◎今回はとあるリサイクルショップのジャンク棚にあったカビジャンクのキャノン「Canon FD 300mm F5.6 S.S.C.」を分解・清掃し、作例を載せてみました。
この1977年に発売された「FD 300mm F5.6 S.S.C.」と1973年に発売された「FD300mm F5.6 S.C.」のレンズ構成は共に5群6枚となっていますが、両方分解清掃した結果、中身は全く別物になっていました。
フォーカシング機構が「FD300mm F5.6 S.C.」は全群繰り出し式に対し、この「FD 300mm F5.6 S.S.C.」はインナーフォーカス式になっているからです。
その為「FD 300mm F5.6 S.S.C.」はヘリコイドが無く、軽快で全長が変化しないカム溝&コロによる駆動になっているのですが、この頃のキャノンにありがちなプラスチック製コロの崩壊が発生し易いのが残念なところです^^;
スペック: 1977年3月発売 当時の価格は¥46.000 レンズ構成: 5群6枚
絞り羽根枚数: 8枚 リヤフォーカシング方式 最短撮影距離: 3m 最小絞り: f22
最大撮影倍率: 0.125倍 フィルター径: 55mm 外寸: 64.5×198.3mm 重さ: 685g
参考として「レンズの分解・清掃に必要な道具とコツ」、「バルサム切れ修理」、「レンズの黄変の修理」、「弱いレンズコーティング」などを記事にしていますのでそちらもご覧ください。
①硬化したフォーカスリングゴム外しと鏡筒分離
A: 経年劣化でカチカチに硬化したフォーカスリングゴムを割らずに外すのは至難の業です💦
シリコンスプレーなどで内側の滑りを良くしたら、ドライヤーで温めながら慎重にずらして外します。
B: 何とか外れましたが、プラスチックみたいに硬化したゴムは僅かに割れてしまいました^^;
C: フォーカスリングを回して鏡筒をロックしているイモネジを探し、緩めます。
D: そして鏡筒を捻れば分割する事ができますが、間にはスペーサーが入っているので回収しておきます。
②前群レンズ部の分解
B: 前群レンズユニットをロックしているイモネジを緩めます。
C: 前群レンズユニットを反時計回りに回して外します。
D: 3枚目のレンズは残念ながらハメゴロシになっていますので、このまま清掃しました。
③前群レンズ清掃とマウント外し
B: 2枚目のレンズはリングナットを外せば外れますので、それぞれのレンズを清掃してまたユニットへ組み立てます。
C: マウントを外すにはまずストッパーを押して銀色の固定リングを3個のネジが外せる位置まで回します。
D: 見えたネジ3個を外します。
④マウントと絞りリングの取り外し
A: マウントをゆっくり慎重に外し、各連動レバーの入っている位置を確認しておきます。
B: マウントを外したらまず小さなピン&バネを回収し、次に絞りリングを固定している部品を外します。
C: 絞りリングを引き抜くときはクリックボールと小さなバネ2組が飛び出しますので、必ず袋の中で作業します。
D: 参考にクリックボールとバネの2組の様子です。
⑤フォーカスリング部の分解
A: まず薄い鉄板のシールドが接着剤で貼り付けてありますので、アセトンなどを染み込ませながら外します。
B: 無限遠位置で指標部の組み合わせ位置をマーキングしたらイモネジを緩めます。
C: 指標リングを引き抜きます。
D: コロ&ネジを取り外します。
⑥絞りユニットと2群レンズの取り出し
A: フォーカスリングを引き抜いたら、絞りユニットを固定している3個のネジを取り外します。
B: 絞りユニットの取り付け位置マーキングをしたら絞りユニットを取り外します。
C: 次にコロと連動している2群レンズユニットを引き抜きます。
D: 絞りユニットを点検し、絞り羽根に油膜が張っていたら分解清掃しておきます。
尚、右下のカムがこの状態でないと組んだ後に絞り羽根が動作しなくなるので注意して下さい。
⑦2群レンズ&後玉の清掃とフォーカスリングのメンテ
A: 2群レンズはユニットにハメゴロシになっていますので、そのまま清掃します。
B: マウント側に付いている後玉もついでに清掃しておきます。
