◎今回は落としたり、ぶつけるなどして鏡筒が曲がってしまったニコンの「Nikon AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II」を修理してみました。
このレンズは手振れ補正も良く効き、とても良く写るので気に入っているのですが、小型化を優先し過ぎて耐衝撃性はちょっと?みたいですね…(汗)
今までリサイクルショップのジャンクボックスに転がっている「AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II」を4本ほど見たのですが、全て鏡筒が衝撃を受けて曲がっていました。
(そのうち2本は自分が回収した物です)
修理に関して先に結論を言ってしまうと、鏡筒がこのように曲がってしまったこのレンズは分解しての修理が不可能になります。
何故なら構造的に鏡筒が食い込んでいると分解できないからです^^;
ならどうするのかと言うと、鏡筒をドライヤーでしっかり温め、壊す覚悟で反対側に曲げて戻すしかありません。
もしそれがアイキャッチの上部画像の様にズーム部の曲がりの場合は、内部の絞りを動かすプラスチック製のレバーが折れる事がありますので画像②のAのマウントを外す作業をした方が良いです。(最近そうしたジャンクを見ました)
自分は上の写真のレンズを2本ともそうやって戻し、問題が無いか後から分解点検した様子を今回の記事にしています^^;
分解点検した結果ではヘリコイド部分の曲がりならそのまま使えそうな感じでしたが、ズームユニット側だとしっかり点検する必要がありました。
(衝撃で鏡筒が曲がる原因はヘリコイドのクリアランスがAFの為に大きい、ズームコロがスライドする部分の形状が逆への字になっており衝撃で外れやすいなどです)
D3000クラスでコンッとぶつけるだけなら大丈夫ですが、D7000クラスでゴンッとか、ガンッってぶつけるともうダメでしょうね…
このレンズを持っている人がいたら、持ち運ぶ時は沈胴させた方が安全だと思います。
あと曲がってしまっても絶対に真似をしないでメーカーに修理に出してください^^;
2014年2月6日発売 当時の価格は税別¥37.500 レンズフード: HB-69
ニコンFマウントCPU内蔵Gタイプ、AF-S DXズームレンズ 重さ: 195g
レンズ構成: 8群11枚 手ブレ補正効果: 4.0段 絞り羽根枚数: 7枚
最短撮影距離: 0.28m(MF時は0.25) 最大撮影倍率: 0.3倍(MF時は0.36倍)
フィルター径: 52mm 外寸:66×59.5(沈胴時)
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
- ①ズームリング部分解と銘板外し
- ②前玉とマウントのフレアカッター取り外し
- ③マウントの取り外しと鏡筒の分離
- ④ズームユニットの基盤外し、鏡筒の曲がる理由、フォーカスユニットの分離
- ⑤ズームユニットの点検とフォーカスユニットの分解
- ⑥フォーカスユニットの分解と点検
- ⑦ズームのスライド棒の点検と基盤
- ⑧レンズ後玉、沈胴ボタンのロック修理
- ⑨ズームユニットの本体への組付け
- ⑩修理完了した2本の「Nikon AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II」
- ⑪「Nikon AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II」の作例
- ⑫公園の木々
- ⑬ラーメン屋
- ⑭高速道路
- ⑮ ブツ撮り(スケールフィギュア)
- ⑯スケールフィギュア全身
- ⑰ディフォルメフィギュア
①ズームリング部分解と銘板外し
A: ズームリングゴムを外します。
接着剤や両面テープは使っていないので簡単に外せると思います。
B: ズームリングに巻いてあるテープを剥がします。
C: ズームリングの化粧リングを外します。
ここで鏡筒をドライヤーで温め、壊す覚悟で元の位置に曲げ戻します。
「バキッ」とか嫌な音がしますが、まず壊れる事は無いと思います^^;
自分は2本やりましたが、壊れませんでした。
D: 前玉に付いている銘板はステッカーになっているので剥がします。
②前玉とマウントのフレアカッター取り外し
A: 銘板を外したら、前玉ユニットを固定しているプラスチックのリングナットを反時計回りに回して外します。
