧ズームユニット組み立て&中玉ユニットのレンズ清掃

ズームユニット組み立て清掃A:完成したコロの修理

B:中郡ユニットは回すと分割できますので、レンズを清掃しておきました。

C:黒いコロは絞りを開放F4に調整する為に付いていますので、斜めのスライド部分に入れます。

D:黒いコロがスライド溝に入った状態になります。

 

⑨マウント組み立て時の注意点など

FDマウント組み立てA:ズームユニットを組み立てたら、スムーズに動くか確認します。
そして逆の手順でどんどん組み立てていきます。

B:最後のマウント回転部分を組む前はこのような状態にします。

C:後玉レンズの付いたマウント回転部分を入れますが、右のレバーが入らない時は小さいドライバーなどで入る側の位置を調整して入れます。
マウントの中までしっかり入ったのを確認してください。
そして軽く押さえながら「カチッ」と言うまでゆっくり時計回りに回し、
画像①のAのリングを組めば完成です。
完成したらマウントに付けて動作確認をしておきます。

D:各レバーの入る位置の参考画像です。

☆お疲れさまでした。

 

⑩「New FD 28-85mm F4 MACRO」の作例

ギボウシガーデニングの植物を撮ってみました。
使用カメラは「ニコン1 V1」なので、画角は狭くなります。
絞り値はすっかり忘れたので書いてません(汗)

⑪とある交差点にて

交差点暗かったので手ブレしてしまいました。

 

⑫えび天すし

えび天すし

⑬フィギュア撮影(50mm)

エミリア50mm被写体はバンプレストのプライズ「Re:ゼロから始める異世界生活 EXQフィギュア ~ エミリア ~」。

 

⑭フィギュア撮影(85mm 最短撮影距離)

エミリア最短撮影距離

 

⑮フィギュア撮影(28mm ローアングル)

エミリア広角端広角でフィギュアを撮影すると歪むので、ローアングルが良いです。

当時はそこそこ高価だった為に写りはなかなかのものだと思います^^
でも欠点はやはりFDズームのコロ崩壊によるガタツキですね…
個性的で良いレンズだけに勿体無いと思いました。

 

 

 

☆レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、落ち着いて慎重に行って下さい。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、参考程度にして下さると嬉しいです。
あとレンズの分解・清掃は必ず自己責任でお願い致します(汗)
以上、【キャノンズーム「New FD28-85mm F4 MACRO」分解・清掃・コロ交換】でした!

コメント

  1. BRESSON より:

    Bonjour,
    Merci infiniment pour votre article précis et documenté. Grace à lui et à Google Translate, j’ai pu réparer mon exemplaire de cet objectif.
    J’ai cependant un petit problème avec mon zoom : je ne parviens plus à faire la mise au point à l’infini. J’ai pu faire varier la position du groupe de lentilles avant lors du remontage, mais rine n’y fait…
    Auriez-vous une idée à me soumettre ?
    En vous remerciant encore pour cet article.
    Bien cordialement.
    Yann BRESSON – France

    こんにちは。
    正確で文書化された記事をどうもありがとうございました。そのおかげで、そしてGoogle翻訳のおかげで、このレンズのコピーを修理することができました。
    しかし、私のズームレンズにはちょっとした問題があって、無限遠にピントを合わせることができなくなったのです。組み直すときに前玉群の位置を変えることができましたが、何も効果がありません…。
    何かアイデアはないでしょうか?
    この記事もありがとうございました。
    この記事もありがとうございました。
    Yann BRESSON – フランス

    • ayumu3 より:

      Veuillez attendre une réponse
      返信までお待ちください。

    • ayumu3 より:

      まず無限遠が出ていないレンズで何かを撮影してみて下さい。
      隅が流れていたり、ボケていたらレンズの向きがどこか間違っているので無限遠は出ないと思います。

      無限遠の出し方は画像④Bの状態でカメラに付けて遠景に向けます。
      フォーカスリングを無限遠に固定、ズームリングを85mmにしてレンズの内側を回して遠景にピントが合ったらネジを締めて固定すれば良いです。

      それでも無限遠が出ない場合はひょっとしたら画像④Dのリングが逆に取り付けてある可能性があります。

      Tout d’abord, essayez de photographier quelque chose avec un objectif qui n’a pas d’infini.
      Si les coins sont fluides ou flous, la direction de l’objectif est erronée, donc je ne pense pas que l’infini sortira.

      Pour atteindre l’infini, fixez-le à la caméra dans l’état de l’image ④B et visez la vue éloignée.
      Fixez la bague de mise au point à l’infini, réglez la bague de zoom sur 85 mm, tournez l’intérieur de l’objectif et, lorsque la vue éloignée est nette, serrez la vis pour la fixer.

      Si l’infini ne sort toujours pas, il est possible que l’anneau de l’image ④ D soit attaché à l’envers.

  2. 藤堂純男 より:

    canonレンズnewFD28-85㎜F4ズームをレンズ清掃のため分解組み立て、カメラにセットましたところ①絞り11以上ではシャッターが切れますが、それ以下に開けばシャッターは切れても、 ミラーが下がりません。マウント脱着の瞬間にはミラーが下ります。絞りの開度は問題ありません。また、②ズームの際絞りピンが鏡筒内のビスナットに当たりズームイングが途中で止まります。組み立て時は問題ありませんが、シャッターを切っている間に位置が狂ってくるようです。以上二点色々試行錯誤を試みましたが、どうしても解決出来ません。何が原因かご教授下さい。

    • ayumu3 より:

      お返事が遅れて大変申し訳ありません。
      こういったトラブルはFDのマウントで分解清掃した後に良くあるトラブルだったりします。
      文章の内容を読んでいる限り、今までの経験では画像9のCの穴の開いた連動レバーが曲がっている可能性があります。
      一度マウントを取り外して直角定規などでレバーが90°に立っているか確認してみて下さい。

タイトルとURLをコピーしました