C: フォーカスリングのフリクション(重さ)はここに塗ってあるグリスで調整されていますので、古いグリスを清掃して新しいヘリコイドグリスを塗布しておきます。
D: フォーカスリングの接着剤はアセトンなどで奇麗にしておきます。
⑧崩壊したコロの修理と組み立て
A: 参考にこのfd300mm f5.6を分解するとこんな部品単位になります。
B: 経年劣化で崩壊したプラスチック製のコロ。
この時代のFDの持病で、ズームレンズや広角のフローティング機構がガタガタなのはこれが原因です💦
C: プラパイプを圧入して外周を削って加工しました。
精度に自信がなかったので、ちょっと擦れる程度に加工しておきました^^;
D: 鏡筒に2群レンズユニットを入れ、フォーカスリングを組み込みコロを取り付けたら絞りユニットを取り付けます。(画像はフォーカスリングが抜けてます💦)
⑨マウントの組付け
A: マウントを組む前にピンとバネ(画像④のB)を組むのを忘れないようにし、絞りリングはAにセットしておきます。
B: マウント側の絞り制御レバー大をロック側にし、レンズ側の沢山穴が開いている方のレバーを画像④のAの絞りユニットへ入れます。
そして画像⑨のAの小さなピンとマウントの穴を合わせ、マウントを組んで押さえながら回転方向とマウント中心点から左右のガタをチェックします。
ガタが無ければ固定ネジ3個を取り付けます。
絞りの動作チェック方法はレンズのマウントリング(銀色)のロックを解除して反時計回りに目一杯回し、マウントの絞り制御レバー大をロック側に固定したら、絞りリングを回して絞りが開いたり閉じたりするか確かめます。
そして絞りリングをAにしてマウントの小さい方の絞り制御レバーを動かして、絞りが閉じたり開いたりできればOKです。
動かない時は画像⑥のDのカム位置が山を越えていたり、絞りリングがAの位置でマウントを組んでない可能性が高いです。
因みにNew FDだとまた組み立て方が違いますので注意してください^^;
後は逆の手順で組み立てて完成です。
⑩「Canon FD 300mm F5.6 S.S.C.」の作例
使用カメラは1インチミラーレスカメラ「ニコン1 V1」になりますので、レンズの画角中央のみの評価になる事をご了承ください💦
絞り値は覚えている範囲のみ記載しています^^;
この画像はf5.6開放です。
⑪桜の蕾
f5.6 開放
そろそろ開花ですが、もうほとんどの人がコロナを忘れて花見をしそうな感じです^^;
⑫天竜浜名湖鉄道
f8.0 ニコン1だと800mmクラスになってしまうので、手振れしている画像もあります^^;
⑬電柱の変圧器
f7.1
因みに電柱の送電電圧は6600Vなので、絶対に登ってはいけません!
自分は子供の頃に登って怒られました…
⑭フェンスのボルト
⑮ススキ
⑯水面をバックに
⑰玉ボケ
⑱圧縮効果
f5.6 開放
絞るのを忘れていました💦
あの山まではおおよそ5㎞くらいあります。
⑲太陽を浴びて
⑳メジロ
f7.1 マニュアルフォーカスでちょこまか動き回る小鳥を撮影するのはキツイですね^^;
何枚も撮って成功した1枚です。
㉑太陽の恵み
f5.6 開放
手振れ補正も無い1インチセンサー(換算約800mm)でこれだけ写るので、フルサイズ機で使えばそこそこ納得の写りではないでしょうか^^
旧型の「FD300mm F5.6 S.C.」もこのニコン1で使った事がありますが、画質の向上だけでなく、レンズ全長の変化がない軽快なインナーフォーカス式でとても使い易かったです。
◎レンズの分解・清掃はリスクが伴いますので、できればプロに任せる事をお勧め致します。
あくまでこの分解・清掃は個人的な趣味の為、間違っている事も多いと思いますので、レンズの仕組みを勉強する程度にして下さると嬉しいです。
もしレンズを分解・清掃する場合は必ず自己責任でお願い致します(汗)
コメントはできればこちらの「ヨッシーハイムannex」ヘお願いします。
以上、【キャノン「Canon FD 300mm F5.6 S.S.C.」分解・清掃・作例】でした!
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