この時に前玉ユニットがポロッと落ちない様にしてください。
B: 前玉ユニットは調整されていますので、この部分を目印にして位置マーキングをしておきます。(鉛筆などでOK)
C: 前玉ユニットは階段の様に刻まれた段差で調整されています。
D: マウントのフレアカッターを固定しているネジ3本(黄丸)を外し、フレアカッターを取り外します。
そして接点のネジ2本(青丸)を外します。
組み立てる時は必ず接点のネジから取り付けて下さい。
③マウントの取り外しと鏡筒の分離
A: マウントのネジ3本を外します。
B: 接点が引っ掛かってマウントが外しにくい場合は絞りレバーを手前に動かすとスペースが空いて外し易くなります。
C: マウントのスペーサーは取付位置を必ずマーキングしてから外し、組み立てる時は必ずプラを一番最初に入れます。
D: まず左丸のスイッチや距離計から来る配線を外します。
次に右丸のアース端子が付いている黒いロックパーツを2本のネジを外して外しますが、ネジは長さが違うので気を付けて下さい。
そしてズームリングを55mmよりちょっと多めに回すと中のズームユニット&基盤がごっそり抜けますが、まず5mmほど抜いたら1センチほど外枠を右回転してA/M切替用のギヤに付いているスイッチ連動フォークを外し、そこからズームユニットを基盤をやさしく押す感じで慎重に分離します。
抜ける時に各ズームリンクの入っている様子と状態をメモるか写真を撮っておくと良いです。
この時の注意点としてズームリングを回し過ぎるとズームリングがスイッチ部分と分離して中の電子接点を破壊するのと、フォーカス部分を引っ張り過ぎるとズームユニットとフォーカスユニットが分離してフォーカスユニットと繋がっているフレキシブルケーブルを痛めますので、くれぐれも慎重に行って下さい^^;
④ズームユニットの基盤外し、鏡筒の曲がる理由、フォーカスユニットの分離
A: ズームユニットが分離できました。
電子基盤を外す必要のある時はまず矢印の固定ネジ2本を外します。
そして黄丸のフレキ2つを外し、基盤をゆっくり持ち上げると後ろ(赤丸)にも隠しフレキがありますので外します。
最後に基盤を持ち上げながら青丸のフレキを外せばOKです。
B: このレンズは小型化の為に通常はズームユニットと一体になっているズーム溝が鏡筒に彫ってあるんですよね…
図として描いておきましたが、この様な溝形状になっているので衝撃が加わると脱線し易くなっています^^;
C: ズームユニットからフォーカスユニットを外す為にまずフレキシブルケーブルを取り外します。
丸印の固定ネジを取り外すだけで外れます。
D: ズームユニットからフォーカスユニットを外します。
⑤ズームユニットの点検とフォーカスユニットの分解
A: 手ブレ補正ユニットのカバーを外し、ユニットが水平に動くか点検します。
そして各ズームのスライド棒が前後左右に曲がっていないか点検します。
B: ズームをスライドしてスムーズに動くか点検します。
(この時にいろんな方向から力を加えながら動かすと良いです。)
C: フォーカスユニットを分解する為に黄丸のネジを外します。
この時にAFギヤシャフトの入る穴の形状(赤丸)も見ておくと組む時の参考になります。
D: 外枠を外したら電子接点を位置マーキングしてから外します。
⑥フォーカスユニットの分解と点検
A: ここは磁気ヘッドになっていますので、慎重に外してください。
B: そしてヘリコイドとフォーカスリングを外しますが、外す前に無限遠での位置マーキングをし、外れる瞬間の位置もマーキングしておきます。
この時に丸印のギヤが外れるので回収しておきますが、組み立てる時に忘れない様にしてください。
C: ヘリコイドを外す時にこの小さな部品(磁気テープを後ろから押す部品)も外れるので気をつけて下さい。
組む時はこの画像の状態で組めばそのまま入りますが、失敗すると内部で噛む事もあるのでくれぐれも気をつけて下さい。
D: 組む時はこの位置関係で組めば入ると思います。
⑦ズームのスライド棒の点検と基盤
A: 念の為、ズームのスライド棒(手ブレ補正ユニット側)を外して固定ネジが曲がってないかも点検しておきます。
スライド棒も仮組みして回転させ、曲がっていないか点検しておくと良いです。
B: ズームのスライド棒(絞りユニット側)とネジも点検しておきます。
C: 基盤を外す時に破損しやすい隠れフレキシブルケーブル。
取付が割と困難なので、破損しないように気をつけて下さい。
こうしたケーブルはちょっと裂けただけでレンズが動かなくなります…orz
D: 基盤が外れた状態はこんな感じになります。
基本的に基盤は外さなくても点検はできますが、レンズのカビ清掃をする時は外さないといけません。
とにかく基盤のケーブル脱着ではフレキシブルケーブル断線のリスクが高く、できれば外さない方が安心です。
⑧レンズ後玉、沈胴ボタンのロック修理
A: 後玉のカバーは両面テープで固定してあるだけなので簡単に外れます。
そして後玉を外して清掃・点検もしておきますが、ここの固定ネジはレンズを押さえる程度に締めておかないと光軸が狂いますので気をつけて下さい。
B: このレンズは2本とも沈胴ロックボタンが効きませんでした^^;
分解して仕組みを見ると、ロックする部分の爪がちょっとだけ削れていました。
これでは引っ掛かりませんね…
C: 修理として沈胴ボタンのロック部分の角を整え、熱を加えて矢印の方向にちょっと曲げておきました。
完璧にするなら金属板で作り直せば良いと思います。
D: フォーカスユニットをズームユニットに組む時のフレキシブルケーブルの取り回しに注意して下さい!
こんな感じならOKですが、もし間違っていると短期間で断線する可能性があります。
⑨ズームユニットの本体への組付け
A: ズームユニットをスライド溝に組む時はちょっと手こずると思いますが、位置と間隔に気をつけながらこんな感じで入れます。
フォーカスユニットとズームユニットの間隔は溝の間隔に合わせて開けておくと良いです。
もちろん組む時のズームリングの位置は55mmオーバーの60mmくらいにしておく必要があります。
この時にAFギヤの組み込みを忘れないようにして下さい。
B: ズームユニットがあと5mmで組み合わさる位置で止め、固定側を時計回りに1㎝ほどずらし、A/M切替ギヤとスイッチ連動フォークを組み合わせ、固定側を戻します。
そしてズームユニットを組んだらアース端子の付いた黒いロックパーツを取り付けます。(画像⑨のC参照)
これを付けるともうズームユニットは外れなくなります。
そしてケーブル、マウント、前玉ユニット、ズームリングを組み立てて完成となります。
C: アース端子の付いた黒いロックパーツの長短のネジの位置関係
D: 失敗談(汗)
組み立てて写真を撮ったら方ボケするんですよね…
気になってマウントを見たら傾いてました^^;
原因はマウント部分のアース線の噛みこみで、ここはスペーサーも噛みやすいので気を付けて下さい!!
組み立てたら必ずマウントの隙間が一定になっているか確認する必要があります^^;
⑩修理完了した2本の「Nikon AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II」
小型軽量で沈胴式、手振れ補正も良く効き、とても良く写る「Nikon AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II」。
でも優しく取り扱わないと鏡筒やフォーカスユニットが簡単に曲がってしまうので注意が必要です。
面倒でも移動する時は沈胴させるのが良いでしょうね^^;
⑪「Nikon AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II」の作例
使用カメラは「ニコンD7100」で、レンズはズームユニットが曲がった方を修理して使っています。
55mm f7.1 1/80 iso1600
⑫公園の木々
18mm f9.0 1/800 iso640
⑬ラーメン屋
⑭高速道路
18mm f9.0 1/100 iso640
⑮ ブツ撮り(スケールフィギュア)
55mm f5.6 1/2000 iso640
⑯スケールフィギュア全身
48mm f9.0 1/800 iso640
⑰ディフォルメフィギュア
55mm f5.6 1/1600 iso640
景色を含めフィギュア撮影も全て手持ちで撮影しました。
手振れ補正が良く効くのもありますが、厳しい状況でも良く写るフットワークの良さには感心してしまいます。
でもぶつけたり、落としたりしない様に気を付けて下さい^^;
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【ニコン「AF-S DX 18-55mm f3.5-5.6G VRⅡ」破損修理・分解】でした!
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